El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたし…

El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたしなみ、カウンターに座った客たちは、ワインの香りを味わいながら、彼の豊かな蘊蓄に相槌をうつのが何よりの楽しみです。さて、今夜もムッシュの語りに耳を傾けてみましょう。

最近の記事

ワインコラム41:私にとっての「未知との遭遇」

タイトルデザイン★Ryoko Sakata 写真★Masaru Yamamoto 先日行った盛岡で、「ウニのワタの塩辛」と言うものを食べてきた。 ウニの中に有る茶色のヒモみたいなものを集めて、塩辛にしたものだそうだ。1人前大さじ山盛り1杯ほどでウニ50個分のワタが必要と聞いた。味は、というと渋みのある磯の味がした。 私は若い時分から、食べたことの無いような珍しい物に目がないたち(質)で、一にも二にもなく飛びついてしまう。 仕事で未知の造り手のブルゴーニュワインに出逢った時

    • ワインコラム40:思いがけない人と思いがけない場所で

      タイトルデザイン★Ryoko Sakata 写真★Masaru Yamamoto 人は時に、思いがけない人と思いがけない場所で会うことがある。 ブルゴーニュのボーヌで知人と会ったことがある。 その日、パリで昼食の後のんびりし過ぎて、ボーヌの駅に着いた時は予定していた時刻を1時間以上過ぎていた。 ホテルにチェックイン後、ボーヌの町に妻と散歩に出た。実は昼食がことのほか重かったので、歩いて少しでも消化したかったこともある。時刻は7時を過ぎていたと思う。城郭に囲まれたボーヌの町

      • ワインコラム39:好きな街

        タイトルデザイン Ryoko・Sakata 写真    Masaru・Yamamoto 今の季節(5月)、道端や空き地で直径3センチ位の青紫や桃色の花を見かける。 矢車菊と言う花だ。10代の頃からこの花を好ましく思っていたが、20代の時に石川啄木の歌を知ってから、さらに親しみを覚えるようになった。  函館の青柳町こそかなしけれ友の恋歌矢ぐるまの花 「かなし」とは愛おしいとか懐かしいという意味のようだ。この少し感傷的で、切ないような追憶を思わせる歌は、20代の私のセンチ

        • ワインコラム38:官能的なもの

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 食物の中には、妖しいと言っても良いほどの官能的な味を持つものが、有るような気がする。 果物でたとえれば分かり易いと思う。私の勝手な種分けによると、マンゴー、パパイヤ、桃、メロンなどがそれに当たる。 私の好きな果物でもある。 その共通点を考えた時、3つの条件に行き着いた。それは、1.甘いこと、2.食感が柔らかいこと、3.風味に、感覚に訴えてくる官能があること。これらの官能的な果物を食べている時の私は、幸福感に満たされているのだ。

        ワインコラム41:私にとっての「未知との遭遇」

          ワインコラム37:「私は貴方が嫌いです」

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 好きとか嫌いとか、人は無責任に言っている。  個人の好き嫌いなど、大抵は重大な事態を引き起こすことも無いので、無責任で構わないのだが・・・・・・。しかし、それが自分に向けられると事は深刻になる。 「好き」は良いとして、「嫌い」は真剣に考えざるを得ない。 お互い熱くなって、相手から「嫌いだ!」と言われた時などは、口論の末であるからある程度理由は想像できる。しかし口論も無くお互い冷静な時に、顔見知りの人から「嫌いです」と言われると、

          ワインコラム37:「私は貴方が嫌いです」

          ワインコラム36:山本先生と田口さん

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 1月17日、日本のワイン文化の発展などに功績のあった、山本博先生が亡くなられた。  先生は弁護士のかたわら、ワインの知識や上質なワインを広める努力をされてきた方だった。試飲会やパーティーなどでお会いする度に、「とても気さくな方」という印象を持った。 先生のことを思うといつも一つの情景が蘇ってくる。 ワイングラス片手に談笑している姿だ。先生の太めの眉毛は少し下がり気味で、それがより楽しそうに見せている。たいていの場合、話のお相手は

          ワインコラム36:山本先生と田口さん

          ワインコラム35:餃子はパスタである

          タイトルデザイン Ryoko Sakata 餃子は好きでよく食べるのだが、何時の頃からかご飯と一緒に食べなくなった。餃子定食を食べなくなったのだ。 中華圏では、もともと餃子はそれのみで食されている。しかし、そういったことが理由で白米を避けているわけではない。何となく合わないように感じたのだ。餃子の皮が、白米を拒絶しているように感じられたのだ。ご飯のおかずとしてそぐわない気がした。 考えてみれば、餃子は皮で具を包んだパスタと考えるのが自然だ。 一般的に、パスタとご飯を一緒に

