イスラエルとハマスの軍事衝突の背景と今後の行方

イスラエルとハマスの軍事衝突の背景と今後の行方  


 現地時間2023年10月7日早朝、イスラエルのガザ地区を実効支配するハマスが突然イスラエルに軍事攻撃を開始した。イスラエルも直ちに反撃しておりを、現地時間10月17日現在の双方の死者は4200人を超える。その多くが民間人である。

 イスラエル軍はガザ地区に対する大規模な地上侵攻の準備を完了させており、ますます民間人を中心に死者が拡大することになる。

 それでは何故こういう事態となったのか?原因と背景が分かれば「少なくとも」事態がマシな方に向かっているか、深刻な方に向かっているかが分かる。しかし原因が分かっても解決はできない。

 それでも原因と背景について考えていくことにする。


その1  イスラエルとハマスの軍事衝突を引き起こした最大要因


 米国政治は民主党・オバマ政権時代(2009年1月~2017年1月)に急激に劣化し、共和党・トランプ政権時代を挟んでバイデン政権では「さらに」劣化が加速している状況である。オバマ政権は、前任の共和党・ブッシュ(息子)政権と親密だった軍産複合体に接近するため、世界各地で戦争・紛争を拡大させていった。オバマはイメージとは違い、米国政治史上で最も戦争や殺戮が好きな「名実とも真っ黒な大統領」である。

 2016年の大統領選ではオバマの後継候補だったヒラリーが「泡沫候補」扱いだった共和党・トランプに敗れた結果、軍産複合体が「干上がって」しまった。トランプは在任中に新しい戦争に全く踏み切らず、継続中の戦争・紛争も戦力を縮小させる一方だったからである。

 別にトランプが平和主義者というわけではなく、そもそも不動産業者だったので軍産複合体との関係がなく、戦争を拡大させてまで軍産複合体を儲けさせる発想がなかったからである。戦争にカネをかけなくてもトランプの外交は一定の成果を生んでいた。

 そこで2020年の大統領選で民主党は、依然として影響力を残すオバマと軍産複合体と(たぶん)トランプの経済政策でダメージを受けていた中国が密かにタッグを組み、オバマ政権の副大統領だったバイデンを押し立てて、不正投票と不正集計を積み重ねてホワイトハウスを奪還してしまった。

 バイデンは再び軍産複合体のためにロシアのウクライナ侵攻を長期化させ、また世界中で戦争や紛争の芽を育てていく。ちなみにバイデンとは副大統領時代にその立場を利用してウクライナや中国などで(さすがに息子を前面に立てていたが)せっせと私腹を肥やしていた米国政治史上で最も「汚職まみれ」の大統領である。

 さらにバイデンは2020年の大統領選挙では、共産主義者、各種過激派、黒人過激派、不法移民を含む有色人種、LGBTや環境保護など各種推進団体を自陣に引き込んだため、すべてそれらに配慮した政治を続ける必要がある。

 当然に米国の政治は内外で停滞する。バイデンも認知症が進行しているにもかかわらず2024年の大統領選での再選を目指して安直な「人気取り政策」を連発する。また共和党の有力対立候補となるトランプに対して司法も使った露骨な妨害を繰り返している。

 オバマもバイデンも軍産複合体も、ここでホワイトハウスをトランプに明け渡すわけにはいかない。とくにバイデンはトランプに敗れれば過去の汚職を追及されて身の破滅となるからである。

 これら米国政治の劣化に加えてバイデンの安直な「人気取り政策」とトランプに対する過剰な対立姿勢が、今回のイスラエルとハマスの軍事衝突を引き起こした原因となる。

 今回の軍事衝突の直接のきっかけは、バイデン政権によるサウジアラビアとイスラエルの国交正常化に向けた仲介である。これはもちろん大統領選に向けたバイデンの安直な「人気取り政策」であるが、それに2022年12月に政権に復帰したものの内政問題を抱えたまま身動きが取れないイスラエルのネタニヤフ首相が「乗っかった」ことになる。

 さらにバイデンはサウジアラビアに核開発ノウハウを提供し、サウジアラビアは減産を「ちょっぴり」緩めて原油価格の高騰を抑える「お互いの密約」まである。

 これらはすべてハマスと後ろ盾となるイランを大いに刺激した。それに長くイスラエルに虐げられて来たパレスチナの恨みと、国際社会とパレスチナ自治政府におけるハマスの特異な存在が加わるが、これらは後から順番に解説していく。

