見出し画像

『料理とイタリア  現地へ渡った料理人の、ちいさな20の物語』について


イタリアが好きなひとたちには、それぞれ理由がある。
料理が好き、イタリアの食材が好き、ワインが好き。
Centro(中心地)の街並みや歴史的建築、世界遺産、そしてBar(バール)で出会った風景や人びとが好き。

 イタリアが好きな私たちには、それぞれの「イタリアが好きな理由」があり、その理由を語り、耳を傾ける姿には、どことなくキラキラするものがある。共感することもあれば、知らなかった街の世界・村の世界があり、イタリアについて語るほど、自ずとその愛は深まっていくばかりだ。
 本noteでは、そんな“個人的なイタリア”を教えてもらいに、イタリアで料理を学んだシェフたちへ、当時の記憶をお聞きしています。

 新型コロナウイルスの影響で、旅が遠ざかってしまった今、イタリアのまだ知らぬ姿やイタリア料理のおもしろさ、そして料理人という生き方について教えてもらう。日本にいながらほんの少しだけ、イタリアへ近づくことができたら、そんな思いでこの試みをはじめました。

画像1


わたしとイタリア
少しだけ、個人的なイタリアの話を。

イタリアが好き。そう思ってから、あっという間に10年近くが経っている。

イタリアが好きになったきっかけは、南イタリアの小さなプローチダ島で、現地の同い年ぐらいの3人の女の子たちと出会ったことだった。当時イタリア語がわからない私と友人にビーチで話しかけてきた彼女たちは、ビデオメッセージに登場して欲しいと頼んできた。何が書いてあるのかわからないまま、スケッチブックの文字を声に発して、『Brave!』と喜ばれる。
私たちは、記念に写真を撮った。
今思えば、海を背景に写真を撮ればきれいだったろうに、塀を背景に私たちは写真を撮っていた。
恥ずかしそうな笑みで、並ぶ5人の女の子。

次の日、タクシーに乗って細い石畳を港へ向かっていると、タクシーの横を彼女たちが自転車で通り過ぎた。
思いっきり手を振る。タクシーの後部座席から振り返ってみると、彼女たちは自転車を止めて、私に向かって手を振っていた。
あれからもう14年が経ってしまったが、ビーチでの出来事やこの去り際の瞬間は、その時の胸が高鳴る気持ちとともに心に残っている。

思い出すと胸の奥がじんわりと暖かくなり、
あの思わず目をつぶってしまいそうな、眩しい陽の光を思い出す。
言葉がわからなくてもワクワクする、そんな体験だった。

それからイタリア語を習い始め、小さな町・ウルバニアの語学学校へ留学した。たった1ヶ月のホームステイ。わずか4人の語学クラス。地元の楽団に誘われて、気づくと、お葬式のセレモニーで演奏をしていた。セラミカ陶芸を教えてもらい、小さな器ができあがった。
雨の日も晴れの日も通ったBarでは、宿題をする日もあれば本を読む日もあった。町の人とぺちゃくちゃとしゃべってみたり、みんなでサッカーを観る日もあった。ちいさな町のなかでは散歩をしているだけで、しょっちゅう同じ人と顔を合わせ「 A centro!(またCentroで!)」と挨拶を交わした。
イタリア語はつたなかったけれど、笑いの絶えない毎日。じわじわと私は、この小さな町に紛れていった。

イタリア人は、日常の中で、小さな幸せを見つけることが得意な人々だ。

そう思ったのは、この時のことだ。

その数年後、フィレンツェに少しだけ暮らし、ボローニャの自由な空気が好きになり、またウルバニアに戻った。
思い出深い場所は多い。
何より彼らの生き方や考え方、そして食事の風景は、思い出すだけでも、いつも心を幸せな気持ちでじんわりと満たしてくれる。

そんなイタリアの姿を求めて、イタリアのラジオを聞いたり、ドラマや映画を見たり、本を読んだり・・・日本でイタリアを探す日々が続いている。
この取材をはじめてからは、イタリアに強く浸れるひと時はやはりイタリア料理を食べている時間になった。シェフの物語を頭の中で巡らせながら、前菜、プリモ、セコンドと順番に沿ってひと皿ずついただいていく。

いつかイタリアにまた行く日を夢見て。



この個人的な活動に賛同してくださり、取材をお引き受けくださった料理人の方々に、心より感謝致します。
惜しみなくご自身の思い出や記憶を語ってくださり、料理への考え方やその核なることをお話ししてくださり、ありがとうございました。

この活動は、食べることだけでないその先の興味やおもしろさが、私の中で研ぎ澄まされていく、そんな経験になったように思います。
“イタリアが好き”というその気持ちだけで繋がって、共感し、お話を聞かせてくださったみなさんと、これからもその気持ちを大切に繋がっていけたら嬉しいです。


画像12
画像13
画像14

私とイタリア ープローチダ島ー

画像16
画像17
画像18
画像21

私とイタリア ーウルバニア(マルケ州)ー

画像2

私とイタリア ーフィレンツェのランプレドットー

画像3

私とイタリア ーフィレンツェの夕暮れー

画像4

私とイタリア ーサンタ・マリア・ノヴェッラ教会ー

画像19
画像20

私とイタリア ーフィレンツェのある風景ー

画像5

私とイタリア ーボローニャのマッジョーレ広場ー

画像6

私とイタリア ー至る所に音楽が鳴り響く、マッジョーレ広場ー

画像7
画像8
画像9
画像10
画像15

私とイタリア ーボローニャのある風景ー

画像11

私とイタリア ーボローニャは音楽の街ー







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?