下からのウォーク・キャピタリズム
二〇一九年の東京大学の入学式、社会学者の上野千鶴子さんが、受験競争を勝ち抜いた新入生たちを前にして、こんな祝辞を述べた。がんばったら報われると思えることこそ、あなたの恵まれた環境のおかげだった。だから、あなたたちの恵まれた環境と能力を、自分ひとりが勝ち抜くためだけに使うのではなく、恵まれない人々を助けるために使ってください、と。
この反響と反発を巻き起こした上野さんの祝辞を思い出したのは、ある新聞記事を読んだからだった。少子高齢化に直面し人手不足で悩む福祉業界に新風を巻き起こす若者世代、というテーマだった。その記事を担当した記者は「上野さん! あなたの期待に応えようとする若者たちがついあらわれました!」と興奮気味に書いていた。
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