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【海外デザインスクールまとめ】MBAとならぶ未来のキャリア選択の常識に

新規事業や経営、組織などのビジネス観点から、デザインの重要性が注目を集めるようになっています。

ダニエル・ピンクの「美術学修士は新しいMBA」という記事が、2008年に出て以降、世界では右脳型のビジネスリーダーを育成するデザイン修士がMBAと並び、当たり前のキャリア選択の1つとなっています。

私もエンジニアのバックグラウンドから、デザイン留学を経験し、新規事業や組織変革などのプロジェクトに携わっています。

一方で、海外デザインスクールについてのまとまった情報が少なく、日本人卒業生からの生の情報なども不足しており、MBAとくらべると、一歩を踏み出す勇気を持ちにくいというのが現状ではないでしょうか。

今回は、ビジネスやイノベーションの視点からデザイン留学を検討する人に向けて、海外デザインスクールと卒業生の情報をまとめてお伝えします。

1.海外デザインスクールの基礎情報

デザイン x ビジネスというトレンドは、アメリカや北欧、欧州諸国を中心に広がっており、特に、今後5年、10年で次世代を担っていく若い人材にとって、MBAのようなビジネスの基礎スキルの1つとなっています。

MITやハーバードなどのビジネスパーソンに有名な大学においても、デザイン x ビジネスの修士号をとれるプログラムが創設されるなど、その幅と選択肢は増え続けています。

一方で、現在日本では多くの場合、デザインとは単なる美しさであるという狭い範囲の意味にとどまり、海外に遅れをとっている状況だと言えます。

徐々に、美術大学でビジネスパーソン向けのデザイン思考やデザイン経営に関する講座が開設されつつありますが、第一線のデザイン教育を受けるために海外デザインスクールを考える国内のビジネスパーソンが増えています。

1-1.  MBAと比較した特徴

キャリアを次のステージにもっていくため、海外留学をしたいと思った人にとっての選択肢として、真っ先にMBAが思い浮かびます。

デザインスクールが注目される背景には、ビジネスや企業がこれまでの延長線上に積み重ねるロジカルな取り組みだけではなく、感性や創造性を活かし新しい事業やイノベーションの創出が求められていることがあります。

そのため、
・ゼロからイチを創造する
・課題解決ではなく、課題発見から始める
・言語による分析だけでなく、ビジュアルを用いた発想をする
・ロジカルな説得だけでなく、エモーショナルに心を動かすことを重視する
・ビジネスだけでなく、心理学やテクノロジーなど様々な専門家と共創する
などの特徴があります。


1-2. 留学するメリット

デザインスクールで身に着けることができる能力は様々ですが、次のようなメリットがあると私は感じています。

1. 専門性の掛け算で自分なりの強みをつくれる
プロマネ x デザイン思考、戦略コンサル x ビジネスデザイン、マーケティング x サービスデザインなど、独自の強みでキャリアをつくるきっかけになる

2. デザイン人材の需要が伸びているが、供給が少ない
デザインコンサル 、デジタル領域の新規事業など、デザインスクールの強みが活きる求人が増えているものの、人材が不足している

3. 起業や経営が身近になる
デザインプレナー、デザイン経営という言葉が定着してきているようにクリエイティビティが鍵となる事業づくりや経営に精通する

4. キャリアを面白がってもらえる
卒業後、デザイン留学とその後のキャリアに興味を持ってくれる人が多く、繋がりが作りやすくなる


1-3. 留学するデメリット

一方で、デザイン留学をすることでのデメリットとしては次のようなものがあると思います。

1. 卒業後のキャリアを描きにくい
デザイン留学後のキャリアを積んでいる人がもの凄い勢いで増えていますがまだMBAなどと参考になる先輩のモデルが少ないです。

2. デザイン人材の活躍しやすい企業が限定的
MBAと異なり、採用する企業側がどのようにデザイン人材を活用すればよいか分からないケースや、組織設計上、デザイン人材が活躍しにくいケースがまだ多くあります。