 まず現時点における米国とイスラエル・サウジアラビア・イランそれぞれとの関係をもっと詳しく解説する。


その2  米国とイスラエル・サウジアラビア・イランそれぞれの関係をもっと詳しく


 そもそもイスラエルは米国の仲介で、1978年にエジプト、1994年にヨルダンとの国交を正常化させていたが、それ以降は中断したままだった。中東諸国にとってイスラエルとの国交正常化は「それなりの」リスクを伴うからである。

 2020年8月に米国(トランプ)の仲介で、イスラエルとUAEが国交を正常化する。それを「アブラハム合意」と呼ぶが、そのまま拡大されてバーレーン、スーダン、モロッコとも国交正常化が続く。

 これらは2020年11月の大統領選を控えたトランプと、内政問題を抱えたイスラエル・ネタニヤフ首相(当時)の人気取り政策だったことは間違いない。しかし結果的にトランプは再選されず、ネタニヤフも2021年3月の総選挙後に組閣できず、ともにいったんは表舞台から去る。

 ところで米国は、イラン革命で親米のパーレビ国王が追放されてホメイニが帰国し、3年に及ぶ米国大使館占拠事件もあったため、1980年4月からイランとの国交を断絶したままである。間もなくイランに核開発疑惑が持ち上がり、米国は経済制裁を強化していく。

 オバマ政権は発足以来、習近平に接近していたが、実はイラン革命政権とくに経済活動まで取り仕切るイラン革命防衛隊にも密かに接近していた。

 その結果、オバマが音頭を取り2016年1月に米英仏独中露の6か国とイランとの間で、イランの核開発ペースを緩めることを条件に経済制裁を撤廃する「イランにとって大甘の」イラン核合意が締結される。

 しかしトランプは2018年5月にこのイラン核合意から離脱して経済制裁を復活させる。このトランプの判断は評価が難しいが、イラン核合意があってもなくてもイランは核開発を進めるため、経済制裁を復活させて経済にダメージを与えて核開発スピードを遅らせる方が現実的である。米国の核合意離脱後のイランはウラン濃縮スピードを加速させ、現時点では「もうほとんど」核弾頭は完成している。イランに近い中国とロシアと(北朝鮮も?)技術協力しているはずである。

 ここで核開発を進めるイランと協力する中国とロシアにとって、アラブの盟主であるサウジアラビアと核保有国のイスラエルの国交正常化、あるいは付帯条件にある米国から直接の核開発ノウハウ提供や原油価格の引き下げは、すべて看過できない重大懸念となる。

 ところでトランプ政権時はサウジアラビアのムハンマド皇太子と良好な関係を維持していたが、これもバイデン政権になると急激に冷え込む。

 バイデンは2018年のトルコのサウジアラビア総領事館内で発生したカショギ暗殺事件を巡りに、人権団体にそそのかされてムハンマド皇太子を「首謀者」と決めつける。実はバイデンに盲従する岸田政権もそれを信じてマスコミの漏らしていたため、2022年11月のムハンマド皇太子来日が前日になってキャンセルされる。

 いずれにしてもサウジアラビアは米国との関係が冷え切っていたため、また核開発ノウハウを求めて中国の仲介もあり2023年3月にイランとの国交を正常化する。ムハンマド皇太子は2022年12月に極右のネタニヤフが首相に復帰したイスラエルと中東諸国の緊張感が増すと感じていたはずである。

 しかし「自分の大統領再選しか考えない」バイデンは、そこで臆面もなくイスラエルとサウジアラビアの国交正常化の仲介を持ちかける。トランプへの対抗意識もある。もちろんネタニヤフにとっても「渡りに船」である。

 しかしムハンマド皇太子はバイデンとネタニヤフから「好条件」を引き出そうと考えているうち今回の軍事侵攻となった。アラブの盟主としてここでイスラエルとの国交正常化を進めるわけにはいかず、すでに白紙に戻っている。

 バイデンの安直な「人気取り政策」は悲惨な軍事衝突を生んでしまったが、そこでもバイデンはイスラエルとハマスの「和平の仲介」という新たな「人気取り政策」のために急遽10月18日にイスラエルを訪問する。

 バイデンはこれまでパレスチナに全く配慮していなかったため「和平の仲介」などできるはずがない。せいぜいガザ地区のパレスチナ人に対する人道支援くらいであるが、これは反イスラエル政策となる。

