El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたし…

El Bon Vino

エル・ボン・ヴィーノは西荻窪の奥に在るシックなワインバーです。店主は酒と文学をよくたしなみ、カウンターに座った客たちは、ワインの香りを味わいながら、彼の豊かな蘊蓄に相槌をうつのが何よりの楽しみです。さて、今夜もムッシュの語りに耳を傾けてみましょう。

最近の記事

ワインコラム37:「私は貴方が嫌いです」

タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 好きとか嫌いとか、人は無責任に言っている。  個人の好き嫌いなど、大抵は重大な事態を引き起こすことも無いので、無責任で構わないのだが・・・・・・。しかし、それが自分に向けられると事は深刻になる。 「好き」は良いとして、「嫌い」は真剣に考えざるを得ない。 お互い熱くなって、相手から「嫌いだ!」と言われた時などは、口論の末であるからある程度理由は想像できる。しかし口論も無くお互い冷静な時に、顔見知りの人から「嫌いです」と言われると、

    • ワインコラム36:山本先生と田口さん

      タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 1月17日、日本のワイン文化の発展などに功績のあった、山本博先生が亡くなられた。  先生は弁護士のかたわら、ワインの知識や上質なワインを広める努力をされてきた方だった。試飲会やパーティーなどでお会いする度に、「とても気さくな方」という印象を持った。 先生のことを思うといつも一つの情景が蘇ってくる。 ワイングラス片手に談笑している姿だ。先生の太めの眉毛は少し下がり気味で、それがより楽しそうに見せている。たいていの場合、話のお相手は

      • ワインコラム35:餃子はパスタである

        タイトルデザイン Ryoko Sakata 餃子は好きでよく食べるのだが、何時の頃からかご飯と一緒に食べなくなった。餃子定食を食べなくなったのだ。 中華圏では、もともと餃子はそれのみで食されている。しかし、そういったことが理由で白米を避けているわけではない。何となく合わないように感じたのだ。餃子の皮が、白米を拒絶しているように感じられたのだ。ご飯のおかずとしてそぐわない気がした。 考えてみれば、餃子は皮で具を包んだパスタと考えるのが自然だ。 一般的に、パスタとご飯を一緒に

        • ワインコラム34:ルソーのジャングル

          タイトルデザイン Ryoko ☆Sakata 12才の時に衝撃を受けた絵があった。  中学入学時に渡された美術の教科書の表紙の見開きに、その絵はあった。最初の印象は一面のグリーン。良く見るとそれはジャングルで、オレンジ色の美味しそうな木の実もある。 それはアンリ・ルソーのジャングルの絵だった。 ルソーは、ジャングルをモチーフとした絵を何枚か描いているが、それがどの作品だったかというのは思い出せない。 とにかく、その温かそうで湿度を帯びた深い緑色のジャングルに、12才の少年

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          11月のコラムについて

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 11月のコラムはお休み致しました。 11月19日に、エル ボンヴィーノ30周年パーティーを、吉祥寺のホテルで開催しました。 パーティーの前は準備に忙殺され、パーティー後は疲労困憊でした。 しかし結果的には良いパーティーになりほっとしています。 パーティーご参加の皆様、ありがとうございます、皆様のお陰で素晴らしいパーティーになりました。 12月からコラムを再開致します。 よろしくお願いいたします。     El Bon Vino

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          ワインコラム33:刺身定食

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 日本の常識と言うべきことを否定するようで申し訳ないが、私は刺身とご飯が合うとは思えないのだ。 「刺身定食」というものが有るが、私はこれに若い時から違和感があった。  20代の頃東北の或る民宿でこんなことがあった。 夕食の時間になり、日本酒を呑みたくなった私はお酒を注文した。何かツマミは無いかと宿の人にたずねると、無いと言う。仕方なく、から酒のあと夕食を運んでもらった。すると膳の上に、熱望していた刺身があり、酢の物や焼き魚もあるで

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          店主のオススメブルゴーニュワイン20

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata Puligny-Montrachet 1er CRU - CHAMP-CANET 2016 Domaine J.M.Boillotピュリニイ-モンラッシェ 1erCru シャン-カネ 2016 ドメーヌ: ジャン.マルク. ボワイヨ 白ワインの評価が高いジャン=マルクは、名手エチエンヌ=ソゼの孫にあたります。  そのワインは、過不足なく端正な味わいで、ピュリニイ-モンラッシェ特有のきれいな酸も品格を高めています。 私の好き

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          ワインコラム32:べらぼう凧

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 「べらぼう凧」というものをご存知だろうか。 凧の面一杯に、あっかんべーをした顔が描かれている凧だ。 舌と唇の鮮やかな赤と、目を見開いた顔が強い印象を放っている。 私はひと目で惹きつけられた。 私の手元にある物は、15センチ×12センチほどの土産物仕様で、20代初めの頃角館(かくのだて)で買い求めた物だ。 当時角館には、土産用の絵馬や凧絵などを描いていた武藤作五郎さんという方がいらした。 凧に興味を持った若い者が珍しかったのか、気

