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心理学の再現性問題 1

このnoteを書いたのは西田さん.

「科学」らしさの条件

いきなりですが、「科学」とは何でしょうか? 私たちが「科学」と聞いたときに想像するものは何でしょうか? このような問い方だと答えにくいので、もう少し具体的に考えてみましょう。

科学の対象となるものは何でしょうか? これに対しては、例えば天体の動き、人体の仕組み、物質の働きといった自然現象や物理現象だと答えることができそうです。それでは、社会や経済の仕組みや動きについてはどうでしょうか? これは科学の対象だと言えそうですか?

科学的な方法とは何でしょうか? 典型的には、たくさんのデータを集めて統計的に分析する、といった方法が思い浮かびます。それでは、「たくさんのデータ」とはどのくらいの量を指しているのでしょうか? どのくらいのデータを集めれば、「科学らしい分析」ができるのでしょうか?

科学的な思考とは何でしょうか? これに対しては、科学というのは個人の感想や気持ちに基づいたものではなく、みんなが納得できるような合理的で正しい考え方に基づいていると答えてみましょう。それでは、合理的で正しい考え方というのは、いったい何でしょうか?

科学を行う場というのは、どんなところでしょうか? まず思い浮かぶのは「大学院」ですね。多くの人がプロジェクトに参加して、実験や調査の計画、実行、そして報告を動かしているイメージがあります。それでは、科学は大学のような大きな組織でしかできないものなのでしょうか?

どうでしたか? このようにどんどん細かいことを掘り下げて聞かれると、意外と単純には答えられないな、と気づきますよね。
実はこうした「科学とはなんだろうか?」という問いは、「科学哲学」という哲学の一分野の代表的な問いとなっています。そして、それに対する答えは「科学とは〇〇だ!」「〇〇であれば科学だ!」と単純明快に言えるようなものではなく、たいがいが「〇〇という観点を重視するならば、科学と科学ではないもののあいだに線が引ける……こともある」という、少し歯がゆいものになってしまいます。


しかし、それを残念に思う必要はありません。「これが科学だ!」と大胆には言いにくいものの、「科学らしさを保つためには、どういった点を重視する必要があるのか」という問いになら、答えることができます。

今回は、そんな「科学らしさ」を保つための一つの重要な点である「再現性」について、心理学で起きたある「危機」をもとに考えていきたいと思います。

次回は
心理学の危機


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