GIGA スクール構想をベースにした「 教育の情報化 」 その実現に向けた方策と議論のいま(後編)
教育環境のICT化を含めた教育の情報化が、教員に、そして学校に何をもたらし、実現していくのか。そして、現在学校教育が抱える課題を解決に導けるのか。前編では、「学び手・学習を主体とした情報化」について述べてきたが、後編では「教員・校務を主体とした情報化」について考察していきたい。
前編はこちら
GIGA スクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議
2021 年 12 月から 2022 年 5 月まで、大学教員や教育委員会関係者、一般企業所属の有識者が招聘され、合計 4 回開催された「 GIGA スクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」では、GIGA スクール構想をベースとした校務の効率化についての現状や課題、専門家からの指摘などが共有されている。
校務の情報化という表現に、校務支援システムをイメージされると思うが、本専門家会議では、校務支援システムとともに、国の方針として進められるクラウドの活用に関して、自治体での取組事例が共有されている。
以下のグラフは、第2回専門家会議(令和4年2月3日開催)で共有された愛知県春日井市の資料の一部である。これまでの業務をクラウド化することにより、多くの教職員がクラウド利用を便利と感じていることがわかる。
その一方で、教員が校務をかなりの負担に感じていることも第4回専門家会議(令和4年5月24日開催)で共有された鳴門教育大学大学院 教授 藤村 裕一 氏の資料からも明らかになった。藤村氏は、単に校務がICT化されたとしても、物理的、また精神的な負担を軽減していないことには、校務負担の軽減の根本的な解決には至らないとしている。今の業務をICTに置き換えることが「校務の情報化」と考えてしまうが、業務そのものを見直しつつ、ICTの強み、使い所を見極めながら導入することで、教員の校務負担の軽減、更には、働き方改革、教育DXに繋がっていくものと考える。
校務の情報化についての今後の論点と専門家の意見
専門家会議では校務の情報化についての今後の論点として以下の課題が共有されている。
このように様々な事例と課題が共有されている中で、それらを踏まえ専門家からは、次のような意見(一部抜粋)が上がっている。
上記の意見からは、自治体による ICT 化のバラつきが見受けられる状況の中で、学校が感じているセキュリティについての不安とクラウド移行、学校におけるデータ連携等に課題があることがわかる。
学校において校務の ICT 化をすすめることは、勤務時間の削減だけが成果ではない。専門家から出た意見にもあるように、仕事の仕方・流れといった仕事全体の概念が変わっていくことが本質だろう。働き方改革が世の中の仕事に対する考え方を変えていったように、GIGA スクール構想による ICT 化は、教育の質や学校そのものの概念を変える可能性を秘めている。
この専門家会議は今後も続くことが予想されるが、GIGAスクール構想の下での校務の情報化に向けた課題や取り組み内容について、引き続き注視していきたい。
株式会社エデュテクノロジー (https://www.edutechnology.co.jp/ )では、自治体や教育委員会、学校、先生向けに「 ICT環境デザイン」や「授業デザイン」、「マニュアル設計」に関するコンサルテーションを提供している。GIGAスクール構想における校務の ICT 化についても、「働き方改革」「ICTを活用した業務・校務の効率化」をキーワードに、既存のフローをヒアリングしながら状況を分析し、現状に適した個別最適化された支援を引き続き行っていきたいと考えている。
株式会社エデュテクノロジー
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