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【連作短編】世界の終わり

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【完結】群像劇。― end of the world 01 ― 連作短編小説です。
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2021年5月の記事一覧

世界の終わり #6-2 メメント モリ

〈 SUV車内 / 佐賀 鳥栖 〉  SUVは速いスピードで道を引き返している。  車体は激し…

世界の終わり #6-3 メメント モリ

〈 SUV車内 / 熊本 南関 〉           * 「悪いこと——とか、まだ起こってな…

世界の終わり #6-4 メメント モリ

〈 フォレストホテル正門前 〉  SUVは減速し、駐車している二台のうしろでタイヤの回転を…

世界の終わり #6-5 メメント モリ

〈 小売店鋪前 〉 「うわぁ……あぁ。こいつ、菊池興産の次長じゃねぇか」  足元に転がった…

世界の終わり #6-6 メメント モリ

〈 フォレストホテル正門前 〉 「とんでもないものを引きあててくれたな」  フォレストホテ…

世界の終わり #6-7 メメント モリ

〈 捜査車両内 〉  広域捜査官らが乗ってきた車の運転席に座ったツカハラ捜査官は、身体を捻…

世界の終わり #6-8 メメント モリ

〈 フォレストホテル 通路 〉 「二宮さん」  ——と、自身の名を呼ばれなければ間違いなく、二宮は背後から近づき、己の口を塞いだ男へ暴力で抗っていたであろう。 「動かないでください」  再び男が耳元で囁く。  二宮は浅く頷き、男に対して手を放せとジェスチャーで訴えた。  イヤホンタイプのワイヤレスヘッドセットが耳から外れて床に落ちる。  小さな音が鳴る。  二呼吸ほど間を置いたのちに拘束は解かれて、両者はほぼ同時に半歩ほど距離を取りあった。  慎重に振り返って、男の顔を確認

世界の終わり #6-9 メメント モリ

〈 スタッフ専用休憩室 / 序 〉  父は暴力を好む人だった。  ぼくと母に対して、鬱積(うっ…

世界の終わり #6-10 メメント モリ

〈 スタッフ専用休憩室 / 破 〉  銃声が鳴り、その場で膝を折ってしまう。  情けない話、腰…

世界の終わり #6-11 メメント モリ

〈 スタッフ専用休憩室 / 急 〉 「——!」  なにが起こったのか理解する間もなく鼓膜を破ら…

世界の終わり #7-1 グロウ アップ

 晴天。  ホント、いい天気だ。  九州から強制退去させられて二週間がすぎた。  はじめの…

世界の終わり #7-2 グロウ アップ

          * 「こちらです」  といわれて、クリーム色の扉を通った。  この場所…

世界の終わり #7-3 グロウ アップ

          * 「もうすぐ焼きあがりますからね」という興梠のおばぁちゃんは、談話…

世界の終わり -最終話-

          *  駅のロータリー側(そば)に立ち、待ちあわせた相手の到着を待っている。時刻は午後五時。空には輪郭のはっきりしない雲が散在していて、街灯には明かりが灯りはじめている。  しばらくすると、右手から見覚えのある——だけど色違いのSUVが近づいてきた。 「やあ、白石くん。待たせてしまったかな」  サイドウインドウをさげて顔を見せたのは、二週間ぶりに再会する柏樹さんだ。  薄い色のサングラスを外し、柏樹さんは髪をかきあげながら降車した。 「お久しぶりです」ぼく