大豆田とわ子主題歌「Presence」のイラスト考察
ヒップホップをこよなく愛する私。
ドラマ「大豆田とわ子」の主題歌「Presence」にドハマりしました。
「Presence」は、トラック制作と楽曲プロデュースをトラックメーカーのSTUTSが担当していて、松たか子がメインボーカルをつとめ、岡田将生、角田晃広、松田龍平が「3exes」として参加する。
※なお、exesは元カレ・元夫、という意味
本楽曲は、CDに収録されているリミックスを除くと、「Ⅰ~Ⅴ」の5つのバージョンが存在していて、それぞれのバージョンで新進気鋭のラッパーたちがフィーチャリングされている。
いやいや、もちろんゲストも素敵なんだけど。
今回はその「ジャケット」に秘められた意図を紐解きたい。
「Presence」の意味とは?
そもそも曲名の「Presence」とはどういう意味か?
Presence
[名詞]存在、あること、現存、出席、参列、面前、人前
ジャケットイラストの考察をするにあたっては、「面前」という言葉が最もしっくりくるように感じた。
つまり「向き合う」ということである。
それぞれ、イラスト違いで描かれている本楽曲のジャケット。
それは、登場人物たちの「向き合い方」が描かれているのではないだろうか?
このイラストたちが「向き合い方」を表現しているとして、人物たちの「顔」って、どっちが前なんだろうか?
そして、全てを通して描かれている「糸」はなんだろう?
運命の赤い糸、というが、決して赤くない糸たち。
これはやはり「縁」や「つながり」を表していると思われる。
ここから、それぞれのジャケットについて、考えていく。
1.Presence Ⅰ (メインキャスト:とわ子)
手前のピンク色の立ち姿。
これは、素直に捉えてとわ子本人を表しているように思う。
いかにもすぎるくらい、女性らしい、ピンク色とスカートのような描かれ方が気になるが、おそらく手前の人物はとわ子だろう。
では、向かいに立っている人は誰か。
どこか、なにかの舞台を降りて、立ち去っているようにも見える。
いかにも足が長く、立ち姿はかっこよく描かれている。
これは、とわ子と「なんらかの関係になれなかった」人、を描いているのではないだろうか?
例えば…
第1話でいう、斉藤工が演じる「船長」とか。
とわ子の離婚を“かわいそうな女性”と言い放った「イヤな社長」とか。
最終話で出てきた初恋の「甘勝くん」とか。
を描いているのではないか?
ひょっとしたら、オダギリジョー演じる"謎の男"小鳥遊さんかもしれない。
また「夫」という立場から降りて行った、3人の元夫たちでもあるのかもしれない。
つまり、とわ子が思う「恋愛の舞台から降りて行った人」である。
なお、このジャケットの背景は、前楽曲の中で、最も夜らしい色で描かれているが、夜明けが近いような色使いになっている。
本楽曲のサビの最後のフレーズは「夢はもう覚めた」だが…
まさに、理想的な、というか、夢のような恋愛から現実に戻ったかのような。
そんなとわ子の、恋愛における人との向き合い方を描いている。
2.Presence Ⅱ (メインキャスト:慎森)
ボーカルとして慎森役である岡田将生が参加し、歌詞のフレーズにも「馴染みのソファだって今日で新品」という劇中のフレーズが出てくるなど、慎森の視点で描かれている曲である。
つまり、「慎森の、とわ子との向き合い方」が描かれていると考えられる。
と、いうことは茶色い方が慎森でピンク色の方がとわ子だろう。
「僕はやっぱり君のことが好きなんだよね。」
「焼肉が好き、焼肉は僕のこと好きじゃないけど、僕は焼肉が好き。」
というセリフの通り、慎森はまだとわ子の方をじっと見つめている。
なんとなく、とわこは向こうを向いているようにも見える…。
そして、2人が乗っている台のようなもの。
これはもちろん、劇中で捨てられた「オレンジのソファ」である。
そのソファのはじっこで、今にも落ちそうな距離感で立っている二人。
落ちてしまったら、2人の関係は終わってしまうのだろうか?
