青空晴流

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青空晴流

小説となんでもないことを書いています。/ swimthrough1991アットgmail.com

マガジン

  • Cikna

  • これが僕のやり方

    中学2年生の段田太一は、エネルギー波を出すために悪戦苦闘する。が、ある日ヒントを掴む。

  • 勉強

  • もし帰る方向がちがったら

    下校中、中学生男子2人が交わす雑談

  • マンガ

最近の記事

東京はいいなー

今月のポパイは東京特集だ。 住んでいたときも思っていたけど、東京はいろんな街があって、どの街も個性的で、かぶっていない。 ところ変わって鳥取。 ある意味個性的だけども、あの街が、この街が、というよりも全部で鳥取だ。 鳥取には、鳥取・倉吉・米子・境港と東から西に主要な市がある。観光地はそれぞれ個性的だけどひとつひとつが離れてるから、差別化されていない。 ところで、ラッパーは地元を大切にしている。地元を代表しているからレペゼン(represent=代表する)っていう言葉

    • 短編小説『くもの形、ソースのシミ』

      高校時代、どうしても彼女がほしい時期があった。好きとかどうでもよくて、彼女というステータスがほしかった。 僕は欧米人みたいな濃い顔の人が好きで、ぱっちりとした目、しゅっとした鼻筋に、でかい口。喜怒哀楽が絵文字みたいにわかりやすくて楽しそう、という理由。 女子の友達なんていないし、話しかけるのは恥ずかしいから、男子に声をかけて女の子を紹介してもらえないかと頼んだ。 「ソース顔の女子を探している男」 誰かが僕をそう呼んだらしい。 あまり女子にソース顔って言わないけど、キ

      • 短編小説『男子たちのクリスマス』

         12月24日――男子高校生3人が、わたしの家にごそごそ集まる。両親がいないことを知っているせいか、遠慮がない。だって靴もそろえてないし。 「女子の部屋ってこんな感じなんだー」 「ちょ、あんまりみないでよぉ」  部屋は片づけすぎて、勉強机が目立つ。ほとんど家具しかない。  あまり視線を泳がせられないとわかると、3人ともおとなしくテーブルを囲んでカーペットの上に座り、勝手にポテチをつつき、コーラをコップに注いでいる。  テンションをぶつけるところを探しているらしく、大

        • 短編小説『神様の力業』

           一番乗りの教室は冷やされている。電気もついていないし、雲は分厚いから光も差してこない。椅子を引く音さえもなんだかひんやりしている。  わたしはマフラーを巻いたまま、席に着いた。学校の便座よりはずっとずっとましだけど、スカートとタイツ越しの椅子も冷たい。  誰も来ないままチャイムが鳴ると、先生が入ってきた。 「佐久間だけ?」 「あ、はい」  今日は補習で、クリスマスイブだ。古典のテストで赤点を採った生徒はわたしだけだった。後半に固まっていた選択問題の解答を、解答用紙

        東京はいいなー

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        • Cikna
          6本
        • これが僕のやり方
          12本
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          1本
        • もし帰る方向がちがったら
          5本
        • マンガ
          1本
        • 創作経緯①
          4本

        記事

          最近の迷惑メールは感情移入させる

          僕のもとに一通の迷惑メールが届いた。 今まで何度も受信させられてきたが、今回のそれは斬新であり、心を揺さぶるものだった。 最初に断っておくと、僕はたいてい小説を書いているけどこれは創作ではなく、実際に届いた迷惑メールについて書いている。それではご紹介していこう。 今まで迷惑メールを受信したことがない方のために説明すると、あからさまに拙い日本語、というか舌足らずで幼い漫画のキャラクターみたいな言葉で送られてくることはほぼない。 大抵「1億円当選しました!」というお金系と

          最近の迷惑メールは感情移入させる

          『カニのある日』

           11月のある日、お父さんがにこにこして帰ってきた。ボロアパートに似合わないくらい幸せそうな笑顔で。 「なに笑ってんの。ごはんのしたくするから手伝って」  中学1年生で一人娘のわたしはお父さんを平気で急かす。他の子のうちでは父親のことを急かしたり怒ったりしないらしい。よく我慢できるなと思う。 「ももちゃんももちゃん! もーもちゃん、ねぇ! 早くこっち見てこっち見て! ももちゃーん、おーい……じゃーん!」 「しつこいし効果音古いから!」  と指摘しつつも、お父さんが掲

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          『カニのある日』

          最近、更新してないですけど書いてます。全然かたまらないだけです(゚∀゚)

          最近、更新してないですけど書いてます。全然かたまらないだけです(゚∀゚)

          『わからん』

          「っしゃーせ!」  カウンター席しかないラーメン屋。L字型のカウンター7席の内側では、鉢巻とTシャツ姿の店長が、素早く丁寧に麺をゆで、椀にスープを注ぎ、一杯のラーメンを整えている。  今日が39歳の誕生日であることを、本人さえ忘れていた。帰宅すれば、男手一つで育てた愛娘がケーキとプレゼントのスマホを買って待っている。国立大学に通う自慢の娘だ。  カウンター内にはもう一人、男がいる。20代の彼は店長の動線に侵入しないようにしつつ店長の動きを頭に入れ、ネギを刻んだりお客さん