3. お金や時間がかかる
留学全般にいえることですが、学校によっては1,000万円近くかかるケースもあり、決して少なくない投資が必要になってきます。

2.海外デザインスクールの一覧

海外デザインスクールを比較して、検討しやすいようスクール毎のプログラムの特徴や学費などを一覧にしてまとめてみました。

2-1. デザインスクール毎の特徴

デザインスクールのプログラムには、経営の視点からデザインを捉えているものから、プロダクトデザインやビジュアルデザインといったより具体的な形あるデザインを学ぶプログラムまで、様々です。

高度デザイン人材育成の在り方に関する調査研究

この表以外にも、プログラムを比較する際の特徴として、以下のような観点があります。

・手を動かしプロダクト制作する  or  コンセプト策定までを重視する
・ビジネスのためのデザイン  or  社会のためのデザイン
・フィジカル領域に強み  or  デジタル領域に特化
・ビジョンなどの思想を重視  or  手触り感のあるプロダクト体験を重視
・フレームワークを重視  or  経験からの学びを重視
・プロフェッショナルデザイナーの育成  or  デザイン起業家の育成
・卒業まで最短1年 or 2年
・学費:無料から1,000万円まで

2-2. 米国デザインスクール

1.California College of the Arts(カリフォルニア・カレッジ・オブ・アーツ)
学科:デザイン修⼠課程 ・デザイン修⼠+MBA
特徴:新規事業を創出する事業戦略及びデザイン戦略を実践的に習得
期間:デザイン修士課程2年間、デザイン修士+MBA3年間
学費:$52,850≒610万円(年間)

2.Harvard University(ハーバード大学)
学科:デザインエンジニアリング修⼠
特徴:デザインと工学を組み合わ世界にインパクトを与えるイノベーションを創出するリーダーを養成するプログラム。
期間:2年間
学費:$53,420≒610万円(年間)

3.IIT Instituite of Design(イリノイ⼯科⼤学 )
学科:デザイン修⼠ ・デザイン修士+MBA 
特徴:ビジネスや社会イノベーションをゼロからイチで創出するプロフェッショナルを養成する老舗デザインスクール。ビジネススクールの面も強い。
期間:Master of Design Methods1年間、Master of Design+MBA2年間
学費:$59,000≒675万円(年間)

4.マサチューセッツ⼯科⼤学(MIT)
学科:デザインマネジメント修⼠
特徴:ビジネスや社会の課題に対して創造的アプローチを駆使して解決するリーダーを養成するプログラム。最先端のテクノロジーやアートを駆使。
期間:1年間または2年間
学費:High (≥37 credits)$29,900 per term、Medium  (≥16 but ≤36 credits) $19,900 per term Low  (≤15 credits)$12,200 per term

5.パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(Parsons School of Design)
学科:デザイン修⼠
特徴:社会やビジネスへの影響をクリエイティブに創造するプログラム。
近年は、日本の官僚からの留学も増えている。
期間:2年間
学費:約1050万円(2年間)

6.ロードアイランド スクール オブ デザイン(RISD)
学科:デザインエンジニアリング修⼠
特徴:美大のハーバードと呼ばれる伝統的な芸術大学でのデザインと工学の融合によるイノベーション創出を学ぶプログラム
期間:2年間
学費:$53,820≒600万円  (年間)

2-3. 欧州デザインスクール

7.Delft University of Technology(デルフト⼯科⼤学@オランダ)
学科:戦略的プロダクトデザイン修⼠
特徴:ビジネス文脈から戦略的にプロダクト・サービスのデザインを学ぶ
工学系のバックグラウンドからデザインを学ぶことができる。
期間:2年間
学費:€ 19.600≒250万円 (2年間)

8.ミラノ⼯科⼤学(Politecnico di Milano@イタリア)
学科:サービスデザイン修⼠ ・ストラテジックデザイン修⼠
特徴:サービスデザインや戦略デザインのプロフェッショナルを養成する。サイエンス・工学系からデザインを学ぶことができる。
期間:1年間
学費:€ 15.500≒200万円

9.ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art@英国)
学科:グローバルイノベーションデザイン修⼠、サービスデザイン修士、イノベーションデザインエンジニアリング修士、情報体験デザイン修士
特徴:イノベーション・ビジネス・社会のための多様なデザインプログラム
イノベーション x デザインの領域で長い歴史を持ち、日本人留学生も多い。
期間:1年間
学費:£32,000≒500万円