背景には、まるで定規の目盛りのような線がある。
とわ子と慎森が通う職場「しろくまハウジング」はデザイン系建設会社で、とわ子はもともと建築士である。
建築物の製図において必要なものが、定規である。
これは、慎森ととわ子が出会い、そして日常を過ごしている「職場」という舞台を表しているのかもしれない。
この「目盛り」は、とわ子や、他人との距離感に悩む、慎森らしいモチーフだと言える。
ただ、注目してほしいのは、糸はオレンジのソファではなく、2人の「それぞれ自身」につながっている。
ソファが、無くなっても、二人の関係が切れることはない。
2話で、とわ子は慎森に「別れたけどさ、今でも一緒に生きてるとは思ってるよ」と伝えている。
心なしか、このイラストのとわ子は、顔は向こうを向いてしまっているが、慎森の方へ歩み寄っているようにも見える。
肩書きや、言葉にできる関係性が無くても、二人の縁は続いていく。
そんなことを表したイラストなんじゃないだろうか。
3.Presence Ⅲ (メインキャスト:鹿太郎)
続いては、東京03の角田演じる「佐藤鹿太郎」が歌う「Presence Ⅲ」。
手前のくねっとした立ち姿が鹿太郎で、奥のがとわ子だろう。
ドレスのようにも見えるとわ子の衣装から察するに、2人が出会うきっかけとなった社交ダンスをしているようだ。
鹿太郎の立ち姿は、S字になっており、なんかくねくねしているが…これは鹿太郎の女々しさを表しているんじゃないだろうか。
…このプロペラみたいなやつは何だろう。
私は、乗っている青いものも含めて、船・ボートのように見えた。
これは、1話で出てきた「船長」のように、キザで、ロマンチックな男性像に、あこがれて、背伸びをしていることを表現したかったんじゃないだろうか。
一緒に考えていた会社の同僚が、プロペラのように見えるこれは「花」に見えると言ってきた。
言われてみると、鹿太郎が後ろ手に花束を隠しているように見えてきた…。
背景の草木のようなあしらいは、鹿太郎が想うロマンチックに飾られた花束のような、とわ子との理想の関係を表しているのかもしれない。
パッと見では、鹿太郎からとわ子に、ロマンチックにアプローチをしているように見える。
一方で、とわ子はこっちを見ているようにも、向こうを向いているようにも見える描かれ方をしている。
2人は今後どんな向き合い方をしていくのだろうか。
4.Presence Ⅳ (メインキャスト:八作)
「Ⅳ」では、松田龍平演じる田中八作が主役である。
手前の人物が八作だとすると、もっとも特徴的なのが後ろにある何かを通して、とわ子の方に糸=縁がつながっている。
一番気になるのは八作の後ろにある「なにか」を通して、糸がつながっているということ。
そして、とわ子からは見えないところにその「何か」はある。
これは、とわ子にも隠していた綿来かごめへの恋心ではないか。
そして、かごめとの関係性を通して、とわ子のほうへ糸がつながっている。
背景は、とわ子のそばに寄り添うように「でっぱり」がある。
これは、心電図のようにも見えた。
八作ととわ子が向き合うにあたって、かごめの存在は必ずどこかに現れる。
「Presence」は「参列する」という意味も持つ。
かごめへの気持ちとも、向き合いながら、二人の関係が続いていく。
5.Presence Ⅴ (メインキャスト:とわ子)
「Ⅰ」と同じく、楽曲のメインはとわ子役の松たか子が歌っているこの曲。
手前の人物がとわ子だとすると、奥の人物は誰だろうか?
また、特徴的なのがこのイラストだけ、顔の部分にたくさんの図形が重なっている。
これはどういうことだろうか?
個人的には、奥の人物は「とわ子の母、ツキコ」だと感じている。
腰がまがった姿は、歳を重ねた人のように見える。
それぞれ、似た形の図形に立って、それに糸がつながっている。
これには「家族」という関係性の上に立っている、とわ子と母の関係性がみえる。
では「出っ張っている方」が顔だとすると、ツキコはとわ子の方を向いてくれていないのだろうか?
最終話で分かったことだが、とわ子の母は過去に同姓である「マー」と恋人同士であったことが分かっている。
とわ子は、自分を含めた「家族」という関係性に、愛が無かったのではないか?と不安を持つ。
しかし「マー」は言う。
「あなた、不安だったんだよね。大丈夫だよ、ツキコはあなたのことを愛してた」と…。
ツキコには、とわ子も知らない顔があった。
でも、人にはたくさんの顔があって、人の数だけ、その人と向き合うための顔がある。
顔に重なった、たくさんの図形。
これは、それぞれの「そばにいる人」に向けた、さまざまな顔を表しているんじゃなかろうか。
それはとわ子も同じで、このドラマを通して、それぞれの向き合い方を曖昧ながらも掴んでいる。
「Presence Ⅲ」の歌詞に、次のような一節がある。
糸って赤だけじゃないみたい
青も黄色もあって絡み合う
描かれている糸の色は、黄色や緑、さまざまな色で描かれているが。
運命なんかじゃなくても、夫婦じゃなくても。
何かしらのつながりが、そこにはあるのだ。
いいドラマだった、本当に…
と、ここまで考察してきましたが、ジャケットだけでもこんなに色々なことを考えさせてくれる。
いいドラマだった、本当に…
そんな主題歌、2021/6/23発売です。
新しいジャケットも公開されています。
一体、どんな意味を秘めているのだろうか…。
とりあえず、ポチりました。
※あくまで個人的な考察ですので、むしろ、こうじゃない?的な話があればコメントがほしいくらい!
以下、参考にさせていただいた記事やツイート
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