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これがほんまの犬死やなあ

 むかし上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶がやっていた『パペポTV』というテレビ番組があった。二人がフリートークをおこなう番組なのだが、そのなかで上岡さんが若手時代に見た、上方のお笑い芸人の話が面白かった。リアルタイムではなく再放送とかで見たと思う。もう一度観たいと思っていたが、なかなか見つからなかった。
 上岡さんが亡くなられたとき、過去のインタビューがネットに再掲載されていたのだが、そのなかで同じ話をしていた。

18歳で、この世界にポンと入ってね、周りはすごい人ばっかりやったですから。(秋田)Oスケさんの突っ込みなんか見てたら、声の出し方、言葉遣い、迫力、すごいと思いますよ。あんな豪速球は投げられへん、と。
 恐ろしいような気持ちも、ある意味でねえ、ありました。夢若師匠(浮世亭夢若、松鶴家光晴と組む)が自殺されたときです。大好きな師匠でね。おんなじ出番やったんです。
 それが犬の投資話でだまされて、追い込まれてしもうて。楽屋で聞いてエーッてなってるときに、錚々たる師匠連が言うてるんです。「これがほんまの犬死にかあ」て。これはすさまじい世界やと思うてね、どっかに距離を置く気持ちもあったんですね。

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 パペポTVのときはもっと面白おかしく話していた記憶がある。楽屋で花札をやりながら、「えらいこっちゃ」「えらいこっちゃなあ」と芸人たちが言っている。そう言いながらも、もう目が笑ろてんねん。「これがほんまの犬死やなあ」とついに誰かが言って、どかーんと大笑いしていた……みたいな感じだった。

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