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備前焼のこと(四)美しさの意味

備前で出逢った作家さんの工房へ。
今回もY様のお宅にお世話になります。
約束の時間にまだ余裕がありましたので、気になっておりました庶民に開かれた日本最古の学校『閑谷学校』へ寄り道してみました。

翌朝、Y様宅から向かいます。
お約束の山道迷子。
対向車が来ないことを願いつつ、なんとか到着したのは石井総さんの工房です。薪が山と積まれた古民家で、穏やかな空気が流れておりました。

沢山並べられた作品と、穴窯へも案内してくださいました。
石井さんの窯は3人で8時間交代で番をしながら、ひたすら6日間焚き続けます。
火の加減や環境など、窯から出すまで作品の出来上がりはわかりません。
作家が狙って作っても、その通りにはならないのが備前焼です。

釉薬を使わない陶芸がしたいと備前焼作家になられた総さん

『同じ土・同じ窯で制作しても、同じ作品はひとつとしてできません。
全て景色が違うんです』
総さんの説明される何気ないひと言に、『 人間 』とリンクして
備前焼の " 美しさ " に私が惹かれる理由が言語化された様な気持ちになりました。

釉薬を使用したり絵付けをしない備前焼は、遠目で見ると同じように見えますが、ひとつひとつの個性が見えるようになると時間がいくらあっても足りないくらいです。
個性的且つ主張せず、風景に自然に馴染み、花や料理を引き立てる。
飲み物を美味しくし、お皿からの食材離れがよい。
美しさと実用性が備わった人間と自然の共同作品といえるでしょう。
手に取る人の好みもそれぞれです。

総さんからいただいた手描きの年賀状。
とても可愛くて衝撃でした。


お力添えいただけますと幸いです。