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「ふつうの軽音部」「吹部やめたい萩野さん」を読んで

サクセスストーリーではなく、成功を目指さない音楽愛好者の話があっても良いと思っていました。
その点で、これから紹介するマンガが面白かったです。

「ふつうの軽音部」「吹部やめたい萩野さん」

どちらも高校の部活動の話です。
「ふつうの軽音部」(原作:クワハリさん、画:出内テツオさん)、「吹部やめたい萩野さん」(桃原さん)

どちらもコメディ作品で、部員のモチベーションが低いのが特徴です。

「ふつうの軽音部」から
(たぶんこいつらはじめからやる気なんてないぞ)

「ふつう〜」はこれからサクセスストーリーになりそうですが、1巻は人間関係のギスギスも含めて、緩くてダメな空気が詰まっています。

でもまあ、現実、そんなものだと思うんですよ。
以前、アニメ「響け!ユーフォニアム」について、「勝利のリアリティが感じられない」と書きました。
アニメ版「ぼっち・ざ・ろっく!」も、文化祭成功エンドは身の丈にあっていると思うのですが、喜多さんがどれだけ練習しても、短期間であれだけ上手くなるのは、身体的理由で非現実的だと思うんですよ。

その点、「ふつう〜」はその辺りリアルです。
主人公が高いギターを無理して買っても、買って満足してしまい、練習しないんですよね。軽音楽部に入って初めてケースから出す。結局ほとんど弾けなくて、「ごっこ遊び」みたいなことをしています。
これは自分にも身に覚えがあります。
たぶん、教本を読むとかの話でなくて、身近に音楽をやる人がいないと「練習とは何か」がわからないのですよ。
音楽に理解がある家に生まれるかどうかって、それだけ違いを生むと思います。

一方で、おそらく前からやっててとても上手い男の子は、獲得した軽音部内での高い地位を利用して女の子を取っ替え引っ替えしたりするだけで、上に行こうなんて気持ちは全くありません。

逆に言いますと、この内容でもこの作品が名作とされているということは、音楽をやらない人たちにとって、「音楽はあの程度の努力で結果が出る」と思ってしまっているわけで、それが自分にとっては悔しい、のです。
これは前述の「ぼっち・ざ・ろっく!」にも言えるのですが、「音楽ほど努力の結果が結びつかない分野って珍しいのに、ドラマだから簡単に結果が出る」描写が悔しいと思っています。

アンチ「響け!ユーフォニアム」論

と以前書きましたが、音楽って努力に対するリターンが小さいし、子ども時代からやっている人をひっくり返すのは余程の天才でない限り不可能なので、音楽の物語において努力だけでなんとかするというストーリーはリアリティを持たせることがかなり難しいと思うのです。
その点、「ふつう〜」と「吹部やめたい〜」のダメっぽさはリアルだなと思います。

「ふつう〜」で、中学時代からバンドを組んでいた子たちは、同級生に対し強いアドバンテージを持っていたのに恋愛問題で解散してしまいます。
「吹部やめたい〜」は、練習そっちのけで、実際には何もしない色恋沙汰ばかり頑張ってます。

「吹部やめたい萩野さん」から


「ふつうの軽音部」から

高校生にとって、音楽より恋愛の方が優先というのはリアルですよね。
音楽で上を目指すとか考えている人の方がおかしいんですよ。

だから、「ふつうの軽音部」や「吹部やめたい萩野さん」みたいな作品が増えることで、「上手くなくてもいいんだ」「頑張らなくても音楽系部活にいていいんだ」という認識が広がれば、きっと音楽人口も増えるのではないかと思った次第です。


余談なのですが、「ふつうの〜」で描かれる軽音部のダメな雰囲気って、先日書いた「ポピュラーミュージックには育成システムがない」からだろうな、と思うのです。
その点、「吹部やめたい〜」は一応部活は体育会系です。たぶん全然勝てない学校でも先生は本気指導ですし。(「ふつう〜」の軽音学部の顧問は音楽経験なさそうなやる気のない先生)
それはコンクールという競争があるかどうかだと思うのです。

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