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本屋のオバちゃん

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1997年〜2009年までの書店員時代のおもしろいエピソードを書いています。
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記事一覧

バーコード改め……

バーコード改め……

2008年頃の話です。

バーコード親父改めアフ〇ック親父と命名します。


この親父さんが、ある日の夕方、ちょうど店長が休憩中で、私一人しかいない時に来ました。

この人、
「この本、取り置きしといて」
と、何冊も預けっぱなしにして、2ヶ月も、3ヶ月も買いに来ないで、あげくの果ては、
「やっぱり、これキャンセル」
とか言う人です。



その、〇フラック親父が私一人の時に来て、本を3冊、レジにぽ

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ノダメ事件簿

ノダメ事件簿

2008年頃のお話です。
頭が軽やかな若き正社員さん(仮名:ノダメ)の事件簿です。

1.ノダメちゃんの接客態度が悪かったのでお客様Aが怒り出し

2.彼があやまり方を知らないばかりにお客様Aの怒りがエスカレートし

3.周囲の罪のない親子連れがビビり

4.それを見ていた別のお客様Bがお客様Aに対して怒り出し

5.最終的にはお客様同士の殴り合いとなり警察まで来た

……という騒ぎがあった。

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闘いの日々

闘いの日々

2008年頃の話です。

【Round1:女子高生】

日本語が伝わらないことが多い……。

いつも集団でわらわらやってくる女子高生軍団。(女子中学生軍団かもしれない)

付録付きの雑誌をお買い上げ。
付録は本誌にはさんであり、ひもをダイヤ型にかけてある。
◇ ← こんなふうにね。

ひもがバーコードをジャマしている場合には、ひもを切ってしまってから会計をする。
しかしひもの影響を受けない場所にバ

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ミシュランマダム

ミシュランマダム

2007年の12月の話です。
頭が軽やかな正社員さんと、有能なバイトさんと、たまたま3人揃ってレジにいる時に、ものすごく悪意に満ちた人が来た。
ここまで凄い人は珍しい。

バイトさんは、この手の客に意外に強いのだが、私と社員さんは、精神的に壊滅的なダメージを受けた。

私は愚痴ったり、怒ったりしながら回復を図ったが、社員さんは、何を言っても無反応で、泣きそうなほどに落ち込んでいる。
夕方、あがる時

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謎解き その4

謎解き その4

2007年頃の話です。

若い女の人に聞かれた。
はっきりしない声で、早口だ。

「『エーサーサルト』ってありますか?」



「え‥‥『エーサーサルト』ですか?」



「はい、『エーサーサルト』です」

(正解はなんだと思いますか?)

何度聞き返しても、エーサーサルトと聞こえる。
私も、すっかり活舌のよくなった口で何度も確かめる。

エーサーサルト???



まったく聞いたことがない。

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敵意のない相手を攻撃する人

敵意のない相手を攻撃する人

2008年頃の話です。

本を入れる手提げのビニール袋の中には、広告が入っていることがある。

これは本屋がいちいち、その都度入れているわけではない。
袋が備品として箱で届いた時から、つまり最初っから入っている。

これはスポンサーである。

ジャマなのはわかる。
でも「広告捨ててください」と言ってくれればすむことなのに。
そう言われれば、すぐに捨てるのに。

今朝、一番で週刊現代を買って行ったお

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難読漢字

難読漢字

2004年11月某日。

近くの女子高校生軍団がやって来た。
夕方は、女子高生タイムなのだ。

わりとかわいくておとなしめの女の子が、
「本を取り寄せてほしいんですけど」
と言って来た。

私は「題名をどうぞ」と言って、客注伝票を用意して書く準備をする。

「あの~、すごく難しい字なんで書けないと思うんですけど……」

大丈夫よ。
ちゃんとカタカナで検索して、在庫の有無を調べてから注文するからね。

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なんでだろう5連発

なんでだろう5連発

(当時テツ&トモが流行っていました)

その1.
文庫本と大きめのムックをお買い上げのお客様に、
「文庫のカバーはどうなさいますか」
と聞くと、
「あ、要りません」
と元気の良いお返事。
では、と、そのまま袋に入れようとすると、
「あっ! そっちだけカバーお願いします!」
と、お客様が指差したのは文庫本……。
なんでだなんでだろう?

その2.
お釣りの小銭とレシートを一緒に渡そうとしていると、受

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うちはよろず屋ではない

うちはよろず屋ではない

本屋のレジにいるといろんなことを聞かれる。
そりゃもういろんなこと。
自分はコンシェルジュだったかと思うほど。

「ボールペンありますか」
「便箋ありますか」
「のし袋ありますか」

こんなのはもう序の口。
まあ、文房具を置いている本屋も世の中にはあるようですから、これはしかたないのかな。

「コピー機ありますか」
本屋にコピー機があったら商売あがったりでしょう。
第一、犯罪だ。

「切手あります

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よ〜く考えよう♪

よ〜く考えよう♪

2005年1月。
超爆裂非常識ネタ。

今日は店長がイレギュラーなお休み。
店に出ていたのは、正社員のマスオさん、それからバイトさんと私。

午前中に、頭髪の薄いおじさまがやって来た。
(かなり遠慮した言い方してるぞ)
仮にバーコード親父と命名。

バーコード親父、レジで本を買った後で、なんだかごちゃごちゃ言い始めた。

「この本は今、ここで買ってくんだけどね。この荷物をちょっとね、後で人が来るか

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困ったおじいちゃん

困ったおじいちゃん

2004年10月のある月曜日。
頑固そうなおじいちゃんがやって来た。

「週刊朝日は入ってないの?」
と聞くので、
「先週号は売り切れました。今週号は明日発売です」
と言うと、
「週刊朝日、月曜日発売だよね?」
と言う。

以下、なかなか噛み合わない会話。

「週刊朝日は毎週火曜日発売です」
「うっそだ~、毎週月曜に出てるよ」
(文字で書くと可愛げがあるが、実はとても憎たらしい口調で言っている)

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困った男の子

困った男の子

2004年10月某日。
小学生の男の子(推定3年生前後)が「遊戯王ヴァリュアブルブック」1冊と、遊戯王カードひとつを、「プレゼント用にしてください」
と持って来た。「1056円です」と言うと、千円札を1枚握り締めて「足りない……」と言う。彼は、こちらの顔をうかがいながらポケットを探り「あの、まけてもらえませんか」と言う。
1円や2円が足りなくて買えない子供の場合、しかも相手の態度に可愛げが見えた場

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謎解き その3

謎解き その3

超難問に出くわしました。
「ちょっとした無理」ならしょっちゅうなんですが、今回は久々に絶対無理でしょうという話です。

お客様は年配の女性。
おばあちゃんです。
本を探していらっしゃるようです。
私は検索を始める準備をしました。

「出版社おわかりですか?」
「出版社、わからないわ」
「では題名は」
「題名、わからないのよ、それが」
「では著者は」
「著者もねぇ、ちょっとわからないの」
「……それ

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