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          『わからん』

          『とりあえずビール、コーヒーはブラック』

          「とりあえず、カシスソーダで」 「わたしは完熟梅酒のソーダ割り」  有美との付き合い始めはこんな感じだった。僕たちは、20歳を過ぎて舌が幼いことを共有していた。20歳が大人っていう考え方がもう子どもだけれど。  スターバックスに行っても、いつも僕たちは名前が長くて甘い飲み物を頼む。そうやって甘くておいしいものを分かち合う。有美といるときは、男だからとか大人だからとか、気にしないで好きなものを頼めた。  今日は曇りで、雨はまだ降りそうにない。僕はひとり、有美と待ち合わせ

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          『とりあえずビール、コーヒーはブラック』

          短編小説『顔にでかいほくろがあって成功しているやつはいない』

           ある人が言っていた。「これはただの白い紙だが、インクを落とすと、それは黒い点になる」と。  高校に入ってから、ちゃんと鏡を見始めた。産毛が黒く染まってきたこともあるけど、眉毛をカットし始めたことが大きい。でも、細くすることはなく、ただ、整える程度に鋏を入れた。俺が細くしても調子に乗っていると思われるだけだ。  鏡に映り込むのは、俺の顔と頬のほくろだ。1センチはないけど、7ミリとか8ミリくらいある。なんだこれは。  もちろん高校生になって初めて気づいたわけじゃない。物心

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          短編小説『顔にでかいほくろがあって成功しているやつはい…

          短編小説『もし金メダルが獲れるなら』

           中学生の男子が2人、下校している。 「自分で言うのも変だけどさ、俺らって若いよな」 「まぁ比較的若いかな。今年14歳だし」 「これから無限の可能性が広がってるってことだよなー」 「じゃあさ、お前は金メダル獲れる?」 「ん? 競技によるだろうけど、獲れるでしょ」 「なんだったら獲れると思ってんの?」 「うーんアーチェリーとかならいけると思う」 「これから遊ぶ時間削って毎日何時間もアーチェリーに時間使えるか?」 「それは……っていうか何が言いたいんだよ」 「

          短編小説『もし金メダルが獲れるなら』

          短編小説『砂像』

           夜中、アルバイトが終わってようやくアパートに着くと、部屋の灯りが点いていた。  しまった。  今朝起きたときには日が昇ってすっかり明るくなっていて、部屋に灯りが点いていると気づかなかったのだ。ということは昨夜うっかり寝てしまってから点けっぱなしだ。  嫌なことは続くものだ。  今日レジをしていると、クソジジイに怒鳴られてしまった。忙しいとどうしても流れ作業になってしまうから、油断していると 「やる気出せ!」  とかなんとか言って激怒してくる。経営者でもないのに、すご

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          短編小説『砂像』

          短編小説『上に伸びるか、横に並ぶか』

           ファーストキスはゴムの味がした。  これは僕がダッチワイフにキスをしたわけではなく、生身の人間とキスしたときの感想だ。大学2年生のときだった。若者のたくましい想像力はどこまでいっても想像の範囲を出ない。当たり前だ。でも、たまたま相手がそうだっただけのかもしれない。  社会人3年目、2人目の恋人とキスをしたとき、僕は動物園を思った。幼いころ、一度だけ家族と行った隣県の大きな動物園。  テレビや写真ではなく、生で見る動物を僕はすごく楽しみにしていた。でも、動物園は臭くて、

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          短編小説『上に伸びるか、横に並ぶか』

          短編小説『指を鳴らすと笑顔に変わる』

           わたしが大学から駅に向かって歩いていると、紫くんがいた。  紫くんはわたしと同じ学科で、話したことはない。でも、わたしたちのグループで一度「高校のときの服って感じだよね」と話に出たことがある。誰が言ったのかは覚えてないけど、確かに!と思ったので覚えていた。  紫くんは車道沿いの歩道からひとつ内側に入った狭い道にいて、彼の目の前には泣きわめくお下げ髪の女の子がいた。たぶん5歳くらい。  紫くんのクリーム色のパンツ、っていうよりズボンには、ソフトクリームが油絵の具みたいにベ

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          短編小説『指を鳴らすと笑顔に変わる』

          短編小説『足の指は短い』

           目覚めると、白いカーテンが朝日で透けていた。今日は休みだからもうひと眠りしようと思うが、隣の彼女はすーすー寝ていて、起こさないようにしてトイレに立つ。  トイレから戻ると、彼女は寝返りをうって私の方を向いている。見慣れた顔だが、今でも彼女は美しいと思う。  白い肌に、閉じた目の曲線がこめかみに伸びている。長いまつ毛の一本一本は繊細で、丁寧に描かれているようだ。  サマーケットがはだけて太腿から爪先まで露わになっている。ほくろも傷もなく、脂肪が少なくて締まった脚だ。膝か

          短編小説『足の指は短い』

          信じるかどうか

          夕飯を食べていると、母が話し始めた。今日、墓参りに行ったという。 そこで1匹の猫が足元にまとわりついてきたそうだ。その猫は墓参りが終わっても母から離れようとせず、母の車にまで乗ろうとした。 僕が持って帰ってくればよかったのにと言うと、 痩せていて、毛も禿げていて、みすぼらしい見た目だったから と返された。 会話は途切れ、僕は咀嚼しながら考えた。 僕が考えたのは死んだ飼い犬のことだ。お盆に先祖が帰ってくると言われている。僕が墓参りに出会った動物に、特別な意味を与えた

          信じるかどうか