 全くプラスがないなら、大統領がイスラエルまで「のこのこ」出かけるべきではない。

 ついでに言うとこんなバイデンに盲従しているだけでなく、やはり自らの政権維持にしか興味のない岸田首相の対応も「お粗末の極み」である。当初はイスラエルにも自重を求めてバイデンに怒られ、やっと最近になって修正している。唯一やるべき邦人救出にも出遅れ、韓国軍用機に便乗させてもらう「お粗末さ」である。


その2  イスラエルとパレスチナの歴史


 少し横道に逸れるが、やはりイスラエルとパレスチナの歴史について最低限の解説は必要である。ただパレスチナとイスラエル(あるいはパレスチナ人とユダヤ人)の歴史をすべて書くとキリがないため、今回の軍事衝突に関係がありそうなところだけを書いていく。

 第一次世界大戦中のバルフォア宣言(英国による三枚舌外交の1つ)もあり第二次世界大戦後のパレスチナにユダヤ人の入植が続く。パレスチナとは旧オスマン・トルコ領で現在のイスラエルを中心とした地中海東岸地方のことで、紀元前11世紀には古代イスラエル王国が栄えていた。またパレスチナ人とは正確には「パレスチナのアラブ人」である。

 国連は1947年にパレスチナをユダヤ人とパレスチナ人の2国に分割し、三大宗教の聖地であるエルサレムを国連管理とする決議を採択する。1946年時点におけるこの地の人口にユダヤ人が占める割合は6%程度だったが、なぜかユダヤ人に56%の土地が割り当てられた。一方で人口の「ほとんど」を占めるパレスチナ人にはヨルダン川西岸とガザ地区(共に現在よりかなり広い)が割り当てられた。

 この時点では三枚舌外交の英国はパレスチナにおける調整能力を失っており国連に委ねたが、この明らかにユダヤ人優遇の国連案は、国内でユダヤ人勢力が強い米国と旧ソ連が主導した。

 翌1948年5月15日にイスラエルが建国を宣言するが、同日に周辺のアラブ諸国(エジプト、ヨルダン、シリア、レバノン、イラク)がイスラエルに攻め込み、第一次中東戦争となる。1年弱の戦争にイスラエルが勝利するが、戦争のどさくさに紛れてイスラエルはパレスチナ人に割り当てられたヨルダン川西岸とガザ地区もかなり浸食したため、パレスチナ難民が70万人も発生する。ヨルダン川西岸はヨルダンが領有を宣言するが国際的には認められなかった。

 1957年10月から5か月続いた第二次中東戦争は、スエズ運河を国有化したエジプトに英仏が侵攻しイスラエルも参戦したものである。

 1967年6月5日、イスラエル空軍が周辺のアラブ各国の空軍基地を急襲し第三次中東戦争となる。イスラエルは6月10日までの6日間で一方的な勝利を収め、エジプトのシナイ半島、シリアのゴラン高原のほとんどを占有する。ヨルダン川西岸はヨルダンが領有を宣言していたが正式に追っ払い、国連管理だったはずの東エルサレムまで占有する。

 そして1973年10月6日、ユダヤ人最大の祝日であるヨム・キプール(大贖罪日)当日を狙って今度は周辺のアラブ諸国がイスラエルを急襲する。第四次中東戦争となるが、アラブ諸国が第三次中東戦争でイスラエルに占有された領土奪還を目指したもので、開戦当初はアラブ諸国が優勢となるが徐々にイスラエルが盛り返す。

 結局10月23日までにイスラエルの勝利となる。シナイ半島だけはエジプトに返還された。スエズ運河に近いためイスラエルの占有は欧米にとって好ましくなかったからである。

 この間にパレスチナ人はどうしていたかというと、一方的に国連に割り当てられた領土をイスラエルに浸食されるだけで、パレスチナ国家も建国されないまま現在に至る。

 1993年にクリントン大統領(当時)とノルウェー政府が主導し、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の間で締結されたオスロ合意では、イスラエルを国家としてPLOをパレスチナ自治政府として相互に承認した。またイスラエルは占有しているパレスチナの土地から暫定的に撤収し、5年にわたって自治政府による自治を認めるとも合意したが、こちらは完全に反故とる。

 オスロ合意の「功績」でPLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相は1994年にノーベル平和賞を受賞している。ただしラビンは1995年に過激派のユダヤ人青年に暗殺される。パレスチナに「妥協」したからである。

