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北欧デザインスクールのイノベーションを実践から学ぶワークブックの公開

単なる知識だけではない、イノベーションのためのデザインを実践から学べるワークブックを制作しました。

noteの更新が数ヶ月とまってしまいましたが、公開できる状態に仕上がったので、紹介したいと思います。

ワークブックの意図

教科書ではなくワークブックという形式を選んだ理由は、イノベーションやデザインは、知識を蓄えたり、方法を教わるだけでは、本質的に学ぶことはできないと考えているためです。

経済産業省と特許庁からデザイン経営宣言が発行されたり、イノベーション人材(高度デザイン人材)を育成するための研究会が立ち上がったり、デザイン思考をはじめとする数多くの書籍が執筆されており、イノベーションを創出する"デザイン"に対する注目度は高まっていると感じています。

高度デザイン人材の分類(引用:高度ザイン人材育成研究会

このように、デザイナーであるかどうかにかかわらず、"デザイン"についての定義やプロセスを書籍等で学ぶことが身近になったものの、抽象的で捉えどころのなく、非デザイナーのビジネスパーソンやエンジニアにとっては、分かったような、分からないような、実際に使えるという実感がわかない方も多いのではないでしょうか。

DESIGN THINKING(デザイン思考)
⇨DESIGN DOING(デザイン実践)

そこで、ワークブックでは、単なる知識のインプットではなく、イノベーションを創出するデザインのエッセンスを「実践」から学ぶことを意図して、制作しました。

フィンランドで私が参加したイノベーション教育でも、先生はほとんど何も教えてはくれませんでした。教えるという意味の先生(ティーチング)ではなく、引き出すという意味のコーチ(コーチング)やファシリテーターに、近い役割を担っていました。

このワークブックも同様に、デザインとは何かという知識を伝えるよりも、緩やかなガイドを設け、実際に手を動かしてワークを進める、実践型のスタイルをとり、最後に実践したワークの裏にある理論を学ぶ構成により、経験をつうじて、明日から使える学びを提供することを意図しました。

ワークブックの概要

テーマは「自分らしいビジョンから始めるサービスデザイン」です。自分のビジョンに気づくところから始め、最終的に、自分らしいサービスの設計図を作る1つのプロジェクトを実施する内容になっています。

プロジェクトは次の4つのワークに分かれています。

・あなたらしいビジョンづくり
・サービスの理解と機会発見
・サービスアイデアの発想とプロトタイプ
・提供者の視点をデザインする

この4つのワークを1日約1時間、14日間かけて、完成する想定です。
今回のワークブックは、ビジョンに近い既存のサービスを出発点としてワークを進めます。

よくある1日のデザイン思考ワークショップで概要を知る類のものではなく、腰を据えて、でも、気軽に取り組みながら、イノベーション創出のデザイン能力(capability)を養う内容としました。

ワークブックの最終成果物は、ワーク終了後、実際に自分らしい事業やサービスを提供したい人にとって、具体的な行動に移していける材料になると考えています。

ワークブックをオススメしたい人は

1. デザイン思考などの本を読んで、知識はあるが、実際に取り組むとなるとできるイメージをもてておらず、実践できるようになりたい人
2. 自分のビジョンや自分らしさから始める事業やサービスを作りたい人
3. デザイナーとして、グラフィックやUIデザイン等の経験者が、事業やサービス全体といった上流の視点でのデザインに取り組みたい人

を考えています。

シンプルに、海外にデザイン留学するほどの時間やお金は投資できないけど本やオンライン講座よりも実践的にやりたい人向けの内容です。

ワークブックが大切にしていること

実際にとりくむ際には次の3つのマインドセットを意識してほしいと考えます(私がフィンランドで受けたデザインイノベーション教育の思想です)。

・Learning-by-Doing:知識よりも、実践しながら学ぼう
・Playful Mindset:普段の仕事を離れ、遊び心を大切にしよう
・Multi-Disciplinary:自分の視点のみに捉われず、オープンでいよう

Learning-by-Doing
ワークブックの取り掛かりには敢えて多くの知識は書きませんでした。それは、デザインは頭で理解するよりも、実践による自分なりの感覚で理解して初めて使えるようになると考えているからです。何冊もの本を読んで、分かった気になるのではなく、何回も手を動かして、プロジェクトをやって初めて本当に理解できると考えています。

