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花火と弾けた恋のはなし。


 夏の思い出を話してくださいと言われて、思い浮かぶこと。
 幼少期の思い出としては、8月生まれなので、ケーキのチョコプレートを食べられる特別な月だった。夏のうだるような暑さの中でも、甘ったるい生クリームが恋しかった。冬に食べるケーキは、装飾に使われる砂糖菓子も、チョコプレートも妹たちに食べていいよと譲る姉だった。お姉ちゃんだからという呪縛のせいでそうしていたのではなくて、重度のシスコンによって、妹たちに食べさせてあげたい一心での行動だった。
 今回、お話したいのは、こんなかわいくてピュアな思い出ではない。夏の思い出成仏の会にお付き合いください。

 あぁ、わたしの夏にも、甘酸っぱい恋の思い出があったらなぁ。



 中学生の頃、勉強も運動もよくできて、他校の女子からもモテモテの1つ歳下の男の子がわたしの恋人だった。下駄箱を使って手紙のやり取りをしたり、彼のおうちは学校の敷地から見えるほど近かったのに、毎日遠回りして一緒に帰ったりした。きっと、少し(いや、けっこう?)自信家で、自己愛が強い子で、自分がモテていることは自覚していたし、わたしがいなくても平気な子だった。そんな彼とは対象的に、自己肯定感も低くて、ネガティブ思考だったわたしは、その子を全てと思ってしまっていて、付き合って別れてをくりかえした。未熟だったから、フラれても、彼が了承さえすれば、うまくやり直すことができると思っていた。もちろん、そんなわけなくて、お互い好き同士でいられた時間なんて、瞬きくらい一瞬だったように思う。

 そんな彼と別れた後に、2人で会って話そうということになって、近くの公園に行ったマジックアワーが過ぎ去って、辺りもうす暗くなり始めて、もう帰ろうと立ち上がると、遠くで上がる花火を見た。どうしても、彼への未練を晴らせずにいるわたしを後ろから抱きしめながら、彼はこう言った。

 「俺はね、ここから見える花火を、自分の子供と一緒に見ている未来を想像するんだよ。でも、それを一緒に眺めるのは、エマじゃないってことも、もう決まってるんだ。

 あの、それは。自分からフッた、未練たらたら女を後ろから、優しく抱きしめて言う言葉ですか。
 でも、あなたの予言通りになりそうです。あの時は、心底落ち込みましたが、社会人になってから参加したサークルで再会したときも、他人のふりをしてもらえて助かった。他人には氷以上に冷たい人間だったことを思い出させてもらった。
 さよなら、何でも持っていそうで、何も持っていなかったあなた。
 さよなら、彼がこの世の全てだと思っていた中学生の頃のわたし。

 完全にやられた。全然、この言葉忘れられなくて、彼の言葉から始まる小説まで書いてしまった。中身はもちろんフィクションだけど、興味ある方は、ぜひ。(2年前くらいに作ったから、いまよりもずっとへたくそなので、お手柔らかに。)


***


 彼にはこれ以外にも、衝撃的なことをたくさん言われた。ただ、思い出せないけど、褒められたり、優しくされたりもしていたから、わたしは彼と一緒にいることをすぐにはやめられなかったんだろうな。彼の言葉に影響を受けて、変わりたいなと思えた瞬間も確かにあったし、悪いことだけではなかったのかも。でも、彼女に面と向かって「顔が好きじゃない」というのはどうかと思うよ。彼も大人になったし、思ったことをもう少し賢く伝える言葉を覚えていたらいいなと思う。勉強だけできるんじゃだめだよ。

 今日も読んでくれてありがとうございます。またね。




わたしのペースで、のんびり頑張ります。よかったら応援もよろしくお願いします。