 さらにカイロ合意に続く1994年のカイロ協定によって、ヨルダン川西岸とガザ地区が正式にパレスチナの「領土」と定められた。1947年の国連決議でそうなっていたはずであるが(しかも当時の方がどちらの面積もかなり広かったが)、パレスチナが正式の国家ではなかったため「あやふや」なままでイスラエルも勝手に侵食していた。

 パレスチナ自治政府は国連には未加入であるが、世界138か国が国家として承認している(国交があり大使館がある)。日本は未承認であるが駐日パレスチナ常駐総代表部が大使館の役割を果たしている。

 またパレスチナの名目的な首都は東エルサレムで、初代大統領はアラファト(2004年まで)、現大統領はアッバースである。


その3  パレスチナ自治政府の「領土」


 それではパレスチナは「やっと」ヨルダン川西岸とガザ地区を領土として確保できたのかというと、実は全く違う。

 ヨルダン川西岸は三重県と同じくらいの5860平方kmに380万人が居住している。うち309万人がパレスチナ人でユダヤ人が71万人(18%)であるが、逆にパレスチナが行政権と警察権を維持する地域の面積は全体の17%しかない。残る24%はパレスチナが行政権だけで警察権がなく、59%は行政権も警察権もイスラエル(ユダヤ人)が握る。

 パレスチナに警察権がない24%も実質イスラエルが支配しているため、ヨルダン川西岸の何と83%をイスラエルが実効支配していることになる。イスラエルは建国以来、せっせとヨルダン川西岸のパレスチナ「領土」に勝手に入植を繰り返し、現在はさらに入植を加速させている。正確に言えば現在もユダヤ人はパレスチナ人を追い出している。

 ユダヤ人は居住区をフェンスで囲い、イスラエル警察がユダヤ人居住区へのパレスチナ人の立ち入りを禁止している。ヨルダン川西岸においてユダヤ人とパレスチナ人が「共存」しているとは絶対に言えない。

 ガザ地区はもっと悲惨である。ガザ地区は種子島と同じくらいの細長い365平方kmに220万人ものパレスチナ人が居住しているが、その3分の2が第一次中東戦争で発生したパレスチナ難民およびその子孫である。

 この後にも出てくるが2007年にハマスがガザ地区を武力で占拠するとイスラエルはガザ地区全体を分離壁で囲い、パレスチナ人のイスラエルへの立ち入りを禁止してしまった。つまり種子島くらいの地域に220万人ものパレスチナ人が押し込まれており、当然に生活インフラは不十分で電気、水、食料、燃料、医療品などはイスラエルや国連から「死なない程度」に供給されるだけで、衛生状態も劣悪である。域内には農地もめぼしい産業も天然資源もなく住民の大半は仕事がない。まさに「天井のない監獄」えある。

 さらに10月7日以降はイスラエルが電気や水の供給を止めたため、状況はさら悪化している。空爆でケガ人が大量に出ているが、病院そのものが破壊され医師や看護師も大勢亡くなっており危機的状況が続く。国連や海外から支援物資が届いているが、イスラエル政府はエジプト国境にある唯一の補給口を閉鎖したままである。


その4  それではファタハとハマスとは?


 ここが最も重要で、かつ最も分かりにくいところである。

 パレスチナは第二次世界後、ずっとイスラエル(ユダヤ人)と対立してきた。1948年に建国を宣言したイスラエルには軍隊も(イスラエルは男女とも国民皆兵である)諜報機関(モサド)も存在するが、正式な国家ではないパレスチナには「そんなもの」はない。

 そこでパレスチナには自然発生的にイスラエルと戦う民兵組織のようなものが出てくる。その中で最大勢力が1957年に設立されたファタハである。後にパレスチナ大統領となるアラファトがファタハ初代議長となるが、活動拠点はヨルダンやレバノンで、イスラエルとだけ戦っていたわけではない。

 同じころに活動していた過激派で日本赤軍とも共闘していたパレスチナ解放民族戦線(PFLP)は別組織である。ちなみにその頃の日本赤軍最高幹部に重信房子がいる。最近その娘の重信メイがTBSの番組に出演して過激な発言を繰り返していたが、TBSの報道機関としての見識を疑う。

 当時のファタハも、その一派の「黒い9月」がミュンヘンオリンピック襲撃事件を起こすなど「負けない過激派」であったが、1980年代に穏健路線に転じる。

 そして1993年のオスロ合意でパレスチナ解放機構(PLO)がパレスチナ自治政府として認められると、ファタハはPLO最大の政党(与党)としてパレスチナの軍事を含む行政を司る。

