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訳されない事実

ミステリーものといえば、アガサ・クリスティやコナン・ドイル、ジョン・ル・カレといったイギリスを代表する作家が目立つ。
またイギリスは日本と同じく島国だ。
伝統を尊重し、新しい文化を発展し世に送り出すことも得意とする国家という印象も残る。

で、今回は他国のフランスから発信されたミステリーを紹介したい♪

邦題「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」である。

簡単な概要を説明すると、世界的なミステリー作家であるオスカル・ブラックによる「デダリュス」三部作である完結編「死にたくなかった男」の出版権を手にしアングストロームが他言語翻訳版を出版しようと9人の翻訳家を雇う。

それぞれ9カ国の翻訳家が揃い。
先ずイギリス、ロシア、スペイン、デンマーク、イタリア、ドイツ、中国、ポルトガル、ギリシャ語を訳す人々が出版元であるアングストロームの監視下で軟禁状態で仕事に挑むこととなる。

翻訳する作業は一日30ページまでと限られている。
また作業に準じている期間はスマホや個人で使うパソコンは没収されている。
外部への接触は一切許されない環境だ。
その代わり整った施設並みに、図書館以上の書物や飽きないほどの映画が用意されている。
そして体力低下にならないよう体を鍛える場所のジム並みの設備まで整っている。
だが、事態が一変する。

出回るはずのない完結編「死にたくなかった男」の冒頭が何者かにインターネットを通じて流されるのだ。
更に最悪なことに、アングストロームを仕切るオーナーであるエリックは重要な作品を横流しした者から脅される。
その要求とは多額な金額を指定した場所に移すことであった。

そこで簡単に怯まないエリックであった。
脅した者は必ず内部に潜むと睨んでいた。
真っ先にエリックは9人の翻訳家に対し揺さぶりを掛ける。

エリックの思惑とは反対に犯人は名乗り出ない。
苛立ちを隠しきれないエリックは、手段を選ばず翻訳からを裸にしてまでも裏切り者を徹底的に炙り出したい一心だった。

エリックの作戦が虚しくしぼもうとしたとき、新たにゆすりのメールが届く。
その内容とは、更に作品を公表するといったものだった。
事実、何ページかの作品が無断で公表されてしまう。
怒りを覚えたエリックは感情を抑えきれない状態だった。

9人の翻訳家の誰かが犯人である。
それにしても、どうやって遠隔操作できるのだろうか?
こういった疑問も感じるエリックであった。

先ず、真っ先に疑われたのがロシア語を担当したオルガ・キュリレンコ演じるカテリーナである。

理由の一つにカテリーナは誰よりも本作のヒロインに心酔し、劇中で語られている衣装をまとっていたからだ。
次に挙げられた点が誰よりも完結編を読みたいと熱心に考えていた点も理由の一つである。

あらゆる仕事でも共通していることだが、完璧を求めると細部を徹底的に見直す。
また感情移入することで細部を構築したいからである。
カテリーナも例外ではなく、そういったことを共感したいがために、エリックに近付き原作が入ったカバンに近寄ったのも事実であるからだ。

しかし近寄ったのだが未遂で終わり決定的な証拠はない。

次に疑われるのがイギリス人のアレックス・ロウザーが演じる同名のアレックスだ。

実はアレックスとエリックは元々面識のある関係だった。
もっと深掘りするとアレックスは翻訳家ではない。
更に付け加えると、アレックスは事前に翻訳家の中国、スペイン、ポルトガル、ドイツ語の翻訳家と接し、時間に几帳面なエリックの性格を利用する。

そのため、帰りの交通手段は電車を利用した。
これは余談だが、恐らくエリックは強迫性障害なのかも知れない。

電車を利用する理由は車と違い事故がない限り時刻通りに動くからであろう。
しかも決まった車両でエリックはほぼ決まった場所で新聞を拾い読みをしながら移動する。
その際、普段持ち歩くカバンの中身にある完結編の原稿が入っていることを知っていたアレックスは同じ形の中身が空っぽのカバンとすり替える。

その後、限られた時間内で原稿の全てを日本製の優れたコピー機で短時間内で刷り上げる。
そして原稿が入ったカバンと共にエリックの元にさりげなく置く。
何事もなかったかのように多国籍軍は手を組み今に至るといった具合となる。

で、この作品はこれだけでは終わらない。
冒頭で告げられる通り簡単に手品の種明かしはしない。
一見すると種明かしに思えた部分は、実をいうと誤訳だったりする〜♪

最後の大どんでん返しは恐らく誰も予想すらしない状況だと思われる。

わーお!

それだけに最後まで緊張感を持って接しられる珍しい映画作品でもある💫


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