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食についてショックを受ける話し

遠い話し(今から数えて約40年前)、更に付け加えるならば個人的な過去の話しで恐縮だが、昭和で育った時のマクドナルドはすんげえご馳走だった。
今も鮮明に覚えているが、赤羽駅の東口にあるマクドナルドは他の飲食店と比べとても輝かしい存在だった。

当時は1ドルが300円を超えていた時代。
当然ながら為替も今とは違い、マクドナルドのハンバーガーは今の価格と比べると三倍ほど、いや以上になるのだろう。

そのため、マクドナルドで食事をする事など滅多になかった。
今と違いバリューセットも存在していなかった。
どの商品も高嶺の花だ。
子供ながらに思ったものだ…
「大人になったら絶対に毎日ビッグマックを食べてやる!」と。
今は大人を通り越えて、初老に近づきつつある年齢に達したが、マクドナルドはもとより、高カロリーのファストフードは体が受け付けなくなった。

こういった個人的な実録はさておき、今回紹介する映画は今までと違い「ドキュメンタリー」という実録の映画だ。
正直、この手のジャンルを評論するのはとても難しい。
何故ならば事実そのものだからだ。
演出や技法といった本来映画にあるべき姿がない。
いや、むしろ必要としない。
必要というより必然となるのは事実を明確に捉えるという点だ。

今から数えて15年以上前の作品、放題「スーパーサイズ・ミー」
で、監督、脚本、制作、出演とマルチにこなすモーガン・スパーロックの視点を通して一ヶ月間をマクドナルドのみを食べて過ごす実録映像にトライする。

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事前に内科医、心臓病専門医、胃腸病専門医による健康診断を受けて物語が始まる。

ここでルールが存在する。
○一日に3食マクドナルドの商品を食べる。
そんでもって全てのメニューを必ず食べる。

○店員に「スーパーサイズにしますか?」と尋ねられたら決して断らない事。
※ 日本にはスーパーサイズがないので正直ピント来ない人もいると思う。

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至って単純なルールに映るだろうが、5日目にして症状が現れる。
先ず体重が5キロ増えて、うつ状態と胸の圧迫感が続き、栄養士からビタミン不足が原因と言われ、他の医師からは中毒症状と伝えられる。

次第に物語が進むと、体が気だるくなったり、感情をコントロールできないほど精神的に追い込まれる。
更に動悸を感じる様になった主人公は、肝臓にも影響が及び高尿酸血症により痛風を惹き起こしかねないと注意される。

一旦ドクターストップを勧められるが、モーガンは続行を決意する。

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こうなると、命懸けの人体実験と言っても過言ではないだろう。
その人体実験も無事に終了する。

しかし、代償はとても大きかった。
元の体重に戻すのに1年と2ヶ月をかかった。
だが、その甲斐あって本作がサンダンス映画祭で上映されると、マクドナルドのスーパーサイズのオプションが廃止された。

個人的に面白かった点は、劇中多くの子供を前にして、マクドナルドのキャラクターであるドナルド・マクドナルドとウエンディーズのキャラクターの女の子とイエス様の写真を見せると、多くの子供はウエンディーズの女の子とイエス様を殆ど知らない。
だが、マクドナルドのキャラクターだけはその場にいた子供が知っていたのだ。
そう考えると、マクドナルドは偉大なのだろう。
でも、この映画を観てからというもの、個人的にはマクドナルドの製品を一切口にしていない。
いや、マクドナルドに限らずファストフードそのものに疑問を感じたからなのだが。

とても不思議だ。
子供の頃はマクドナルドのハンバーガーは高嶺の花だ。
時代が変わり、昔と違い価格だけでいえば昔よりも手に届くのに自ら買わなくなった。
この映画の影響も少なからずあるのも事実。
それ以前に食生活そのものを改める必要があると知ったからに過ぎない。

価格で選ぼうが見た目で選ぼうが、それらは消費者の自由だ。
反対に選ぶ権利もある。
こういった選択肢を真剣に考えるのも映画の力なのだろう。
それと同時に「ドキュメンタリー」ならではのジャンル故なのだろうか…

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