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2020年11月の記事一覧

学校の問題に真っ向から挑む

学校の問題に真っ向から挑む

工藤純子著『あした、また学校で』(講談社、2019年)

クラス対抗リレーやなわ跳び大会がある度に「あいつがいるから勝てない」「おまえのせいだ」という声が飛び交い、運動苦手なこどもが肩身の狭い思いをするのは、学校あるあるの話。

でも、この本は、そんな弱い立場のこどもを教師が叱るところをしっかり描き、学校が抱える課題に真っ向から挑んでいる意欲作だ。

「こんなん書いて大丈夫なの?」「出版社どこ?」

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渾身の書『食べることと出すこと』 ―  タブーを超えて

渾身の書『食べることと出すこと』 ― タブーを超えて

頭木弘樹著 『食べることと出すこと』(医学書院、2020年)

食べることと出すことは
本来セットで考えられるべきかもしれないが
生と死が一繋がりでありながら
死がタブー視されるように
出すことも厭われているように思う

これは大学生のときに
潰瘍性大腸炎を患い
13年間の闘病生活を送った著者が
病の末に至った新境地を
数々の文学紹介を兼ねながら
時に切なく
時にユーモラスに
綴った稀有な書だ

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SNSの怖さと謎解く面白さ

SNSの怖さと謎解く面白さ

越尾圭 『殺人事件が起きたので謎解き配信してみました』(宝島社、2020年)

動画ライブ配信中に起きた殺人事件

友人の死を発端に
犯人捜しに巻き込まれていく主人公

警察の捜査と並行して進む
素人の大胆な推理により
事件が立体的に迫ってくる

いったい犯人は誰なのか?

読み出したらやめられず
久しぶりに本を片手に料理した
読後、かつて進路調査にYouTuberと書いた息子に送った

読みやす

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『デフ・ヴォイス』で新境地

『デフ・ヴォイス』で新境地

丸山正樹『デフ・ヴォイス』(文藝春秋、2015年)ほか

2011年の単行本以来
シリーズ3作のうち
文庫化されている2冊を読了

手話の種類や
聾唖の「聾」の字が
「龍」と「耳」から成り立つことなど
初めて知ることが多く
読み応え十分

なによりストーリー展開に
惹きつけられて
満足度100%

3作目の文庫化が
待ち遠しい

『風の陰陽師』シリーズに震えた

『風の陰陽師』シリーズに震えた

三田村信行『風の陰陽師』シリーズ(ポプラ文庫、2010~11年)

初版2007年刊行のこのシリーズは
マンガ化もされているため
ご存じの方が多いと思う

私は『ハリーポッター』でも
夢に出てきてしまうほど怖がりなので
この類いの物語は基本読まないのだが
同著者による『安寿姫草紙』で免疫ができて
今ごろになって初めて陰陽師シリーズに挑んだ

目の前にはっきり情景が浮かぶほどリアルで
もちろん恐ろし

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私にとっての『セイギのミカタ』

私にとっての『セイギのミカタ』

佐藤まどか作・イシヤマアズサ絵 『セイギのミカタ』(フレーベル館、2020年)

「みんながほんのちょっとずつ勇気をもてば、なにかが変わるかもしれない」――そんな著者の思いが詰まった1冊

赤面症でトマトマンと呼ばれる主人公の前に現れる
セイギのミカタ
直球ストレートできたかと思ったら変化球で
最後まで目が離せない展開だ

小学4年の時
私は2度目の転校で
1年の時と同じ小学校に戻った
すでに知っ

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