日本の公的統計

記事の目的

日本の公的統計の全体像を理解すること。
公的統計は、統計法に基づいて定義される。
特に重要な53の基幹統計があり、47の統計調査に基づく統計と6つの加工統計からなる。
類似の基幹統計は統計の目的を整理して比較して理解する。
- 人口
- 企業活動
- 家計
- 雇用
- 賃金

統計法

統計法に基づくと、公的統計は、下記3種類に分かれる。(第2条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000053

①基幹統計
②一般統計
③その他(業務統計と呼ばれる)
統計法で定められているのは①。
特に①は重要度が高いため、報告に対する強制力が強い。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm

公的統計の数

4つの資料を比較検討する。

資料①
文部科学省の参考資料
基幹統計:51 (H28年度末)
一般統計:258 (H28年度末)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/039/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/07/1387626_4.pdf

資料②
政府統計コード一覧 (2022年1月版)
基幹統計:63
一般統計:387
※pdfをExcelに変換し、「統計の種類」列を元に分類
https://www.e-stat.go.jp/estat/html/tokei_itiran.pdf

資料③
政府統計一覧
基幹統計:56
一般統計:312
※pdfをExcelに変換し、「種類」列を元に分類
https://www.stat.go.jp/info/guide/public/keikaku/pdf/beshi1.pdf
(下記URLが元であり、2012年時点のデータと考えられる。http://www.stat.go.jp/info/guide/public/keikaku/keikaku.html)

資料④
基幹統計一覧 (総務省, 令和元年5/24時点)
基幹統計:53
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-3k.htm

資料②を最も新しい情報、資料④を最も確度が高い情報と定義し、②と④を比較。

資料②の方が統計数が多くなっているのは、
(1)廃止された統計を含む (ex.埋蔵鉱量統計調査)
(2)粒度が違う (ex.鉱工業指数が、製造工業生産能力・稼働率指数と鉱工業生産・出荷・在庫指数の2つに分かれている)
(3)同一調査だが、作成機関ごとに2つコードがある(ex.経済産業省特定業種石油等消費動態統計調査,経済構造実態調査)
(4)「経済センサス」「工業統計調査」は資料④にないが、基幹統計と定義されている。
(4)の解釈については、令和元年から経済構造実態調査と工業統計調査が合体したこと、経済センサスの中間年に経済構造実態調査が行われることから、「経済構造実態調査」の分類で、「経済センサス」「工業統計調査」を含む、と考えてよい。
https://www.stat.go.jp/data/kkjkou/index.html

よって、資料④を基にして、基幹統計数は53と定義する。
一般統計数は、資料②から(1)~(3)の要因による数の増加を差し引くことで正確な数字が出せると考えられるが、資料①をもとに、概ね258の一般統計がある、と考える。

53の基幹統計について

府省ごとの統計数
・ 内閣府:1
・ 財務省:1
・ 国税庁:1
・ 総務省:14
・ 厚生労働省:9
・ 経済産業省:7
・ 国土交通省:9
・ 農林水産省:7
・ 文部科学省:4

統計法で重要度が特に高く位置づけられるのが、総務省の「国勢調査」と内閣府の「国民経済計算」。
また、「国民経済計算」「産業連関表」「生命表」「社会保障費用統計」「鉱工業指数」「人口推計」の6つは加工統計であり、他の47の統計は統計調査によって作成される。

内容に類似性が見られる統計は、理解が難しいため、参考資料を掲載する。

類似する基幹統計の比較

人口に関する基幹統計
①総務省「国勢調査」
国内の人及び世帯の実態を把握し、各種行政施策その他の基礎資料を得ることを目的とする。

②厚生労働省「人口動態統計」
出生・死亡・婚姻・離婚及び死産の5種類の「人口動態事象」を把握し、人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的としている。

③総務省「人口推計」
5年毎に行われる国勢調査による人口を基礎(基準人口)として、出生・死亡(「人口動態統計」)、出入国(「出入国管理統計」)、転出入(「住民基本台帳人口移動報告」)等の人口動向から各月・各年の人口を算出するもの

企業に関する基幹統計
①財務省「法人企業統計調査」
わが国における営利法人等の企業活動の実態を把握するため、標本調査として実施されている統計法に基づく基幹統計調査です。
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm

②経済産業省「経済産業省企業活動基本調査」
企業の活動の実態を明らかにし、企業に関する施策の基礎資料を得ることを目的に、統計法(平成19年法律第53号)に基づく基幹統計として、毎年実施している。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/gaiyo.html#menu01

