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日本で唯一プロの長距離選手として大成した大迫傑の軌道

7月某日、驚きのニュースが飛び込んできた。


長距離マラソン日本代表の大迫傑選手が8月8日の東京オリンピックのマラソンを最後に競技を引退することを公表したからである。大迫選手はまだ30歳。競技力も衰えを知らず日本の陸上界を先遣してきた。

驚くべきは引退を東京オリンピックが決まった2013年に決めていたのだ。

引退の理由は「東京五輪を競技人生の最高のゴールとするためです。最高の舞台にするために、自分の100パーセントを注ぎ込んできました。次があるという言い訳を強制的に無くしたくて、この大会をゴールにしました。このレースで終わりなんだと決めた今、自分の持てるすべてが出し切れる気がしています」と動画で語っている。

実に大迫選手らしい終わり方だ。

私は陸上の長距離のプロ選手として大成したのは大迫選手だけだと考えている。

実業団等の企業に属せず、「大迫傑」という1人の長距離スポーツ選手として収入を得てファン、選手が憧れを持つ選手は日本に今までいなかったからである。

そんな彼のこれまでの大迫選手の軌道を振り返ってみよう。

彼のここまでの道のりは決して簡単なものではない。なぜなら、この引退も東京オリンピックのマラソン出場ができていなければ実現しない引退だからだ。

2017年4月17日 ボストンマラソン 2時間10分28秒 3位

2017年12月3日 第72回福岡国際マラソン 2時間07分19秒 3位

2018年10月7日 第41回シカゴマラソン 2時間05分50秒 3位

→設楽悠太選手の日本新記録を更新。日本人トップ。賞金1億を手にする。

2019年3月3日 東京マラソン2019 途中棄権

→ 29Km付近でリタイア。東京オリンピック選考会を6か月前に控える大会でDNF。

2019年9月15日 マラソングランドチャンピオンシップ 2時間11分41秒 3位 2020年東京オリンピック・男子マラソン日本代表選考会

→ラスト1㎞で服部勇馬選手にかわされ代表入り内定を逃す。

2020年3月1日 東京マラソン2020 2時間05分29秒 4位

→出場せずに自身の持つ日本記録を超える選手が出なければマラソン代表確定。しかし、日本新記録を再更新して東京オリンピックの切符を自力で掴む。

NEXT→2021年8月8日 東京オリンピック ??? 引退

日本記録を樹立して1億円を手にしていなければ、MGCで3位内に入れなければ、どこかで失敗していれば彼が東京オリンピックに出場することはなかったし、プロの陸上選手として大成することはなかっただろう。

しかし、スポーツの世界に「たら、れば」はない。

彼が東京オリンピックで引退できるのは運でもなんでもなく、紛れもなく自身の力で掴み取った事実なのだ。通常のアスリートは失敗したとき、上手くいかなかったとき「次」を考える。

だが、今回の大迫傑選手に「次」はない。

結果が良かろうが悪かろうがどんな結果になろうと彼の競技人生はここで終わる。

見届けよう。日本の陸上界を先遣してきた1人の選手の魂をかけた走りを。


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