 一方で対立政党のハマスは2005年9月にユダヤ人入植者が引き揚げたガザ地区に拠点を移し、同地区内に学校や医療施設を建設するなどで住民の支持を得て、2006年1月のパレスチナ評議会選挙ではファタハの汚職疑惑もあり、ハマスが最多議席を獲得する。

 しかしファタハのアッバース議長がイスラエルと米国政府の支持を得て依然としてパレスチナ自治政府大統領に居座り、ハマスを遠ざける。この辺の「本当の事情」は不明であるが、ファタハとイスラエルの間に密約(ヨルダン川西岸にユダヤ人の入植を認める)があったからのような気がする。

 そして2007年6月にはハマスがガザ地区を占拠するとアッバースは一方的にハマスを排除してファタハだけで新内閣を組む。ここにパレスチナの軍事を含む行政はヨルダン川西岸のファタハとガザ地区のハマスに完全に分裂したままとなる。選挙も全く別に実施している。

 イスラエルを含む欧米諸国はファタハをパレスチナ自治政府正式の行政機関(内閣を構成する政党)と承認しているが、同時にハマスをテロ組織と認定している。日本はハマスをテロ組織とは認定していない(公安調査庁のHPで確認)。

 ただサウジアラビアなどアラブ諸国は「(同じアラブ人である)パレスチナを支持する」としか表明しておらず、ファタハとハマスの「どちら」を支持するかは明らかにしていない。しかしアラブ諸国もハマスをテロ組織とは認定していない。

 確かにハマスは2009年1月、2014年7月、および2015年5月にイスラエル軍と大規模な戦闘状態となっているが、それぞれイスラエル軍が先にガザ地区の住民に攻撃を加えていた形跡がある。つまりハマスはガザ地区のパレスチナ人のためにイスラエルと戦っていた可能性が強い。

 また必然的にイスラエルを含む欧米諸国と対極をなすイラン、中国、ロシア、それに北朝鮮はハマス支持となる。ハマスの10月7日のイスラエルへの軍事攻撃に使われたロケット砲は北朝鮮製との噂がある。

 また10月初めにハマスとイラン革命防衛隊とヒズボラの幹部がベイルートで密談していたとの噂もある。どちらも噂であるが「さもありなん」である。

 ヒズボラとはレバノンを拠点とするイスラム教・シーア派でイランに近い武装組織(政党で行政も司る)である。今でもイスラエル北部のレバノン国境付近でイスラエル軍と小規模な軍事衝突を繰り返しているが、このヒズボラが本格参戦するとイスラエル軍は南北に勢力を分断させなければならず情勢が激変する。ヒズボラはハマスを規模でも戦闘能力でも「格段に」上回る。

 話を戻すが、今回のイスラエルとハマスの軍事衝突は、長年イスラエルに虐げられてきたパレスチナの不満が爆破した側面は確かにあるが、同時にパレスチナ内部でも(たぶん)ユダヤ人の強引な入植を認める代わりにパレスチナの正当な代表となっているや米国に認めファタハと、純粋にガザ地区のパレスチナ人のために戦っている(可能性のある)ハマスの対立との側面もある。

 少なくともハマスがガザ地区のパレスチナ人を虐げて無謀な戦闘に引き込んでいるとの一般的な風説は「違う」と直感的に感じる。

 ここは慎重に見極めないと大局を見誤る。前半に書いたバイデンの思惑などは「間違っていない」自信がある。

 最後に日本が「これだけは」覚悟しておかなければならないポイントである。

 今回のイスラエルとハマスの軍事衝突は、米国政府にとって「主戦場」をウクライナからイスラエルに移すことになる。また同時に(最初からあまり期待していないが)台湾海峡や尖閣列島や日本本土などは「もっと」どうでもよくなる。

 米国は今年度(2023年10月~2024年9月)の予算成立の目途が全く立たず、巨額の軍事予算を振り向けられないからである。

 そこを中国が見逃すはずがない。ウクライナで余裕が出るロシアもオホーツク海側に(つまり日本側にも)触手を伸ばすかもしれない。プーチンが10月18日に北京で習近平と会談する。内容とニュアンスを正確には把握しなければならないが、こういう時に日本のマスコミは全く役に立たないため、外電に頼らなければならない。

 つまり日本は、バイデンも岸田も全く頼りにならない中で「中国・ロシア・北朝鮮」の核保有3か国と対峙しなければならない。

2023年10月17日に掲載