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ゴールドの指輪のはなし

今日は何をしよう。今月いっぱい会社が休みなので、残りの自粛を有意義にのんびりと過ごしている。
春がきてすぐの頃は突然の孤独の訪れにいても立ってもいられず、かといって誰にでもスマートに連絡を取れるほどの爽やかさは、わたしには備わっていないのだ。毎日繋がりに飢えては空を仰いでいた。

そんな時期も束の間に峠を越え、今ではひとり時間の充実の味を占めて、ついにはこんな記事まで書き始めてしまい、わたしはこうして生きている。

紺色のTシャツにラベンダー色のテーパードパンツを合わせたら思ったよりラフだった。少しこ綺麗に見えるようにアイメイクをオレンジにして女子っぽくした。我ながらしっくりきたのに、やっぱり今日の予定はないのだ。
そんなことはわかっていても極め付けにギラギラした目でアクセサリーをぐるっと一周。

目に留まったゴールドの指輪。

余暇があると脳が休まって緩んだときに記憶までだだ漏れてきてしまうとわたしは思っている。これから、そのだだ漏れてきたもののはなしを始める。

「指輪かわいいね」

そういってわたしの左人差し指からするんと抜いて、自分の中指から細くなっていく指の順番で挑戦してようやく小指に入ると、満足そうにいろんな角度から眺めた挙げ句の果て「俺でも入るな!」とにんまりしてから、またわたしの元の指まで戻してきた。わたしは咄嗟にふざけて睨んだのに、彼のその笑顔を独り占めしたので、どうしても何も思わずにはいられなかった。

彼はいつでも輪の中心で、例えば遊園地でいう観覧車とはまた違ったジェットコースターみたいな魅力に、みんながハラハラしながら吸い込まれるようにして行列していたんだ。

わたしにはそんな彼を独り占めしたことがもう一度だけあった。まだお互いのことを知らない頃、焼き鳥屋さん(鳥貴族なんだけどね)で2人で飲みながら話をした。
家族の話をした。彼が話すから、わたしも話して、わたしが聞くと彼も応えてくれた。
他にも昔話を沢山聞かせてくれて、わたしはその時間のお礼を、2年経とうとしている未だに彼に伝えたいくらい、嬉しい時間だった。

彼とは出会ってからずっと、今でも友達だ。
だけどわたしは彼がいる飲み会の日には、どうしてもそのゴールドの指輪をつけてしまうんだ。

p.s.
2020/06/09 晴れ
エアコンのフィルターを洗ったのでスイッチを入れると母が「ドライでいいじゃん」と言った。わたしはドライの効力を知らなかった。まだまだ教わることが多い。いくつになってもわたしはこの人の前では子供だ。

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