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米国で成功したスタートアップ創業者の平均年齢は45歳

こんにちは、広瀬です。今回は、Harvard Business Reviewに掲載された「Research: The Average Age of a Successful Startup Founder Is 45(研究結果:成功したスタートアップ創業者の平均年齢は45歳)」という興味深い記事を題材に、内容の要約と、日本における起業事情、そして投資家のあり方について解説と提言をさせていただきます。

特に、起業を志す方々に向けて、年齢にとらわれずに挑戦することの重要性と、不確実性が高い状況下での意思決定に役立つ「Effectuation(エフェクチュエーション)」というフレームワークについてもお伝えしたいと思います。

この解説が、皆様の起業の一助になれば幸いです。


若き起業家の神話:成功への道は必ずしも若さではない

ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ... 彼らの名は、20代で世界を変える企業を築き上げた天才起業家として、多くの人々の記憶に刻まれています。彼らのサクセス・ストーリーは、起業家を目指す若者にとって憧れであり、同時に、成功するためには若いうちに起業しなければならないというプレッシャーにもなっています。

しかし、最新の研究は、この「若き起業家の神話」に疑問を投げかけています。実際には、成功する起業家の多くは中年であり、若さは必ずしも成功の必須条件ではないことが明らかになっています。

データが示す意外な真実:成功する創業者の平均年齢は40代

米国国勢調査局の機密データを用いた大規模な分析によると、企業創業者の平均年齢は42歳でした。さらに、ハイテク企業の創業者に限定しても、平均年齢は40代前半という結果が出ています。これは、一般的にイメージされるよりも、成功する起業家は比較的年齢が高いことを示しています。

この結果は、TechCrunch賞やInc.誌の急成長スタートアップランキングなど、メディアで注目される若い創業者のイメージとは対照的です。しかし、これらのランキングは、ソーシャルメディアなどの消費者向けIT業界に偏っており、起業家の全体像を反映していない可能性があります。

Harvard Business Review参照記事より抜粋

成功の多様な指標:成長、イグジット、そして経験

企業の成功を測る指標は様々ですが、どの指標を用いても、中年層の創業者が優位であるという結果は一貫しています。

企業の成長率に着目すると、成長率上位0.1%のスタートアップの創業者の平均年齢は45歳です。IPOや買収による成功を収めた企業でも、創業者の平均年齢は高くなる傾向があります。つまり、最も成功した企業を創設するのは、一般的に考えられているよりも年長の起業家なのです。

この傾向は、企業の売上成長率を用いても同様であり、成功の定義をどのように変えても、創業者の年齢は高くなる傾向があります。

中年層の創業者が成功する理由の一つは、彼らが豊富な経験を持っていることです。年齢を重ねるにつれて、ビジネスに関する知識やスキル、人脈などが蓄積され、それが起業の成功に繋がると考えられます。

また、中年層は、若者よりもリスク許容度が低く、慎重な意思決定ができる傾向があります。これは、起業という不確実性の高い挑戦において、大きな強みとなります。

興味深いことに、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジのような、20代で成功を収めたように見える著名な起業家たちも、彼らの企業が最も高い成長率を記録したのは、彼らが40代に差し掛かってからでした。例えば、スティーブ・ジョブズは52歳の時にiPhoneを発表し、ジェフ・ベゾスは45歳の時にアマゾンの成長を加速させました。

Harvard Business Review参照記事より抜粋

投資家の視点:若さへの過度な期待

一方、投資家が若い創業者に投資する傾向があるのはなぜでしょうか?

一つの可能性は、投資家が若い創業者の可能性を過大評価していることです。メディアの報道や成功した若手起業家のイメージに影響され、若さを成功の要因と誤解しているのかもしれません。

しかし、投資家は投資収益率も重視しており、若い創業者は資金的に制約されているため、低い評価額で出資を受け入れる傾向があります。つまり、投資家にとって若い創業者は、高いリターンが見込める魅力的な投資対象と言えるかもしれません。

起業を志す全ての人へ:年齢にとらわれず、Effectuationの原則で第一歩を

起業を志す人にとって、年齢は決して障害ではありません。むしろ、年齢を重ねることで得られる経験や知識は、起業を成功に導くための貴重な財産となります。

特に日本では、終身雇用や年功序列といった伝統的な価値観が根強く、起業に対するハードルが高いとされています。しかし、近年では、政府の支援策や起業家コミュニティの活性化など、起業しやすい環境が徐々に整いつつあります。

もしあなたが起業を迷っているのであれば、年齢や社会的なプレッシャーにとらわれず、「Effectuation(エフェクチュエーション)」と呼ばれる、不確実性が高い状況下での意思決定のフレームワークを使って考えてみて下さい。

Effectuationは、以下の5つの原則から構成されています。

  1. 手中の鳥の原則
    手持ちの資源から始め、利用可能なものを最大限に活用する。

  2. 許容可能な損失の原則
    許容できる範囲のリスクを取り、失敗から学ぶ。

  3. クレイジーキルトの原則
    協力者を募り、共に未来を創り上げていく。

  4. レモネードの原則
    予想外の出来事をチャンスに変える。

  5. 飛行機の中のパイロットの原則
    将来を予測するのではなく、自ら行動して未来を創り出す。

これらの原則は、年齢や経験に関わらず、全ての起業家に適用できます。特に、資源や情報が限られている状況下では、Effectuationの原則に従って行動することで、成功の可能性を高めることができます。

日本における起業と投資家のあり方

日本では、欧米に比べて起業活動が活発ではないと言われています。その背景には、失敗に対するネガティブなイメージや、大企業志向、リスク回避的な文化などが挙げられます。

しかし、近年では、政府のスタートアップ支援策や、成功した起業家のロールモデルの登場などにより、起業に対する関心が高まっています。

一方、日本の投資家は、リスクの高いスタートアップへの投資に慎重な傾向があります。そのため、資金調達に苦労する起業家も多く、これが起業の障壁の一つとなっています。

投資家への提言:多様な視点を持つことの重要性

日本の投資家は、投資対象を選ぶ際に、年齢にとらわれない多様な視点を持つことが重要です。若い創業者の可能性を過小評価するべきではありませんが、同時に、中年層の創業者が持つ経験や知識の価値も見逃すべきではありません。

多様なバックグラウンドを持つ起業家に投資することで、投資家はより多くの成功企業を生み出すことができるでしょう。また、短期的な利益だけでなく、長期的な成長を見据えた投資を行うことも重要です。

まとめ:成功への道は一つではない

今回の記事は、成功する起業家には多様な背景や年齢層が存在することを示しています。若くして成功を収める起業家もいますが、それはあくまで一つのパターンであり、多くの中年層の起業家が着実に成功を収めていることを忘れてはなりません。

起業を志す人は、年齢にとらわれず、自身の経験や強みを活かして挑戦することが重要です。そして、投資家は、年齢にとらわれない多様な視点を持つことで、より多くの成功企業を生み出すことができるでしょう。

成功への道は一つではありません。年齢や経験、知識、人脈など、様々な要素が複雑に絡み合い、それぞれの起業家が独自の道を歩んでいます。だからこそ、起業の世界はダイナミックで、挑戦する価値があるのです。

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