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編集者の仕事(版元編)

さて、では早速「本を作りたい!」と真剣に考えている方に向けて、現役編集プロダクション勤務の編集者から、弊社での企画会議の様子や、編集者がいったい「どんな人の本を作りたがっているのか?」をお伝えしていきたいと思います。

ですがまず最初に、版元さんが立てた企画と編プロが立てた企画は「いったい何が、どう違うのか?」をご説明させてください。

そのためには「版元の編集者は、普段どんな仕事をしているのか?」を記載するのが、一番わかりやすいのかなと思います。

実際のところ、私はまだ版元さんに勤めた経験がありません。

ですので、おつきあいのある版元さんや弊社の先輩編集者から漏れ聞いた話を元に、想像をプラスしてしか書くことができません。

けれどもこうして記事に書く限りは、できるだけ忠実に「版元さんが毎日何をしているのか」をご説明できればと思っております。


版元さんのお仕事

版元さん、つまり大手出版社の編集者の要となる仕事は「企画を立て、本を作る」こと。

この時、「どうやって著者を見つけてくるのか?」「本のアイデアの素は何なのか?」は私が一番noteにて販売したい情報となりますので、有料記事にて掲載させていただければ……と思います。

そんなこんなで今回は「すでに企画ができている」ところから、スタートをいたしましょう。

版元の編集者が内部で企画を立てた場合は、当然ですが、話の流れがスムーズです。

「ウチの会社から、この人の本を出そうじゃないか!」

と直々に企画会議にかけるので、熱意や情熱もケタが違います。

……まぁ、ここで編集者VS編集長や各部署毎の様々な攻防が繰り広げられるわけですが、それについても有料の記事でご紹介できればと思います。

この段階の大事なポイントとして申し上げておきたいこと。

それは、製作の間に我ら編プロが噛むか否かで、著者をはじめ、関係各位に支払われるギャラの金額が大きく変わる、ということです。

これを、建設業界に置き換えて考えてみましょう。



大手建設会社、A社の社員が「とあるオーナーさんが、新たにビルを建てたいとのこと!」とビル建設の企画を立案するとします。

会議での反応は概ね好評。

社長の「You、やっちゃいなよ」のGOサインも無事に出、いよいよ建設に必要な人員を確保するとしましょう。

そこで大事なのは「下請け企業を使うかどうか?」です。

もし、下請け企業を使うのであれば、A社の社員は「ふむふむ〜、滞りなく進んでますね〜」と、進捗状況を節目節目に確認するだけで済みます。

工事にかかりっきりにならなくてOKなわけです。

その分、新たな企画に着手できますし、もしかしたらすでに、他の建設現場の責任担当を兼任しているかもしれません。

ですが、A社が直接施工をおこなうよりも、幾分か割高な金額を下請け業者に払わなければならないのです。

ざっくり申し上げますと、自分たちで作業をするよりも、余分に手間賃が発生するわけですね。

しかしその手間賃こそが、下請け企業の売り上げであり、そこで働く人のお給料になるのです。



———と言うわけで、版元さんが直接関係者に連絡を取り、すべての作業を社内でおこなうケースが「正規のお支払い金額」と考えてよいと思います。

それはつまり、編プロからのオファーよりも、版元さんからの直接のオファーの方がギャラがいい、ということです。

版元さんが出費増を承知で編プロに出す仕事は、短期間で製作しなければならないムックだったり、既存の本を「コンビニ用の廉価版書籍に焼き直す」作業だったり。

正直、ぶっちゃけて書いちゃいますと「我々が直々に関わるまでもない仕事」「一時的に出費がかさんでも、長い目で見れば元手を回収できる仕事」と判断されたものが、編プロにこぼれ落ちてくることが多いです。

志望動機は十人十色ですが、編集者の多くは消去法ではこの職種を選んでいないと思います。

「本が作りたい」「文章を書きたい」「ベストセラーを作りたい」

そんな気持ちで出版社の門を叩く人が多いのではないかと思うのです。

「なりたくてなった」前提がある編集という仕事。

そこでやっと「作りたい本が作れる!」となった時、よっぽどの理由がなければ、下請け業者を間に入れるなんてことはないですよね。

文芸小説などは如実にこの仕組みを表しています。

なぜならば、「出せば絶対に売れる!」とわかっている大先生(M上春樹さんやH野圭吾さんなど)の仕事が「我が社でやれる!」と決まった時、そんな美味しいお仕事を他の会社に回したりしないからです。

