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季節性商品で集客し、保障の充実を案内してゆく

生保業界における新しい販売機会創出の起爆剤

保険業界には「ドアノック商品」と言われるものがある。一番最初の顧客接点を作り出すのに適した商品のことだ。支払事由を聞いただけで目をひいたり、保険料が安いなど、加入ハードルが低いことが特徴だ。

たとえば、上記のインフルエンザ保険や熱中症保険中は名前を聞いただけで「どんな時に支払われるのか」がイメージしやすく、保険料も安い。季節性の強い商品だが、注目を集めやすい保険であることは間違いない。

利幅は薄いとしても、保障期間が限定的なので、財務面で長い間負債を抱え込む恐れもない。

消費者がたくさんの情報を持つようになった今の時代、ドアノック商品だけ加入してさようならする人もいるだろうが、これから保険を売ってゆく道筋の一つとしてこの二段構え(ドアノック商品から本格的な保障へ繋ぐ)の手法は個人的に大注目だ。

ドアノック商品と後続商品の関係性

前述の二段構えの販売手法は保険業界以外でも普通に効く手法である。試して「これは使えるぞ」と思ったら、より本格的な商品へと移行するわけだが、生命保険において「この商品使える!」と最も強く思うのは支払が行われた時である。

ここでドアノック商品と後続の本格的な保障の支払事由が被っていると、「ドアノック商品で支払があった時点で過去の該当歴がある」とみなされて後続商品の加入ができなくなってしまう。

これでは販売拡大のきっかけ作り、というドアノック商品のロジックが破綻してしまう。

ここが生命保険という商品特有の悩ましいところで、たとえ支払いが行われたとしても、もう一方の商品に加入できるような設計が理想。

そうでない場合、保険の支払いが行われていない段階で「もっと充実した保障にアップグレードしませんか?」と持ちかけなくてはいけない。どのタイミングでのアップグレードを提案するのが最適かは今後研究が進むだろう。

販売への道筋が透けて見える商品設計

上述のインフルエンザ保険や熱中症保険は、支払範囲が絞り込まれた入院保障の側面がある。そのため、「もっと幅広く備えられる」入院保障への移行を勧める話法が成立する。

ここまで織り込み済みで開発されたのだとしたら、よく練られた商品性である。組織が大きくなればなるほど、顧客の腹にストンと落ちるようなロジックが組み込まれた商品を作るのは難しくなってゆく。

一つ一つの部署の規模が大きくなり、それぞれの思惑が出てきて組織内の綱引きが始まるからだ。

今後も「ニュースで馴染みのある症状」に備える保険は開発が進むだろう。「ドアノックから攻める」のか、「最初から本格保障へ誘導するか」の使い分けが、各社の今後の成長を左右しそうである(もちろん会社からすれば後者の方が事業効率は良い)。

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