短歌と旅の同人誌エイドラ

好きな短歌を考察したり、気ままに旅行記を綴ったりしています。シゲフミとクサナギの二名で…

短歌と旅の同人誌エイドラ

好きな短歌を考察したり、気ままに旅行記を綴ったりしています。シゲフミとクサナギの二名で更新しています。

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最近の記事

【創作掌篇】付け句3本立て(テーマ:都市伝説)

シゲフミ(以下、シゲ):出題者。出先でコンビニに寄ったところ、ふと並べられた雑誌・漫画の一角を見て思いついてしまった。 クサナギ(以下、ナギ):回答者。お気に入りのパン屋さんで買い物をした帰りだった。急な思いつきを振られて驚いている。 シゲ:藪から棒とは知ってのことで、例えば「コンビニに楳図かずおが置いてある」で上の句(五・七・五)になると思うんですが、下の句(七・七)をつけてホラーにしてください。それも、アイデア一発勝負のB級じゃない方で。 ナギ:無茶ぶりだなあ。でも付

    • 三田三郎『鬼と踊る』歌集評②~「人生」から「人生(Part2)」までを読む(文・クサナギ)

      泥酔と日常の反復横跳び文: クサナギ 「鬼と踊る」を通読して、目を引かれるのはやはり飲酒をテーマとした連作群だろう。私も酒飲みだと自負しているのだが、それにしても「酒」というテーマ詠でここまで歌をつくれるものかと感嘆してしまった。 例えばこの歌は、一首単体で読むとお酒の歌とはわからない。上の句を贅沢に使って口の中の感覚に焦点を当てていて、官能的な感じさえ受ける歌だ。だがその前の歌と合わせて読むと、お酒にのめり込んで咀嚼すらめんどくさくなったような主体の姿が浮かび上がってく

      • 三田三郎『鬼と踊る』歌集評③~全体構成を語る読書会

        歌集全体の構成について書き起こし: クサナギ それぞれ「鬼と踊る」を読んで評をしてきましたが、二人に共通して「歌や連作の並びが計算されている」という感想がありました。 では、歌集全体の構成はどうなっているのでしょうか。下記のように連作をいくつかのブロックに分けて考察してみました。 第①ブロック95首 ワンダフルライフ(11 首) 自律神経没後八年(10 首) ワイドショーだよ人生は(12 首) 前科があるタイプのおばあちゃん(9 首) パーフェクトワールド(15 首)

        • 三田三郎『鬼と踊る』歌集評①~酷く理性的な酔っぱらい?(文・シゲフミ)

          連作「肝臓のブルース」でパラレルに示される「僕」の矛盾したセルフ・イメージ文: シゲフミ 三田三郎による「肝臓のブルース」は、徹頭徹尾、アルコールに取り憑かれた連作である。たとえ内容を一言で要約せよ、と言われても「何がどうあろうと酒が飲みたい人の歌」、としか返しようがない。そこから先の、「僕」のとる姿勢に対する評価は、読者に委ねられている。観る人によって、自他の知識や経験に基づき、親身になって案じたり、愚かだと詰ったり、あるいは我が身を省みたりと、投影してみる裁量があるだろ

        【創作掌篇】付け句3本立て(テーマ:都市伝説)

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          5本
        • 4本

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          シベリア鉄道に乗って

           ロシアを横断して、9,297㎞もの長距離を走るシベリア鉄道。その乗車を夢見て、ロシアを旅した三週間を振り返る。 ウランウデ バスで砂漠を抜けて  今回の旅では、まずモンゴルのウランバートルから入国し、ロシアの東にある都市ウランウデへ陸路で抜けようと考えていた。ウランバートル以西は砂漠が広がっているが、Google Mapsで見ると細い道路が確認できる。ネットで有力な情報は見つからなかったが、この地域に住む人々が使う公共バスがあるはずだと賭けに出て、とりあえず大陸に渡って

          シベリア鉄道に乗って

          ヒッチハイク日記 ハイウェイに連れてって

           学生の頃、ヒッチハイクで全国を回ることが趣味だった。なかでも、卒業旅行のつもりで行った中四国方面へのヒッチハイクの旅は、旅程が長いこともあり印象的だった。 用賀のマックは、ヒッチハイクの聖地  ヒッチハイクに必要なのは、ノートとマッキー、これだけだ。だから思い立った時に旅を始めることもあった。私はかならず験担ぎのように、「マクドナルド用賀インター店」の前の道から車を拾い始めることにしていた。この場所は「ヒッチハイカーの聖地」として有名なので注目してもらいやすいのだ。  

          ヒッチハイク日記 ハイウェイに連れてって

          むきだしの感情(今橋愛『O脚の膝』書評)

           今橋愛の歌が好きだ。好きすぎて、なかなかこの『O脚の膝』という歌集に手が出せなかった。買ってはいたものの、読んで打ちのめされるのが怖かったのである。腹を決めて読んだらやっぱりノックアウトされたけれど、どのようなところに心動かされたか、一ファンとして忘れないうちに書き留めてみる。 独特の文体からにじみ出すもの  まずこの歌集を開いて驚くのが、その独特の文体である。ひらがなや改行、句読点を多用してつくられた歌が多いので、初めて今橋の歌を見たときは思わず「短歌って一行で書くも

          むきだしの感情(今橋愛『O脚の膝』書評)

          変なシズオカ

          2022年のゴールデンウィークに伊豆を旅行して、特に印象に残った二つのスポットについて。静岡の不思議な魅力に迫る。 憧れの地、「まぼろし博覧会」へ  まず初めに向かったのは、伊東市にある「まぼろし博覧会」。館長であるセーラちゃんが「誰もが元気になれる」をコンセプトに作った施設である。なんと東京ドームくらいの敷地面積があり、セーラちゃんが作った展示室が日々増殖し続けているらしい(ちなみにセーラちゃんはメディアでもよく取り上げられており、2021年12月にはNHK総合「ドキュ

          違法建築〈セルフビルド〉に泊まろうよ

           二〇二〇年三月、高知県薊野。そびえたつ無骨な白い建造物を前に、私は重いリュックをしょって立ちつくしていた。不思議な見た目をしたこの巨大な建物の名前は、「沢田マンション」(通称:沢マン)。なんと建築を学んだわけではない素人の夫婦が、建築基準法を無視して独自に建てた集合住宅である。ポジティブに言えばセルフビルド、有り体に言えば違法建築だ。増築に増築を重ねたその異様な見た目から、「高知の九龍城」「軍艦島マンション」ともよばれている。その日、私はその沢マンに泊めてもらおうとしていた

          違法建築〈セルフビルド〉に泊まろうよ

          短歌と旅の同人誌エイドラとは

          概要 「短歌と旅の同人誌エイドラ」は、シゲフミ、クサナギの二名で制作している同人誌です。2023年8月現在、第4号まで発行しています。100円のコピー本を50部程度、文学フリマなどでこつこつと販売していたのですが、このたび記事の一部をnoteで公開することにしました。おもしろいと思った記事などがあれば、ぜひSNSで共有していただけると励みになります! 書いている人 シゲフミ 諸芸のライト・コンシューマー、の割りにたいてい言語化欲求に苛まれている人。野暮で上等、不粋は承知

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