記事一覧
「無敵の人」について考える、その1
「ひろゆきに論破されてみた件」(新潮9月号)で書いてないことがあった。彼が発案したと言われる「無敵の人」についてである。
「無敵の人」は無差別殺傷事件が起きるたびに話題になるネットスラングだ。ひろゆき氏によれば、「無敵の人」とは「職や財産、社会的信用がないため、刑罰を受けることをリスクだと思わずに、犯罪に手を染めてしまう人」という意味だ(『シン・未来予測』マガジンハウス、2021年、p.10
「ひろゆきに論破されてみた件」を新潮9月号に寄稿しました
noteの定期購読でぼちぼち書いていたひろゆき論を新潮9月号に寄稿しています。マガジンの更新が滞っていた理由はこれです……。申し訳ないです。noteの記事の内容はそれなりに入っていますが、最近話題の石丸構文とかも論じています。けっこう長くなってしまって、2万5000字ぐらいある感じ。ここまでひろゆきの論破やハック戦略を論じた論考はほかにないはず。今後noteのマガジンでは今回の論考で書ききれなか
もっとみるnoteの定期購読している方、今月は更新一回で申し訳ないです……(理由は後日説明します)。
7/22(月)に西田亮介さんとトークイベント
最近、新聞にコメントをつける仕事をしてて、記事エモくない?と感じてたんですが、そのものズバリご指摘された西田亮介さんとお話しします。 2024年7月22日(月)19時〜atツバメコーヒー(新潟県燕市)です。遠方で来られない方はアーカイブ視聴もあるそうです。よろしくです
論破されてみた件、その5
(つづき)
数年前、ひろゆき氏の発言がネットで話題になっていた。どうやら「猫の寿命ってだいたい5、6年なんですよ」とひろゆき氏がいったらしく、「もっと長生きするぞ」と2ちゃんねらーに嗤われていた。たしかに猫の平均寿命は10歳を超える。ペットアレルギー持ちらしいひろゆき氏はこれまで猫と接する機会がなかったか。野良猫の平均寿命は3〜5歳とも言われているので、ほぼ放し飼いで飼われた猫にしか接したこと
論破されてみた件、その4
『表現者クライテリオン』2024年7月号、5月号に與那覇潤さんの新連載「在野の知を歩く」にゲストとして出ています。 よろしければご覧ください。
ひろゆきさんに論破されたその日、ぼくは元歴史学者の與那覇潤さんと対談していた。與那覇さんの新著『危機のいま古典をよむ』(而立書房、2024)の出版記念イベントにゲストとして呼ばれたのだ(「古典を読むのは逆張りですか」@ブックファースト新宿店)。対
論破されてみた件、その3
(前々回、前回からのつづき)
ひろゆきさんからは予想外の言葉が飛んでくる。その言葉を理解するには、ちょっと時間がかかる。さまざまな意見が飛び交う討論番組でこのタイムロスは致命的だ。はたからみれば、反論できずに黙ってしまった=論破されたように見えてしまう。
だからといって、ひろゆきさんがめちゃくちゃなことを言っているわけではない。ここが大切なポイントだ。ぼくの言葉をまったく聞いていないわけで
論破されてみた件、その2
(前回のつづき)
あ、ひろゆきさんはぼくの話をぜんぜん聞いてない。何度か言葉を交わして、気がついた。正確にいうと、ぼくの言葉は耳に届いている。けれども、単に届いているだけ。どんな事情で、どんな意図で、どんな思いで、どんな文脈で、どんな背景で、その言葉を使っているのか。相手を理解しようとする気配がまったくない。他人の言葉に耳を傾けようとは絶対にしないのだ。
論破されてみた件、その1
2024年2月23日の夜。ぼくは疲れ切っていた。テレビ局が用意してくれたタクシーで、ぼくは友人宅に向かっていた。高級ミニバンのアルファードの乗り心地は最高で、リクライニングを倒してそのまま眠りたかった。けれども、いろんな感情が渦巻いて眠れそうになかった。ムカつく、悲しい、くやしい……。
論破された、論破されたらしい……ぼくはネットテレビ番組「アベマプライム」に出演したところだった。時事問題を
アステイオンに寄稿しました
5月24日に刊行される『アステイオン』100号に「物流倉庫のバイトのあとに『柔らかい個人主義の誕生』を読む」というエッセイを寄稿しています。文字通り末席に加えていただいております。あいうえお順的に。
よろしくお願いたします。
エッセイにも書いたのだけど、物流倉庫でバイトしている。注文に合わせて在庫の商品を集める「ピッキング」という作業である。働き始めて一週間ぐらい経ってから気づいた
エスカレーターと合理的利他主義
コロナ禍のころ、フランスの思想家ジャック・アタリの「合理的利他主義」が注目された。合理的利他主義とは、利他主義が自分の利益になる合理的な選択である、という考え方だ。将来の世代といった他人のために行動すれば、長期的に見ると自分に利益をもたらす。他人にした親切は巡りめぐって自分に戻ってくる。いうなければ、「情けは人のためならず」である。
アタリ氏によれば、いまの資本主義社会では「自分さえ良ければ
下向きの自己啓発書とアナキズム
「下向きの自己啓発書」と僕が勝手に読んでいるジャンルがある。
一般的にビジネス書や自己啓発書は上を目指す人が読むものだ。日々の努力を欠かすことなく、さらなる上を目指そうと、優れた経営者の思考法やノウハウを学ぶ。偉人の人生を追体験し、己の心を奮い立たせて、仕事のやる気を高める。仕事や勉強を効率化するための本は、書店にたくさん並んでいる。
けれども、下向きの自己啓発書は真逆だ。がんばらなくて
下からのウォーク・キャピタリズム
二〇一九年の東京大学の入学式、社会学者の上野千鶴子さんが、受験競争を勝ち抜いた新入生たちを前にして、こんな祝辞を述べた。がんばったら報われると思えることこそ、あなたの恵まれた環境のおかげだった。だから、あなたたちの恵まれた環境と能力を、自分ひとりが勝ち抜くためだけに使うのではなく、恵まれない人々を助けるために使ってください、と。
この反響と反発を巻き起こした上野さんの祝辞を思い出したのは、ある新
これがほんまの犬死やなあ
むかし上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶がやっていた『パペポTV』というテレビ番組があった。二人がフリートークをおこなう番組なのだが、そのなかで上岡さんが若手時代に見た、上方のお笑い芸人の話が面白かった。リアルタイムではなく再放送とかで見たと思う。もう一度観たいと思っていたが、なかなか見つからなかった。
上岡さんが亡くなられたとき、過去のインタビューがネットに再掲載されていたのだが、そのなかで同じ話をして
マガジンを定期購読されている方へのお詫び
マガジンを定期購読されている皆様へ
丸善京都店「逆張りくん」の本棚選書リスト
昨年、『「逆張り」の研究』(筑摩書房)の刊行記念として、丸善京都店でブックフェアを行いました。「逆張りくん」として影響を受けた本を20冊を選び、コメントをつけています。フェアは終了したのですが、そのままにしておくのは持ったないので、ここに載せておきます。よろしければ、ぜひ読んでみてください。
1 長濱一眞『近代のはずみ、ひずみ: 深田康算と中井正一』(航思社 2020年)
逆張りは差異化する