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ワインコラム33:刺身定食

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Ryoko☆Sakata

日本の常識と言うべきことを否定するようで申し訳ないが、私は刺身とご飯が合うとは思えないのだ。
「刺身定食」というものが有るが、私はこれに若い時から違和感があった。 

20代の頃東北の或る民宿でこんなことがあった。
夕食の時間になり、日本酒を呑みたくなった私はお酒を注文した。何かツマミは無いかと宿の人にたずねると、無いと言う。仕方なく、から酒のあと夕食を運んでもらった。すると膳の上に、熱望していた刺身があり、酢の物や焼き魚もあるではないか。もう一度お酒を頼んでも良かったのだが、出鼻をくじかれたので、大人しくいただいた。

刺身と日本酒は最高の組み合わせなのだが、宿の人はご飯のおかずと捉えていたらしい。 
酒徒の持論としては、刺身などのおかずは酒の肴で頂き、ご飯はお新香と味噌汁だけでも文句はいわない。

酒呑みの持論はともかく、私にはどうもご飯と刺身がしっくりいってないように思われる。 
赤身はまだしも、白身の刺身は合っているとは思えない。こんなことを書くと、伝統の「寿司」を否定するようだが、寿司は酢飯を使っているので相性は良いのだ。酢によって刺身とご飯が手を組んでいる。ちらし寿司も酢飯だ。             

酢飯のように、白身魚とご飯が合うためには何らかの工夫が必要ではないかと思う。 
たとえば福岡の〃ごま鯖〃のように、ごま醤油で白身の刺身を和えたら、ご飯と合いそうだ。鮪を炙って黒こしょうを振り、ブルゴーニュの赤と合わせた例もある。炙って黒こしょうを振ったことで、より赤ワインに寄り添うことができたのである。
この時、ワサビはNGであることは言うまでもない。

白身の魚は、先程のごま醤油や、海苔、玉子、昆布などを手助けとして工夫すればご飯に近づけるだろう。
刺身の方から近づいて寄り添うことが必要となる。

刺身が何種類か載った「海鮮丼」という物があるが、あれは白飯なのであろうか、それとも酢飯?
私にはご飯の問題もあるが、量的な問題もある。昨今は、品の無いほど刺身を載せ、見た目の豪華さを競っている。刺身は嫌いではないのだが、そんなに量を食べられない。豪華な海鮮丼を見ただけでげんなりしてしまう。

刺身は日本酒を呑む時に少し有れば良いのだ。
刺身には日本酒が最高の相性だ。ひるがえってご飯では、白身の刺身の繊細さを最大限に味わえない気がする。

若い頃から、ご飯と刺身の組み合わせに違和感を持っていた私は、覚えている限り「刺身定食」を一度も食べたことが無いのだ。


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