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華金を華木と言い換える

わたしは週の後半にいくにつれて忙しくなっていく仕事をしていて、そのせいで「華金」をどうしても我慢できない時がある。
木曜あたりから誰とどんな話をしたい気分だとか、ぼんやり目星をつけては金曜に仕事が終わったタイミングで、相手にとっては突然の、わたしにとっては前日から予定していたその一本の連絡を入れる。


希望が通る確率は大体半分に満たないくらいだ。


今週はゴールデンウィークを控えていたので、まだ木曜のうちに「華金」ができてしまい、いつもよりたった1日早く訪れる休日に社会人(わたしも含めて)はこうして歓喜してしまうのだ。


それなのにわたしは「華金」のアポを誰にも取らずに当日を迎え、理由は職場の彼(前々回更新の18時ちょっと前集合と言い放った彼)にラーメンを食べに行こうと誘われていたからだった。


後に控えた予定を楽しみに仕事に励んでいたが、お昼を過ぎた頃から雲行きが怪しくなり、定時には何時間かの残業が確定していた。
既に1時間残業したところで、彼に「何時(終わり)目標ですか?」と声をかけたところ、ちょうどキリが良かった様で、「2、3分で」と言われて焦った。


わたしはまだまだ終わらない・・・


待たせるのは気が引けたが、自分の口から「今日はなしで、また今度」と言えるほど華金に諦めがつかず、それが伝わってしまったのか、「こちらは構わないよ」と言わせてしまったため、30分で終わらせる約束をして、それまでに終わらないものは連休明けに回した。


どさくさに紛れて、その30分の間によれた化粧をばっちり直すと、彼の元へ直行するなり「ごめんなさい」と第一声が出たが、待っててくれたお礼を先に伝えれば良かったと後悔して、わたしはお礼を先に言う癖をつけようとしている最中だからだ。


「いいのよ」と言った彼とラーメン屋に向かう。


新橋はラーメン屋に定評がある街で、週の初めでも仕事終わりのサラリーマンで行列を作る店を普段から横目で見ていたため、自分もついに仲間入りできることに喜び、残業を経てようやくたどり着いたその一杯に大変満足した。


店主にご馳走様でしたと言い放ち、足早に外に出ると、この後どうする?みたいに顔を見合わせ、「飲みたいです、華金だし」とわたしから口を開くと、彼に「華木でしょ」と言い換えられた。

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