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          ワインコラム31:鳥

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 最近読んだ本に『鳥』という短編集がある。 作家の名は、ダフネ・デュ・モーリア。1931年から40年ほどの執筆期間のある、イギリスの女性の作家だ。 「鳥」という名にヒッチコックの映画を連想し、思わず手に取ったのだが、やはり映画の原作であった。さらに「レベッカ」も同じ作家のものであるという。 ひところ「ヒッチコック劇場」の原作者である、ヘンリー・スレッサーの短編集を楽しく読んだことを思い出した。 ハヤカワから2、3冊出ていたと記憶

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          店主のおすすめブルゴーニュワイン19

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata MOREY-SAINT-DENIS 2017 DOMAINE LECHENEAUTモレ サン ドニ 2017 ドメーヌ レシュノー すでにニュイ-サン-ジョルジュなどでも名声を博しているドメーヌを、86年に父親が亡くなって以降は、フィリップ(兄)とヴァンサン(弟)が運営してきました。 ニュイ-サン-ジョルジュも良いのですが、私は上品で繊細な彼らのモレ-サン-ドニが好みです。畑がデュジャックの特級畑クロ-サン-ドニの斜

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          ワインコラム30:「ブルゴーニュワインは薄くて酸っぱい」と思ったことのあるあなたへ

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata ブルゴーニュが好きでない、苦手だという人達に最も多い理由が、「ブルゴーニュ(赤)は薄くて酸っぱい!」ということらしい。確かに美味しくないブルゴーニュは、「薄くて酸っぱい」ものが多い。 そういったハズレを引かないための対策として、良い造り手を選ぶことが大事なのだが、ブルゴーニュ初心者には無理なことだろう。 信頼出来るお店で買うか、ブルゴーニュラヴァ―(愛好家)が近くに居れば、貴重なアドバイスを聞けるかもしれない。 前にも書いたが、

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          店主のおすすめブルゴーニュワイン18

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata CHABLIS 2021 DOMAINE CHARLY NICOLLEシャブリ 2021 ドメーヌ シャーリー ニコル ご存知のように「シャブリ」には4つの等級があります。  下から、プチシャブリ、シャブリ、シャブリ1級、シャブリ特級となります。 1級と特級は、シャブリイコール辛口といった思い込みは通用しません。 ふくよかな味わいです。 この造り手のシャブリは、村名シャブリながら上のクラスを思わせる、ふくよかでコクのある味

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          ワインコラム29:5月の風とぬる燗に身体が同化する

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 店を始めて数年経った頃、試飲会で静岡市を訪れたことがある。 5月のことだった。 試飲会も終わり、遊歩道のような広い道に出た時、えもいわれぬ気持ちの良い風に包まれた。快感でさえあった。 気候的に暑くも寒くもなく、湿度も少ない季節に吹く風は、それだけでも心地良い。5月の若葉の間を吹いてくるので、青々しい香りもする。奇妙な言い方だが、「風が美味しい」と感じたのだ。 この時、「5月の風」の素晴らしさを再認識した。 自分の生まれ月なので、

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          店主のおすすめブルゴーニュワイン17

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata VOLNAY 1er CRU Clos des Chênes Domaine Potinet Ampeau 2006 ヴォルネイ 1erCru“クロ デ シェヌ”  ドメーヌ ポ チネ アンポー 2006 自らのセラーでゆっくりと熟成させてから販売する事にこだわりを持つドメーヌ。16ケ月から22ケ月という昔ながらの長い樽熟成を今も実践しています。  この造り手の、50年を経たヴォルネイを飲んだこと

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          ワインコラム28:臭いもの好きが好む3つのもの

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata 以前、或るバーで“臭い食べものが好き”という共通項で、同席した人と盛り上がったことがある。 彼は私よりひと回り年上の皮膚科の先生で、時々同士を集めては臭いものを持ち寄るパーティまで開いているらしい。 そんな話になったのは、アイラウイスキーの話がきっかけだった。私も彼もアイラウイスキーのファンと分かったのだ。 あのウイスキーは、嫌いな人はまったく受け付けない香りだが、好きな人には、あの診療室の消毒液のような香りがたまらないのである

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          店主のおすすめブルゴーニュワイン16

          タイトルデザイン Ryoko☆Sakata MEURSAULT 2018 MAISON ROCHE DE BELLENE ムルソー 2018年 メゾン ロッシュ・ド・ベレーヌ 卓越した造り手ニコラ・ポテルによる白ワイン。 父ジェラール・ポテルは、以前ドメーヌ・ド・ラ・プスドールで醸造長を勤めていました。私が店を始めた90年代には、父のヴォルネイをオンリストしていました。言わば「親から子へ」の付き合いになります。  現在50代になったニコラ・ポテルは、自社畑のぶどうを用

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