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毎日読書メモ(84)『ダーク』(桐野夏生)、『午前三時のルースター』(垣根涼介)、『All Small Things』(角田光代)

2006年5月~6月に読んだ本を、日記の中から掘り返してきた。記録することで読んだことを忘れないようにしたい、と思っているが、15年前の読書、殆ど記憶がないことを追認しているだけのような気もする。人は忘却の生き物だね。それでも読んだことのかけら位はわたしの中に残っているのではないかと信じて生きる。

桐野夏生『ダーク』(講談社、講談社文庫化されたときに上下分冊に):図書館で借りてきた桐野夏生『ダーク』(講談社)を読み始める。分厚い! 最近文庫になったんだけど、それは分冊されている...。ミロシリーズ、『顔に降りかかる雨』の続き。『顔に...』に出てきた登場人物達のその後から、物語は始まる。

帰りの電車で、週末読み進められなかった桐野夏生『ダーク』(講談社)を読んでいたら、やめられなくなって、帰宅後も必死で読み、ようやく読了。わたしは結局、ミロシリーズの途中をすっ飛ばして最終話(現時点での)を読んでしまった訳ね...。確かにこれはダーク、としかいいようのない話だ。殺人をおかすところの感覚とかが、あんまり肉迫してこない感じがあるけれど、何かが麻痺した状態だとこういう風になってしまうものなのか。いや、別にリアリズムを追求したいんじゃないけどさ。この物語の中のミロは、今のわたしとほぼ同い年なんだけど、こういう場所に立っている人生もありなんだな、とか、漠然と考えたりする。(ちなみに、桐野夏生は『ダーク』を最後に村野ミロシリーズは書いていないので、現時点、というか、本当に最終話だ、少なくとも2021年時点では)

垣根涼介『午前三時のルースター』(文藝春秋→文春文庫):今日は垣根涼介『午前三時のルースター』(文藝春秋)を読む。文庫になっていた『ワイルド・ソウル』が気になったのだが、まずデビュー作を読んでみるかな、と思って図書館で借りてきた本。サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作、ということだが、ううむ、エンタテインメント小説の講座とかでプロットの作り方を習って書いたのかしら、という感じの、様式美の世界、みたいな小説だ...。中立でちょっとニヒルで美意識のある一人称の主人公と、その主人公が手助けする少年、協力者たち、敵役、謎の組織...先が気になるといえば気になるが、これからあっと驚く「転」と、ほろ苦い結末が待っていることまで予測できちゃうのっていかがなものか。

昨日本当は読み終わりたかったが時間切れで読みきれなかった垣根涼介『午前三時のルースター』(文藝春秋)、朝のうちに読了。破綻なくきちんと書けているんだけど、ダイナミックさに欠けるというか、作ったプロット通りに主人公を動かしましたよ、って感じの小説で終わってしまった...最後に明かされる真相は、ちょっとそれって他人を巻き込むだけ巻き込んで迷惑かけてるのに、単なる歪んだエゴの押し付けじゃん、みたいだし。しかも、エンタメ小説のセオリーなら最後に、あっと驚く裏切りがあるだろう、と思ったのに、それすらなく、じゃあ主人公にのこのこ付いてサイゴンまで来て茶々を入れていただけの友人の役割は本当にただの茶々入れだったの?、って感じだし。タイトルも最後の一節で説明的にルースターを呼び出して理由付けしたような感じ。サントリーミステリー大賞(この作品が第17回受賞作で、第20回で終了している)の歴代受賞作品のタイトルを見ると、なんか、こういうスカした感じのタイトルが多いんだよね...そういうところまで込みで、「傾向と対策」通りに書いた小説なのかしらん? 一種の習作と思って読めばまぁまぁ?

角田光代『All Small Things』(講談社、講談社文庫に入るときに『ちいさな幸福 <All Small Things> 』と改題):日曜日に図書館で借りてきた角田光代『All Small Things』(講談社)を読む。自分の記憶に一番強く残っているデートってどんなのだった?、と、AさんがBさんに聞き、Bさんが答え、Bさんは似た問いかけをCさんにして...というように、短い章だてで、色んな人の色んなデートの話が出てくる。最後は輪にして、最初のAさんに戻る。ささやかだけれど、どれも首肯したくなる、いとしい物語。結構好きかも。


(Kindle Unlimitedでただで読めるらしいよ)

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