モンゴル滞在記 (1) 初アジアツアーへ出発
モンゴルの空港に降り立ち、税関をぬけた。
自動ドアが開き、ボードを掲げ出迎える人々の熱気と並ぶ顔を見たとき、
あぁ、私はこの国に着いたのだと実感が湧いた。
これまでのツアーで行くのはもっぱらヨーロッパ。それかUAE。モンゴルは私にとって初めてのアジアツアーだ。空港で目に入る顔は、当たり前だがアジアの顔だった。私たちと同じ、アジアの顔。けれど熱量は日本とは違っていた。おそらく旅行会社なのだろう。(空港からウランバートル市内に行く電車はない。旅行者はバスかタクシー、旅行会社が手配してくれた車を使うのだ。)名前が書かれたボードを掲げ、その名前を連呼している。私はこれまでの空港を思い出した。ただボードを持って手持ち無沙汰よろしく待っている人々。ごくまれに、自分の名前に似た名前を発見し、さりげなく隣で写真を撮ってふざけていたこと。
もう一度あたりを見回して、熱量を確認する。あぁ、アジアだと口の中で繰り返した。
そういえば、初めてフランスに行った時、私は「あぁヨーロッパに来た」と思った。それまでの私の中の世界地図といえば、日本とアメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東という大雑把なものだった。そりゃあテストがあれば国名は書ける。でも、そこに対して地理の授業以上の違いを思うことはなかった。元来、根っからの旅好きというわけでもないのだ。歌いに行きたい。作品を通じて人と触れ合いたい。その土地の神話や民話を知りたい。風土の違いを感じたい。できることなら地元の店で地元の人と一緒に地元の酒を飲みたい。でも、観光にはあまり興味がない。私の興味といえば、人と古くから伝わる物語だ。でもそれって、国境が必要なのかな? ねぇ、どう思う?
そう、だから初めてのパリで最初に感じたのは「わお、ヨーロッパだ!」という単純な興奮だった。それから街を歩き、人と触れ合い、もちろんワインも飲んで、少しずつ「あぁ、ここはフランスだ」「なんてこった、わたし今パリにいる」という実感を得ていった。そうして、私は“ヨーロッパ”という国がないことに気づいた。フランスとスイスもまるで違うし、ベルギーもまた違う。イタリアだって全然違う。そりゃそうだ。日本と韓国、中国、北朝鮮だってまるで違う国じゃないか。日本だけをみても、東京と京都、北海道、沖縄は全然違うのに、私は勝手に「フランスはこういう国」「ヨーロッパはこんな感じ」と、画一的に思い込んでいたのだ。
ありがたいことに、何回も“ヨーロッパ”に行かせてもらう機会を得て、そのたびに各国、各エリアが実感として私の中に積み上がっていた。同じフランスでもパリとリールとマルセイユはまるで違っていた。どの場所も、知り合った人の笑顔が紐づいていて、そのすべてがとって愛おしい。
さて、モンゴル。
私はまだ「あぁ、アジアだ」としか思っていない。これからこの国で、私はなにを感じ、誰と会うのだろう。そうして、どんな想いをモンゴルに抱くのだろう。この時、私は「限界」という言葉も知らず、ただ期待に胸を膨らませていた。
英語の記事はこちらから
https://ekotumi.medium.com/my-first-asian-tour-mongolia-933ad96a4291
モンゴル滞在記 次回は...
(2)都市の相似性
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(3)平和ボケという欺瞞
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(4)ラクダの子守唄
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