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2024年1月の記事一覧
古矢永塔子『七度笑えば、恋の味』(毎日読書メモ(519))
古矢永塔子の『七度笑えば、恋の味』(小学館)を読んだ。小学館の「日本おいしい小説大賞」第1回受賞作。
古矢永塔子、という小説の名前を知ったのは、朝日新聞の書評欄で、近作『ずっとそこにいるつもり?』(集英社)を、藤田香織さんが絶賛しているのを読んで。とりあえず、過去の作品を読んでみようと、予備知識なしに読む。
自分の人生に納得のいっていない女性主人公の自分探し、というのは、多くの、主に女性作家の手掛
老人ますます元気! 藤野千夜『じい散歩 妻の反乱』(毎日読書メモ(518))
藤野千夜『じい散歩』(双葉社)を読んだのが一昨年5月。
その後文庫になってますますの読者を確保しているようだが、このたびめでたく続編『じい散歩 妻の反乱』(双葉社)が刊行された。「小説推理」に2022年~2023年に連載。小説の中の時代設定は、主人公明石新平92歳、妻英子91歳の時点から始まる。確か新平が1926年(大正15年)生まれで、『じい散歩』の巻末が2020年、新平94歳だったので、小説
川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(毎日読書メモ(517))
川上弘美の近作『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(講談社)を読んだ。「群像」に2020年から2023年にかけて不定期連載。
六十代の小説家八色朝見の一人称で語られる物語は、コロナのちょっと前から5類移行に至るまでの3年余を、比較的在宅仕事の多い小説家がどのように生きてきたかを語る、エッセイのようにも見える小説だった。
離婚歴があり、おそらく子どものいない八色は、子ども時代、父の仕事の
『統合失調症の一族 遺伝か環境か』(毎日読書メモ(516))
あけましておめでとうございます。本年1回目の投稿は、昨年末に一気読みした、ロバート・コルカー『統合失調症の一族 遺伝か環境か』(柴田裕之訳 早川書房)の感想など。2022年9月に刊行され、当時、各紙の書評で取り上げられた本だが、手に取るまでに1年以上かかってしまった。色々な意味で衝撃的な本だった。
まず、表紙が印象的。タイトル画像に、表紙の一部を使わせてもらったが、amazonのリンクから、表紙