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フクダユメ
2024年6月26日 20:45
父の日前日、ペーパードライバーの娘は父親をフル稼働させてしまう。もう22歳であるというのに。私は父の運転する車の助手席に座る。会話の多くない車内はいつも通りで、時々思いついたことをそのまま言葉にする。カーステレオから流れる洋楽を聴いて「どんなことを歌っているか当てようゲーム」をしていた15年前の夏と変わったことはほとんどない。変わったことといえば、流れていた洋楽がカネコアヤノのアルバムに変
2023年12月13日 07:31
75%の湿度で前髪がうねる。アスファルトの湿った匂いと冷たい風がぐさぐさと私を刺していく。声に支配されている、と思う。聴きたい歌があって欲望で埋め尽くしたプレイリストを作る。目に涙が浮かぶほど落ち着く相槌がある。真夜中に走り出したくなる声があって、ベランダで黄昏たい声がある。生きたくなる時も死にたくなる時も耳に金属を挿して今日を終えようとしている。声に支配されている、と思う。声に支配され
2023年12月3日 20:55
ざわついた商店街を歩く。ヘッドホン装着して顎を尖らせほんの少しだけ早歩きで歩く。所々解れているトートバッグに文具と本を詰め込んで歩く。又吉直樹の劇場を読んで流れた涙は透明で冷たかった。安達千夏のモルヒネを読んで流れた涙には湯気が上がり、梨木香歩の西の魔女が死んだを読んで流れた涙は渦を巻いていた。ツインテールが似合う女の子になりたかった。猫みたいな女の子になりたかった。真っ白く、かつ透