③経済産業省「経済産業省生産動態統計」
鉱工業生産の動態を明らかにし、鉱工業に関する施策の基礎資料を得ることを目的としています。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/index.html

④経済産業省「商業動態統計」
全国の商業を営む事業所及び企業の販売活動などの動向を明らかにすることを目的としている。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/index.html

⑤経済産業省・総務省「経済構造統計」
我が国の製造業及びサービス産業における企業等の経済活動の状況を明らかにし、国民経済計算の精度向上等に資するとともに、企業等に関する施策の基礎資料を得ることを目的として、令和元年(2019年)から新しく始まった統計調査
https://www.stat.go.jp/data/kkj/index.html

⑤'経済産業省・総務省「経済センサス」
経済センサスは、事業所及び企業の経済活動の状態を明らかにし、我が国における包括的な産業構造を明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の実施のための母集団情報 を整備することを目的としています。
https://www.stat.go.jp/data/e-census/index.html

経済センサス‐基礎調査は、我が国のすべての産業分野における事業所の活動状態等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の母集団情報を整備することを目的とした統計法に基づく基幹統計調査(基幹統計の「経済構造統計」を作成するための調査)です。
https://www.stat.go.jp/data/e-census/2019/index.html

経済センサス‐活動調査は、全産業分野の売上(収入)金額や、費用などの経理項目を同一時点で網羅的に把握し、我が国における事業所・企業の経済活動を全国的及び地域的に明らかにするとともに、事業所及び企業を対象とした各種統計調査の母集団情報を得ることを目的とした統計法に基づく基幹統計調査です。
https://www.stat.go.jp/data/e-census/2021/index.html

⑤''経済産業省「工業統計調査」
我が国工業の実態を明らかにし、産業政策、中小企業政策など、国や都道府県などの 地方公共団体の行政施策のための基礎資料を得るとともに、経済センサス-活動調査の中間における 経済構造統計を作成することを目的としております。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/gaiyo.html#menu01

「経済構造統計」「工業統計調査」は、総務省及び経済産業省共管の基幹統計調査として経済センサス-活動調査の中間年における経済構造統計を作成することも目的としており、経済センサス-活動調査実施年を除く各年において、令和元年度から同時・一体的に実施しています。
https://www.stat.go.jp/data/kkjkou/index.html

⑥経済産業省:「鉱工業指数」
「経済産業省生産動態統計」を利用しています。また、他省又は業界団体で作成している統計を利用した所管外品目は、44品目(食料品・たばこ工業の品目や、医薬品、鋼船など)です。
ウェイトは、「経済センサス-活動調査(基幹統計調査)」等を基礎データとしています。

家計に関する基幹統計
①総務省:「家計統計」
家計調査は,一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約9千世帯の方々を対象として,家計の収入・支出,貯蓄・負債などを毎月調査しています。
https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html

②総務省:「全国家計構造統計」
家計における消費,所得,資産及び負債の実態を総合的に把握し,世帯の所得分布及び消費の水準,構造等を全国的及び地域別に明らかにすることを目的とする調査
https://www.stat.go.jp/data/zenkokukakei/2019/index.html

③厚生労働省:「国民生活基礎統計」
保健、医療、福祉、年金、所得等国民生活の基礎的事項を調査し、厚生労働行政の企画及び運営に必要な基礎資料を得るとともに、各種調査の調査客体を抽出するための親標本を設定することを目的としている
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21tyousa.html#anchor02

雇用に関する基幹統計
①総務省「労働力統計」
我が国の就業・不就業の状況を把握するため,一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約4万世帯の方々を対象に,毎月調査しています。
https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html

②総務省「就業構造基本調査」
国民の就業及び不就業の状態を調査し、全国及び地域別の就業構造に関する基礎資料を得ることを目的としています。(5年ごと)
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/gaiyou.html

③厚生労働省「毎月勤労統計」
雇用、給与及び労働時間について、全国調査にあってはその全国的変動を毎月明らかにすることを、地方調査にあってはその都道府県別の変動を毎月明らかにすることを目的とした調査です。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1d.html#link01

賃金に関する基幹統計
①国税庁「民間給与実態統計」
民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としている。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/top.htm#a-01

②厚生労働省「賃金構造基本統計」
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするものである。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_b.html#01

①と②の違いについて。母集団に差異がある。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000683535.pdf

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