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小説『これが僕のやり方』――⑫僕の最終回
「殺す?」
正憲の言葉は、脅しでもなんでもなく本気だった。先ほど僕に伸びてきた拳から、肌が強制的に反応してしまうような感じたことがない空気を感じた。それがたぶん、殺気なのだろう。
しかし、
「『僕が正憲に殺されるわけない』と君は思う」
正憲の微笑みが、僕の精神に少しずつ傷をつけていく。心まで読まれている。
「読まれとるんじゃない。僕が想像したんだよ。それに君はなぞっただけ」
考えな
小説『これが僕のやり方』――⑪ジャンプの新連載が終わるときのように
浮き足立った表情が校内にも、玄関前にも見える。卒業証書を入れる筒の「ぽん」という音が定期的に聞こえてくる。
暖かい風が吹いた。
僕が校門を抜けて下校しようとしていると、馴染みのある声がした。
「段田くん、一緒に帰らん?」
正憲だ。久しぶりだった。
すっきりとした表情を「晴れ晴れとした」と形容するなら、今の彼の顔は暴風雨といったところか。卒業式を迎えたというのに何からも解き放たれていな
小説『これが僕のやり方』――⑩覚醒のつづき
体育の時間が終わって教室に戻る。なんとなくいくつかの視線を感じる。
あまり考えてなかったけど目立ってしまった。目立ったらどうなるか。考えたことがなかった。
大村が着替えながら近づいてくる。
「おい段田! 次の体育勝負だぞ」
「ああ、うん」
僕も上を脱ぐ。
「え。てか、なんでそんなマッチョなん?」
僕は何度か超回復を経て筋肉もそれに耐えうる力をつけていた。胸板は厚くなり、腹筋は
小説『これが僕のやり方』――⑥僕の友達
(前回:小説『これが僕のやり方』――⑤夜未知、おかまいなし。)
「うぅ、うう、うううぅー……」
僕は痛くて泣いた。目をつむっても涙はこぼれた。
気持ちはそろそろ大人になったつもりでいたけど痛いとまだ泣いてしまう。
僕は絶対に目を開けない。
開けたら夜未知が僕を嘲り笑って見下ろしているにちがいない。
「うっ!」
僕のお尻に衝撃。蹴られた。そして僕は悟る。
これは僕に痛みを与えるた
小説『これが僕のやり方』――⑤夜未知、おかまいなし。
(前回:小説『これが僕のやり方』――④弱者の妄想)
通い慣れた校舎を見ても、この中学に初めて登校するような気分だった。
転校したことがないからわからないけど、転校生と同じ気持ちではないだろう。
発見したことを実験する科学者みたいなものだろうか。僕は科学者じゃないからわからないけど。
教室のある2階に行くまでに、下駄箱の前でクラスメイトとすれ違う。
1週間ぶりの登校に少し驚きが混じっ
小説『これが僕のやり方』――④弱者の妄想
(小説『これが僕のやり方』ーー③ 壊せ。)
フローリングに落下したスプーンが割れた瞬間を見届けると、白い天井を見上げていた。どうやらベッドで寝ていたらしい。吸い込んだ空気の匂いでここが病院だとわかった。
「太一!」
顔の膨れた化け物が僕の手を握ったと思ったらそれは僕の母だった。泣き腫らしたせいか顔はむくみメイクが崩れて目の周りは黒く染まっていた。
やめてくれ。寝起きなんだ。その顔を見る
小説『これが僕のやり方』ーー③ 壊せ。
暗い部屋、スタンドが照らす机。僕の部屋。
机の上にはスプーンとフォークが散乱している。持ち手は持ちにくく、そのためすくいにくく刺しにくくなった道具。もはや道具としての価値もない。
フローリングの隙間や、カーペットには銀の粒が散乱し、スタンドから届くわずかな光も反射している。
あれから5ヶ月が経っていた。
ーー5ヶ月前。
あの日から欠かさず出そうとはしているのだが、変わったのは傷口が
小説『これが僕のやり方』ーー②革命はいびきの中で
英語の予習が一段落した。まだ11時半。寝るにはちょっと早い。というかまだ眠くない。
僕は自分の左の手のひらを見た。赤黒い点が選ばれし者の印のようだった。
でもこれは印なんかではなく、エネルギー波を放出するための出口だ。昨日は痛くてテンション下がってさっさと寝てしまったけど、今日はチャレンジしてみよう。
僕は立ち上がって机から離れた。スリッパを脱いでフローリングに裸足で立つ。12月ともなれ
小説『これが僕のやり方』ーー①コンパスが刺す方へ
疲れたと思ったら、もう日付が変わっていた。
暗い部屋の隅でスタンドだけがこの世の唯一の灯りに思えてくる。一人の夜は痛いくらい感情を高ぶらせる。
僕は数学の問題に行き詰まって、シャーペンを机に置いた。
僕は中学2年生の段田太一。周りからは「ダンダ」「ダンダ君」「お前」なんて呼ばれているどこにでもいるヒエラルキー低下層の中学男子。
最近(やっぱりそういう年頃なのかな)、エネルギー波を出し