ここでご縁を強固にしておいて、次なる作品につなげたいと思うからです。

そういう思惑も絡んで、自分の会社にて大切に、1から10まで丹精込めて作ると思うのです。

版元さん内に専用の編プロ(子会社的な)を抱えていたり、信頼している、おつきあいが長い業者がいる場合や、専門的な書籍を作る場合(旅のガイドブックに強い編プロや、デザイン系に強い編プロなど、専門特化した編プロもたくさんあります)はこの限りに非ずです。

ですが、「これぞ我が社の目玉」となるような仕事は、他社に依頼などしないこと、想像に難くないのではないでしょうか。

そんなこんなで企画が通った後の流れは、細かい部分が微妙に違うのですが、基本的にムックと同じように製作されていきます。

関係者を手配した後は、メール確認&電話確認を各者にしつつ、原稿のチェックにスケジュールの進捗管理。

版元の編集者さんは、とにかく「確認」と「チェック」の繰り返しが主たる作業です。

直接版元さんとやりとりをする場合は、外部内部問わず手間は大幅に省けますし、それよりも何よりも実入りがいい。

デザイナーさんやライターさん、イラストレーターさんは、そりゃもう日々、「編プロの仕事はしょっぱいなぁ」とひしひし実感されていることと思います(土下座しても足りない気がする……!)。

……こうして版元さんの仕事について書いておりますと、どうしても版元age、編プロsageになってしまいますが、けれども最後に「編プロとお仕事をするメリットは何か?」ということだけ、しっかり書かせていただきたいと思います。


編プロと仕事をするメリット。


それは、ずばり「選択肢が広がる」ことです。

我々編プロは、多くの出版社さんとおつきあいがあります。

1つの出版社さんと専属契約でもしていない限り、我々には収入の保証が一切ありません。

仮に専属契約をしていたとしても、正直なところ、我々はいつ切られても文句が言えない立場にいます。

私は給料をもらって働いておりますが、この点はフリーランスの方と、考え方や働き方にあまり差はないかもしれません。

よほど割りに合わない限り「これも人脈を広げるため」と、オファーがあった仕事は断りませんし(これは社長の経営理念によって異なるため、一概に「絶対」とは言い切れませんが)、特に新規の出版社とのお仕事は「これをきっかけに、他にも何かもらえるかも」との下心から、「わあ!(白目)」というお値段でも、弊社の重鎮たちはグッとそれを飲み込んで、オファーを受けがちです。

上記を逆にとらえると、さて、どうなるか。

著者として編プロとつきあうと「今度は◯◯社とのお仕事があるんですけど、どうです?」と、違う版元さんを紹介してもらえるかもしれません。

イラストレーターとして編プロの編集者と仲良くなると「何かやりたい仕事はありますか?」と聞いてもらえるかもしれません。

そこで「いや、実はライトノベルの表紙がやりたくて……」なんてぽろっと本音をこぼすと、「紹介できますよ」と言ってもらえる可能性が無きにしも非ずです(私は本当に好きなイラストレーターさま、いい仕事をしてくださるイラストレーターさまには「この人は大成してほしいなぁ」と思うので、積極的に尋ねますし、紹介できそうなら紹介しています)。

これは編プロに勤務する側、つまり編プロの編集者に対しても、同じことが言えたりします。

版元の編集者さんとお話していると、イラストレーターさんの情報や若手の著者さんの情報に、正直、疎いなと思う時があるのです。

それは、末端の作業を編プロに全部任せているので「イラストレーターを探し、候補をピックアップする」「デザイナーと打ち合わせをする」などの経験が圧倒的に乏しい、または一度もないことが原因です。

入る出版社によっては、一生その手の作業をしないまま、出来上がったもののチェックだけで編集者としての寿命を終える人もいます。

私は版元と編プロの違いもわからぬまま、未経験で編プロの社長に拾っていただきましたが、こうして編集作業の末端に近い場所で経験が積めたこと、本当に「編集者として基礎体力がついた」とありがたく思っています。

……なんだか最後は私の編集者としての経験談になってしまいましたが、版元さんの編集者の仕事、少しは伝わりましたでしょうか。

次回はもうそろそろ、肝心要の「編集者の著者の探し方」的な記事が書ければ……と思います。

そちらも、おつきあいいただけますと大変大変、嬉しいです!

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