Playful Mindset
仕事モードを離れ、◯◯しなければならないという have to 思考を脱ぎ去り、自分のワクワクするという want to 思考が、イノベーションの創出には不可欠だと考えています。リラックスできる環境で、コーヒーを飲みながら楽しく取り組むことで、本来の創造性が開かれると考えています。

Multi-Disciplinary
このワークブックは基本的には1人で取り組みますが、本来は、お客さんやサービスの作り手、腹を割って話せる友人など、色んな人と対話をしながら進めることで、よりよいものになります。対話は必須としませんでしたが、イノベーションは新結合だというシュンペーターの定義のように、新しい視点や発見にオープンでいることが大切だと考えています。

それでは、実際のワークブックを共有します。

ワークブックの共有

ワークブックの全スライドをここで共有します。
閲覧専用のグーグルスライドだと画面が小さいと思うので、PDFで閲覧してみてください。

PDFをみながら、紙をペンを用意して、取り組むことができると思います。ぜひ、活用してみてください。

読み・書き・そろばん・デザイン?

最後に、そもそもワークブックを作ろうと思った理由について書きます。
私の個人的な話にはなりますが、ワークブックの内容にも関係するので、読んでいただけると嬉しいです。

私は2018年夏頃から2020年の春まで約2年間、フィンランドのアアルト大学IDBMというイノベーションを創出するデザインについて学ぶ修士課程に留学していました。

工学系の大学院を出てから、エンジニアとして数年間働いていた私は、留学するまで、ずっと分析・研究・管理といった理系の仕事に携わり、デザイン・イノベーションといった創造的な領域には馴染みがありませんでした。

フィンランドにデザイン留学すると決めたきっかけは、前職でフィリピンやオーストラリアの田舎に駐在していたことでした。

詳細は省きますが、元々、人間の生活の豊かさに貢献したいという想いで、途上国を中心とした大規模なエネルギー開発プロジェクトに携わっていた私が、その想いとは裏腹に、現地の生活や文化が崩壊していくのを目の当たりにする原体験があり、「豊かさとは何か?どんな事業やサービスが本当の豊かに貢献するのだろう?」というテーマを真剣に考えるようになりました。

そのテーマを深めるヒントになるかもしれないと思ったのが、世界一幸せな国で知られるフィンランドでのデザイン留学でした。当時、妻とこれから生まれてくる子供がいながら、その決定ができたのは、当時の私から見た対照的な北欧の豊かさを知りたかったこと、人間の深い理解にもとづく事業やサービスを創出するデザインを学びたいと強く考えたためでした。

このnoteでまとめたように、豊かさには繋がりというテーマが欠かせないと感じました。それにくわえて、2年間現地で生活して気づいたフィンランドの豊かさの源泉は「教育」にあるということでした。

その教育は、自由教育と呼ばれるもので、教えるというより、引き出すコーチング型の教育です。幼少期から「あなたはどうしたいの?」と問いかけられ、その想いを尊重されながら、育っていく人たちは、「自分らしい想いを育み、その想いにまっすぐに生きている」と感じました。

だからこそ、イキイキとしているように思いました。

日本では、誰かから与えられた問題の答えを出す、誰かから言われたことをするという◯◯しなければならないという基準が強く、自分の想いに沿って行動する◯◯したいという内発的な動機を意思決定の基準にすることは少ないように感じています。

私の受けたデザインイノベーション教育とは、まさに、そのイキイキと自分の想いをまっすぐに生きるための教育であり、「自分のビジョンに気づき、深め、表現して、そのビジョンに近づく行動をとっていく能力」を育むことがその本質だと私は考えています。

ワークブックを活用して、自分の内なる想いにアクセスをして表現をするという経験をとおして、自分本来の想いにまっすぐに生きるというまさに北欧で感じた豊かさ(well-being)に貢献できたら、嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もし、もっと短い時間で取り組めるのがいいなど、コメントあればぜひよろしくお願いします。

フォローやシェアいただけると嬉しいです。