2-4. 北欧デザインスクール

10.AALTO UNIVERSITY(アアルト大学@フィンランド )
学科:国際ビジネスデザイン経営修士、共創インダストリアルデザイン修士
特徴:経営視点でのデザイン教育、共創による社会変革型のデザイン。
期間:2年間
学費:€15,000≒190万円(年間)(授業料免除制度あり)

11.コペンハーゲン インスティチュート オブ デザイン(CIID@デンマーク)
学科:インタラクションデザインプログラム
特徴:少数精鋭でデザインを独自のフレームワークをもとに学ぶ。デジタル・フィジカル領域での体験設計、プロトタイピングを重視。CIIDのコンサルティング組織もあり、実践的なプログラム。
期間:1年間
学費:$2,550(ワークショップ毎)≒ 200万

12.HYPERISLAND(ハイパーアイランド@スウェーデン、シンガポール)
学科:デジタルマネジメント修士
特徴:デザイン教育機関+コンサルティングファームの複合機関。デジタル分野でのデザインに強み。ストックホルムだけでなく、イギリスやシンガポールでの受講も可能。
期間:1年間
学費:£17000 ≒ 260万

13.KAOSPILOT(カオスパイロット@デンマーク)
学科:イノベーション創出のためのビジネスデザイン / 起業家教育
特徴:組織形成、プロジェクトデザイン、起業プロジェクト、ソーシャルイノベーション、産業界とのコラボレーションプロジェクト
期間:3年間
学費:DKK 161.000 ≒ 280万円

3.日本人留学生からの情報

わたしもデザインスクールに留学した先輩の書籍やブログ等を読んで、現地での生活や卒業後のキャリアについてのイメージを描いていました。

スクール毎の留学者の現地での情報(ブログ等)をまとめてみました。

1.California College of the Arts(カリフォルニア・カレッジ・オブ・アーツ)
Leoさん髭猿さん 

2.Harvard University(ハーバード大学)
山下彩香さん

3.IIT Instituite of Design(イリノイ⼯科⼤学 )
佐宗邦威さん佐々木 康裕さん
Moriyamaさん

4.マサチューセッツ⼯科⼤学(MIT)
mitidmさん

5.パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(Parsons School of Design)
MasakiさんNAOKIさん

6.ロードアイランド スクール オブ デザイン(RISD)
留学記のポッドキャスト
・小泉成文さん(2週間プログラム

7.Delft University of Technology(デルフト⼯科⼤学@オランダ)
Kihara Tomoさん

8.ミラノ⼯科⼤学(Politecnico di Milano@イタリア)
Yasuyuki Hayamaさん

9.ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art@英国)
スプツニ子さん
Takayuki Sakaiさん道尾秀介さん

10.AALTO UNIVERSITY(アアルト大学@フィンランド )
Masafumi Kawachiさん松崎さん森さんくにちゃん

11.コペンハーゲン インスティチュート オブ デザイン(CIID@デンマーク)
Kiura Mikioさん
Kosuke Machidaさん
Minatsu. Hommnaさん

12.HYPERISLAND(ハイパーアイランド@スウェーデン、シンガポール)
Asucaさん
ユカさん

13.KAOSPILOT(カオスパイロット@デンマーク)
・大本綾さん https://diamond.jp/ud/authors/58abbd6c7765611bd04e0200

4.  デザイン留学は直感とご縁で選ぶ?

海外デザインスクールの情報を検討しやすいようにまとめました。
私が実際に留学した人に話を聞いてみると、学費や自分のキャリアとの親和性、興味の方向性、カルチャーフィットなど様々な観点から選んでいるようです。

一方で、最終的に意思決定をするときには、尊敬できる先輩から紹介を受けたことや、紹介されて実際に留学している人に話を聞いてみたらピンときたなど、直感やご縁で最終的に判断することが多いようです。

MBA留学とは異なり、日本ではまだまだ先例が少なく、また、ビジネスやエンジニアリングのバックグラウンドを持つ人がデザイン留学後のキャリアを描くことは一様ではないため、「不確実性」にチャレンジする心意気や性格を持っている人がデザイン留学を志す場合が多いのかもしれません。

このブログの情報で夢の実現やキャリアアップの選択肢としてデザイン留学をしよう!と身近に感じていただければ幸いです。


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