【創作小説】見上げれば、碧いそら①
あれだ……。
あれをいつもこの時期になると思い出す……。
そこでは、柿の木の葉が、色付いている。
百舌鳥やオナガ、ムクドリがさえずっている。
「キーイ、キーイ……」
ここは、半分田舎、半分都会のたたずまいの古い高校。それでも、静かなせいなのか、やたらと学力は高い。
碧い……この学校のイメージは、ひたすら碧い……。南国の海のように……。
緑ヶ丘高校。秋の球技大会がもうすぐやってくる。
私たちの2年6組女子の、記憶に遺る……。
私、相川里帆とその親友 樋口萌奈は、またしても隣のクラス 2年7組に潜り込んでいた。
隣のお昼の休み時間に潜り込んで、弁当を食べたあと、バレーボールの円陣パスの輪に加わっていた。
萌菜のポニーテールが、ふりふりしてる。
どうも、うち等のクラスはおしゃんなコが多くて追いていけない。
なにかカースト制度のようなものまでできている。
その点、私の中学時代からの友だち、凛のいる、この2年7組は、どこか泥臭いが人間味があって馴染みやすかった。なぜだろう。クラスの色あいみたいなものか……?
私、里帆と萌奈は、私の友だちの凛の大きな「顔利き」で、昼休みにバレーボールの円陣に加えてもらって遊んでいた。私たち2人だけでは寂しいのもあった。
ぽーん。ぽーん。と、ポールが飛ぶ。
「ほーい」
「はーい」
掛け声が飛ぶ。
しかし、萌奈だけは、いつもボールがやってきても、1メートル離れたところで構えて取ろうとしてしまう。
ボールは、いつも、1メートル向こうで落下する。
「ほーい」
「はーい」
そんな、私たちの高校で、クラス対抗秋の球技大会は1か月後。
私や萌菜の元のクラス2年6組でも2つのグループが結成された。
しかし、私も萌奈も、バレーボールが下手な連中で集まる、2軍のようなチームに加えられた。
「うーん、仕方がないわね。私たちじゃ足引っ張るし……」
元から、プクッとした顔立ちを益々プクッとさせて、萌奈が呟く。私もだった。
優等生は、プライドを傷付けられるのに敏感だ。
中学生まではそれでも、全ての分野の成績が良かったからこの高校に来られたのだ。しかし、2年になると、諦めもでてくる。
この高校のなかでは、私たちは(少なくとも球技では)「落ちこぼれ」なのだ。
「そうよね……、勝ちたいのがあるわよね……」
2年6組の、執念がそこはかとなく感じられる……。けれど、私も萌菜も文句を言うつもりはなかった。
こんな私たちには、他のクラスのもっと出来る人たちにまともに渡り合えるわけがない、いや、そんなこと考えもしなかった。
(いたたたた……)。
私は、お腹が痛くなった。けど、なるべく上を向いて気分に余裕を持とうとした。
ここから、私たちの記憶に一生遺る、球技大会の思い出が始まった……。
つづく
©2023.11.26.山田えみこ
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