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書評はミネラルウォーターのように書く

書評を書いていると、ものすごく体力・気力を消耗する。

前職では商品企画をしていて、とんでもないスピード感と膨大な量感の中でおわりの見えない仕事をし続けてきたが、正直、こんなにも疲れることはなかった。

むしろ、アドレナリンが24時間出まくっていて、常に頭の芯がキンキンに働いているような日々。睡眠時間も15年間、ほぼ毎日2、3時間だったが、つらいと感じたことはなかった。

それだけ20代30代というのは、体力があるということかもしれないが、今は一本、書評原稿を書いたらバッタリとダウン、というくらいに疲れはてる。

そのダウンを見越して、外出仕事や商談、事務作業や選書、家事などを一日の初・中盤に持ってくるようにしている。

書評執筆後は、使いものにならなくてもいいような時間配分で、最初から一日を組み立てているのだ。

書評は、媒体のテイストによって落としどころの調整はあるものの、ある程度の型はあるので、取材原稿などと比べるとまだラクなのかもしれない。

けれど、私は、基本的に一原稿・入魂で書いている。

本には、著者の経験や熱量や魂が込められている。

読者は、それぞれの状況があるとは思うけれど、少なからず書評を読もうとしている人は、何かを得たいとされていることが多いと聞く。

そのパイプ役として、適切な情報を適切なトーンで伝えるということは、私としては、どうしたって責任重大だという気持ちでのぞむことになるわけだ。

イメージとしては、おいしいミネラルウォーターを飲んでいるような感じを理想としている。

極端に美味だったり、刺激的な味はしないけれど、乾いた体にじんわり沁みとおる。飲んで少し体にいいような気がして、爽やかな気分になる。そして、また頑張れる。

800字から2000字の中に、そういうことを祈るように注入して書いていると、終わったと同時にこときれる。

世の中には、自分がしっかり立っている書評家、言葉づかいがうまい書評家がたくさんいるけれど、私は本や著者と読者の良きつなぎ手として、クリアでみずみずしい文章を書く書評家でありたい。

今日もひそやかに、そんな文章を書くべく努力したいと心に誓う。


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