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値上げ対策を比較したら日本がいちばんホラーだった(インフレ物価高と国民性)
柿の種が好きだ。
ついつい手元に置いてぽりぽり食べてしまうが、久しぶりに食べようとして驚いた。なんとなく袋の中身が軽くなった気がしたのだ。
「あれ?わたし、途中まで食べたっけ?」
そう思ったとたん、ふと以前より目にしていたニュースを思い出した。
「これがウワサの『ステレス値上げ』か!」
調べてみたらご名答。
亀田の柿の種の6袋詰は、2022年に190g→180gへ、小袋は71g→63gへと内容量が削減されていた。(※)
消費者に気がつかれないように内容量を減らす企業もある中で、亀田さんはとても良心的。ちゃんとホームページにおしらせを掲載してくれている。
調べなきゃ気がつかないけど、まぁ、あえて粒立てて言うのもおかしい…という気持ちもわかる。
ステレス値上げとは
ステレス値上げとは、消費者に気がつかれないように値上げをすることだ。
ステレス値上げ
=消費者に気がつかれないように値上げをすること(内容量を減らし、値段を据え置くものが多い)
=「シュリンクフレーション」と呼ばれることもある
世界規模のパンデミックに陥ったコロナショックを乗り越えて、2022年の世界の懸念事項1位に躍り出たのはインフレだ。
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物価の高騰に頭を悩ませているのは、もちろん日本だけではない。
世界28カ国を対象に行われた調査では、76%の人が食料品の値上がりを体感している。
![](https://assets.st-note.com/img/1718063499279-rWZYdkBcSC.png?width=800)
そこで世界中で問題になっているのが、「ステルス値上げ」だ。
世界のステレス値上げ対策
物価が上がれば値上げせざるを得ないのはしょうがないとして、こっそりばれないように値上げするのは気持ち悪い。
そう考える人は少なくなく、世界中でさまざまな対策が行われている。
いち早く消費者の不満が形になって対策が行われたのは、フランスだ。
【フランス】
・大手スーパー(小売店)がステルス値上げ商品にステッカーを表示(2023/9)
・フランス政府がステルス値上げ対策に関する省令を公布
・小売店に対しステルス値上げ商品の店頭表示を義務付け(2024/7~)
・店頭表示を怠った小売店には罰金を科す
・消費者に対しステルス値上げの疑いがある商品の通報フォームを設置
フランスの場合、大手スーパーの行動がきっかけとなり、政府が動く形になった。
他の大手スーパーからはメーカーではなく小売店に義務が生じるのはおかしいのではないかと不満の声も上がっているが、ボトムアップで政府が動いているのは、なかなかにすごい。
そして、フランス政府はこのステルス値上げ問題を、EU全体の食品ラベルに関する規則(※)の変更に拡大し、審議しようとしている。
おとなりの韓国も対策は早い。
フランスの大手スーパーが抗議している間に、コンパクトな韓国は国全体での法律改正に躍り出た。
そして、2023年12月には「事業者の不当な消費者取引行為指定告示」を改正し、消費者が商品の変更内容に気がつけるように対策することを発表した。
【韓国】
・法律を改正(2023/12)
・重要事項を変更した場合は韓国消費者院に通知
・消費者が変更に気がつけるよう包装材に表示することを義務化
・変更事実を周知しない行為を「事業者の不当行為」と規定し罰金を科す
もちろんアメリカも黙ってはいない。
ジョー・バイデン大統領は「シュリンクフレーションは詐欺のようなものだ」と批判し、2024年3月の一般教書演説の中で今後、シュリンクフレーション防止のための法案の制定することを約束(※)した。
国民の多くが、よくやったと賞賛したのは間違いない。
日本のステレス値上げ事情
じゃあ、日本はどうなのか。
他国のような具体的な対策はまだ行われていないものの、消費者庁はステルス値上げに関する意識調査を行っている。その結果を引用すると、以下のとおり。
![](https://assets.st-note.com/img/1718063686881-QGg4Jrwq0q.png?width=800)
日本人だって、物価の上昇に気がついていないわけではない。約8割の人が実質的な値上がりに気がついている。
でも、未だに法的な対策や小売店などの具体的な対策が行われていない理由は、日本人独特の相手の気持ちを慮る性質にあるようだ。
意識調査の結果をみると、「実質値上げは不誠実だと感じる」人が24.2%に対し、「物価上昇による実質値上げは仕方ない」人が21.7%。
だいたい同じくらいいるというのだから、この期に及んで、日本人はやさしい。
***
NHKおはよう日本「値上げしてごめんなさい 伝え方で印象が変わる?値上げの話」という番組の中で、値上げする小売店のそれぞれの事情が特集された。
![](https://assets.st-note.com/img/1718063734015-e805bfNrJo.png?width=800)
素直に謝る小売店、値上げと同時においしくする努力をしている小売店などを紹介し、番組の中の結論は「値上げをするにしても理由や背景、ビジョンを誠実に伝えよう」というものだった。
「お互い辛いのは一緒だ」という結論は、他の国がしている「法律でガンガン規制してこうぜ」という対応とは明らかに違う。
沈没船ジョークは正しい?!ステルス値上げと国民性
国のステレオタイプに着目し、その特徴を端的に表現するブラックジョークの一種に「沈没船ジョーク」というものがある。
沈没する船の船長が乗客を海に飛び込ませようとする際に、放った言葉だ。
アメリカ人:「飛び込めばヒーローになれますよ」
フランス人:「決して海には飛び込まないでください」
日本人:「皆さんはもう飛び込みましたよ」
これが、今回のステルス値上げ対策の各国の方向性にぴったりなのだ。
アメリカ人のバイデン大統領は、自分がヒーローになるべく消費者に向けて「シュリンクフレーションは詐欺のようなものだ」と大きく批判した。
フランス人は、自他ともに認める「よく文句を言う国民」らしい。フランスの保険会社「Maaf」がフランス人1000人を対象に行った調査によると、「フランス人はよく文句を言う」と思っている人がなんと93%にも達した。(※)
確かにフランスでは、法律が先というよりは、スーパーなどの対策が先行し、消費者の文句や不満からステルス値上げ対策がスタートしている。
日本人は、調和やバランスを考えて結論を出す国民だ。物価高で明らかに自分の不利益が増えていても、意識調査をすれば「物価上昇による実質値上げは仕方ない」と考える人がかなり多い。
***
柿の種の内容量の減少を阻止する方法があるとすれば、「みなさん不満を言っていますよ」とより多くの人に伝えることだ。
そうすれば一変、みんなが急に不満を言い出す可能性がある。
…そう考えると、ある意味、日本人がいちばんコワい…かもしれない。
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