ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか/アレン・ネルソン

紙の本↑Kindle漫画↓

午前中に図書館へ出向いたら、この本と再会した。

中学生の頃、学校の図書の先生(司書さんという認識はまだなかった)がお昼休みになると、中学校舎のカフェテリアと呼ばれる、飲食スペースのようなところにお勧めの本をいくつか持ってきてくれていた。

私の通った女子校は生徒の半分以上が男みたいな髪型をし、スポーツをやっていない子はほとんどおらず、まあとにかく活発で落ち着きがなくて勉強なんて目もくれずただただエネルギーを持て余しているような、そんな女の子の集まる学校だった。なのでだいたいいつも私は司書さんを独り占めできていた。人見知りと話下手と人間不信真っ只中だったので本の話をちょろちょろっとするだけでいつも逃げ帰ってしまっていたのだけれど。

2年生の秋頃だったと思う、この本に出会ったのは。
なぜかはわからないが、これ以外にもベトナム戦争関連の本、しかもPTSDについての本を、司書さんはたくさん並べていた。
あの年に特に何か政治的な動向とか難しいことがあったわけでもないと思うけれど、もしかするとPTSDとかが日本でもようやく注目され始めた頃だったのかもしれないし、単に司書さんの趣味嗜好によるものかもしれないし、ともかく私はこの本に出会った。

当時のこの本に対する印象は、正直あまりなくて。
いや、ないわけないと思うんだけど、あまり覚えてないし、ただ「すごい本だった」という記憶だけで、今日またこの本を手に取った。
開いてみて、立ったまますべて読んでしまった。結果から言うと、やっぱりすごい本だった。

戦争体験を語った本やマンガは他にもあるけれど、実際に殺し合いをしたという記述はなかなか見かけないし、戦争の前と後を如実に記してくれているものにも私は出会ったことがない。

ネルソンさんは貧しい家庭で育ったので暴力性は幼くして芽生え、知識もなかったので疑うことなく海兵隊員になり、訓練され、人を殺し、そして自らの人間性もほとんど殺されかけた。

あまり映画は詳しくないのだが、昨年度話題になってアカデミー賞をとった「ムーンライト」と少し重なった。
貧困、暴力、適応、差別。
貧しい国に生まれたら、もうなす術はないじゃないか。なんて感じてしまう。
だからって私が恵比寿とか新宿の駅前で「カンボジアの子どもたちに学校を〜」なんて募金の呼びかけをするのも、私にとってはなんだか気持ち悪くて。私がそういうことをしているってのが気持ち悪い。
だったら行って見てくるとか、たまたま出会ったマイノリティな人とかと仲良く遊ぶとか、効率よく(?)ユニセフに寄附するとか、そういう方が私らしいよなあって思う。
それでもどうせ何もしないのが私なんだけど。

戦争は飛行機とばしてひゅどーんだけじゃなくて、もっともっと地味に歩き回るとか、敵の排泄物から場所をわりだすとか、そういう、私の想像よりもっともっと動物的なことが多いんだなって改めて認識して、でもやっぱり、だからって私がこれから戦地のために何かするとも思えないし、なんだったらそんな凄惨なこと知りたくなかったとさえ少し思うし、でも。でも。

でもネルソンさんは、人間としての気持ちや考えを思い出す。
たまたま遭遇した、出産中のベトナム人女性。捕虜にとったベトナム人男性から言われた「私たちは自由のために戦っている。あなたたち黒人も祖国ではそうなのではないか、なぜあなたたちは私たちの国で戦争をするのか」という問い。
それらによって、自分は間違ったことをしている、愚かな戦争に加担してしまった、という考えを持つ。
だからといって戦争から逃げられはしないが、ある村のベトナム人たちと少しずつ心を通わすようになる。
もしかしたらネルソンさんにとってはそれからの方がつらい日々だったかもしれないとさえ思うが、帰国後も自分や国、ひいては世界の問題を認識して、さらには立ち向かう強さが彼にはあった。
母親に家を追い出されても、なお。

すごいなあって、それしか言えない。
フランクルのいう、どこにいても意味を見出すみたいな、そんな気概みたいなものがネルソンさんには備わっていたのかなあ、とか。
私もつよくなりたいものです。

でもなんでか、読んでる途中からどうしてもはやくドイツに行きたい!行かなくちゃ!ぜったい行ってやる!!みたいな気持ちにもなりました。ポケモンマスターかよ。サトシ。
だとしたら私の相棒は誰ですか?ピカチュウより玉山鉄二がいいです。






今日はカンパーニュを焼きました。
生地を発酵させている間にあたたかい紅茶を飲んだら案の定お腹を壊しました。やっぱりカフェインは敵です。
やりたいことのためにMacとにらめっこしなくちゃ!

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,210件

お読みくださりありがとうございます。とても嬉しいです。 いただいたサポートがじゅうぶん貯まったら日本に帰りたいです。