          ワインコラム35:餃子はパスタである

          ワインコラム34:ルソーのジャングル

          タイトルデザイン Ryoko ☆Sakata 12才の時に衝撃を受けた絵があった。  中学入学時に渡された美術の教科書の表紙の見開きに、その絵はあった。最初の印象は一面のグリーン。良く見るとそれはジャングルで、オレンジ色の美味しそうな木の実もある。 それはアンリ・ルソーのジャングルの絵だった。 ルソーは、ジャングルをモチーフとした絵を何枚か描いているが、それがどの作品だったかというのは思い出せない。 とにかく、その温かそうで湿度を帯びた深い緑色のジャングルに、12才の少年

          ワインコラム34:ルソーのジャングル

          11月のコラムについて

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 11月のコラムはお休み致しました。 11月19日に、エル ボンヴィーノ30周年パーティーを、吉祥寺のホテルで開催しました。 パーティーの前は準備に忙殺され、パーティー後は疲労困憊でした。 しかし結果的には良いパーティーになりほっとしています。 パーティーご参加の皆様、ありがとうございます、皆様のお陰で素晴らしいパーティーになりました。 12月からコラムを再開致します。 よろしくお願いいたします。     El Bon Vino

          11月のコラムについて

          ワインコラム33:刺身定食

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 日本の常識と言うべきことを否定するようで申し訳ないが、私は刺身とご飯が合うとは思えないのだ。 「刺身定食」というものが有るが、私はこれに若い時から違和感があった。  20代の頃東北の或る民宿でこんなことがあった。 夕食の時間になり、日本酒を呑みたくなった私はお酒を注文した。何かツマミは無いかと宿の人にたずねると、無いと言う。仕方なく、から酒のあと夕食を運んでもらった。すると膳の上に、熱望していた刺身があり、酢の物や焼き魚もあるで

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          店主のオススメブルゴーニュワイン20

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata Puligny-Montrachet 1er CRU - CHAMP-CANET 2016 Domaine J.M.Boillotピュリニイ-モンラッシェ 1erCru シャン-カネ 2016 ドメーヌ: ジャン.マルク. ボワイヨ 白ワインの評価が高いジャン=マルクは、名手エチエンヌ=ソゼの孫にあたります。  そのワインは、過不足なく端正な味わいで、ピュリニイ-モンラッシェ特有のきれいな酸も品格を高めています。 私の好き

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          ワインコラム32:べらぼう凧

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 「べらぼう凧」というものをご存知だろうか。 凧の面一杯に、あっかんべーをした顔が描かれている凧だ。 舌と唇の鮮やかな赤と、目を見開いた顔が強い印象を放っている。 私はひと目で惹きつけられた。 私の手元にある物は、15センチ×12センチほどの土産物仕様で、20代初めの頃角館(かくのだて)で買い求めた物だ。 当時角館には、土産用の絵馬や凧絵などを描いていた武藤作五郎さんという方がいらした。 凧に興味を持った若い者が珍しかったのか、気

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          ワインコラム31:鳥

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 最近読んだ本に『鳥』という短編集がある。 作家の名は、ダフネ・デュ・モーリア。1931年から40年ほどの執筆期間のある、イギリスの女性の作家だ。 「鳥」という名にヒッチコックの映画を連想し、思わず手に取ったのだが、やはり映画の原作であった。さらに「レベッカ」も同じ作家のものであるという。 ひところ「ヒッチコック劇場」の原作者である、ヘンリー・スレッサーの短編集を楽しく読んだことを思い出した。 ハヤカワから2、3冊出ていたと記憶

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          店主のおすすめブルゴーニュワイン19

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata MOREY-SAINT-DENIS 2017 DOMAINE LECHENEAUTモレ サン ドニ 2017 ドメーヌ レシュノー すでにニュイ-サン-ジョルジュなどでも名声を博しているドメーヌを、86年に父親が亡くなって以降は、フィリップ(兄)とヴァンサン(弟)が運営してきました。 ニュイ-サン-ジョルジュも良いのですが、私は上品で繊細な彼らのモレ-サン-ドニが好みです。畑がデュジャックの特級畑クロ-サン-ドニの斜

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          ワインコラム30:「ブルゴーニュワインは薄くて酸っぱい」と思ったことのあるあなたへ

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata ブルゴーニュが好きでない、苦手だという人達に最も多い理由が、「ブルゴーニュ(赤)は薄くて酸っぱい!」ということらしい。確かに美味しくないブルゴーニュは、「薄くて酸っぱい」ものが多い。 そういったハズレを引かないための対策として、良い造り手を選ぶことが大事なのだが、ブルゴーニュ初心者には無理なことだろう。 信頼出来るお店で買うか、ブルゴーニュラヴァ―(愛好家)が近くに居れば、貴重なアドバイスを聞けるかもしれない。 前にも書いたが、

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          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata CHABLIS 2021 DOMAINE CHARLY NICOLLEシャブリ 2021 ドメーヌ シャーリー ニコル ご存知のように「シャブリ」には4つの等級があります。  下から、プチシャブリ、シャブリ、シャブリ1級、シャブリ特級となります。 1級と特級は、シャブリイコール辛口といった思い込みは通用しません。 ふくよかな味わいです。 この造り手のシャブリは、村名シャブリながら上のクラスを思わせる、ふくよかでコクのある味

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