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勝ち取った先に残されたもの

対話の中でよくプライドという言葉が引用されるが、個人的にはプライドがあるから正直になれないと感じている。
誤解を恐れず本音を語ると、プライドとはご存知の通り自尊心だ。
自身に対し筋を通す行為を否定しているのではなく、余計な対立に自尊心を立てると相手に振り回されるだけで疲れてしまうだけだ。
仮に対立する場合に必要なのは、むしろ馬鹿を演じることだと思う。
それに自分を偉いと思い込んでいる人ほど馬鹿を嫌う。
何より馬鹿を演じられるのは本当の利口者だけしかできない術だとも思う。

こういった内容と繋がるかはさておき、実話を基に描かれた「フォードvsフェラーリ」という映画はプライドとの戦いを見事に映し出す作品だと思う。

この物語を簡単に説明すると、アメリカの車メーカーであるフォードがイタリアのフェラーリに対し宣戦布告を突きつける。

事の発端は、フェラーリは高品質を売りにし少量生産ということもあるのか、倒産しかけているという情報をフォードが聞き付け買収の話を持ちかける。

フェラーリはまたレースを軸に人気のある車を提供している。
フォードの営業の者がフェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリとの対談で、ル・マン24時間レースの話題となり、エンツォはフォードと一緒(合併)になったときはレースに参加するか?と問う。
フォードの営業は上層部と相談の上、レース参戦に反対の意見が出たら撤退するとあっさりと答える。
フォードの答えに不満がをあらわにしたエンツォは感情的になり、フォードを汚い言葉で罵る。
エンツォが怒るのも無理はない。
ル・マン24時間レースで三連覇した実績を誇り、フェラーリというブランドはステイタスになっているからだ。

結果的に買収は失敗に終わり、その後とんでもないニュースが舞い込む。
それはフェラーリがフィアットに売却されたという内容だったからだ。
この買収劇にはからくりがあり、フォードの提示額とフィアットが提示する額を競わせて、結果的にフォードの看板に泥を塗る形で終わったからだ。
その事実を知った二代目フォード社長は怒りが爆発寸前だった。

そこでフォードの社長が下した答えとは、意地でもル・マン24時間レースに出場し優勝すると決意表明をする。
そこで白羽の矢が立てられたのが、アメリカ人で唯一ル・マン24時間レースで優勝経験を持つキャロル・シェルビーだ。
だが、キャロルは後に心臓病が原因となり最前線から姿を消し、カーデザイナー兼経営者として裕福層を顧客にした商売をしていた。

フォードの経営陣はキャロルを説得し、ル・マン24時間レースで勝てるチームを作ってほしいと願い出る。
するとキャロルは有名ではないが、戦争経験のあるイギリス人で小さな自動車整備工場を経営するケン・マイルズは地元レースではちょっとした有名人ということもあり、ドライバーとしてチームに誘う。

本来であればキャロルがドライバーとして出場したかった。
先に説明した通り心臓病を抱えており無理だということで、自分と同等の腕を持つだろうと考えられるケンに託したのだ。

キャロルが睨んだ通り腕の良いケンだったが、元々皮肉屋ということもありフォードの上層部からは嫌われていた。

ケンは出場出来ずチームの留守を頼まれる。
どこの世界にも存在するが、ケンはどちらかというと理論や計算で動くタイプではなく天才肌だった。
それ故に数字が全てだと思う上層部の人間はケンを理解しなかったのだろう。

そういったこともあり、最初のル・マン24時間レースは惨敗となる。
しかしキャロルはただの負け戦ではなかったと上層部を説得する。

トライ&エラーが続き車はレースに打ち勝つ準備が整った。
あと残された課題はドライバーだ。
そこでキャロルはフォードの上層部に嫌われるケンを何としてもレースに出したいと申し出る。

そしてキャロルの願いが叶いケンはル・マン24時間レースに主情が決定する。

レースが始まり過酷な競走は激化する。
キャロル率いるチームは予想以上に他社の車を上回るレース展開を見せる。
何よりケンは自己記録を破り想像以上の力を発揮する。

しかし、キャロルの活躍を素直に喜べない上層部の一人は、少しでも社長のお眼鏡にかかりたいという一心でアイデアを出す。
その答えは最後のフィニッシュを飾るのは我が社の車三台が同時に並ぶと宣伝にも繋がり、劇的な絵柄なので効果的にフォードが天下を取った象徴となると社長に持ちかける。
社長はその案が気に入り早速キャロルに伝える。

当然ながらキャロルは真っ向から否定する。
ケンの仕事は見事なのは勿論のこと、まだ記録を塗り替えることが可能だったので上層部の意見には反対だったのだ。

ドライバーの交代前に限られた時間内で寛ぐケンに対し、キャロルは上層部から出た案を打ち明ける。
するとケンは意外にも怒らずに小さな口調でキャロルに、「どうしてもそうしてもらいたいか?」といった口調で尋ねる。
するとキャロルは、「お前のレースだから好きにして良い…」といった内容の答えを出す。

結果的にどう出るか、そしてレースの行方はどうなるか…

続きは例の如くレンタル店で借りて鑑賞して下さいませ〜♪

最後に、会社が描くプライドとキャロルが掲げたプライドとでは大きな開きがあった。
それ以前にキャロルは上層部とケンとの間に挟まり馬鹿を演じレースを制したといっても過言ではないはずだ。

多少は脚色はされていても事実なので説得力のある内容に仕上がっている。
そうそう、自尊心は無闇に引き合いに出すのではなく、自身との戦いに対し駆け引きの材料として捉え、相手に油断させ馬鹿を演じてこそ相手に勝利を握らせるように見せ、結果的に虎視眈々と勝利に迫ることが大事であると改めて知る。
てな訳で、この作品を通して感じたことだ。

わーお!



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