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みちらんが選んだイッてみたい海外の道ベスト3 #2ホタテ印の巡礼路

続いてご紹介するのは、サンチャゴ巡礼路。
一般にはスペイン国内の800キロ(下図の赤線区間)を指すことが多いですが、フランス、ドイツ、イタリアの各都市からピレネー山脈を越え、大西洋に面した聖地サンチャゴ・デ・コンポステラへ向かう巡礼路のネットワークです。


サンティアゴ巡礼路(出典:Wikipedia)

星野大聖堂へ

サンティアゴ・デ・コンポステラには、聖ヤコブの遺骸を埋めたとされる場所に建てられた大聖堂があり、エルサレム、ローマと並びキリスト教の三大巡礼地といわれています。

聖ヤコブはイエスの十二使徒の一人で、最初の殉教者。迫害により長らく行方不明になっていた墓が、813年星の導きにより見つかったのです。

サンティアゴは聖ヤコブのスペイン語読み、コンポステラは、カンポ(野原)とステーラ(星)を合わせた意味だそう。
いざ星野リゾートならぬ、星野大聖堂を目指します!

サンティアゴ大聖堂(出典:Wikipedia)

ブエン・カミーノ

サンチャゴ巡礼路で巡礼者どうしが出会った際に交わす挨拶は、Buen Camino!(ブエン・カミーノ)と決まっています。 Caminoはスペイン語で「道」という意味。この道という言葉が指す範囲がとても幅広くて、いわゆる道路のみならず、人として生きる道といった抽象概念としての「道」や目に見えない道筋にも及ぶようです。

これって、日本語の「道」にも共通したところがあります。この辺りをまとめてみたことがありますので、よかったら「道との対話で、散歩はもっと楽しくなる」もご覧ください。

そして、Buenは「グッド」ですから、ブエン・カミーノで、「よい巡礼の旅を!」という意味。もはやスペイン語の枠を超越して、世界共通語になっているようです。
きっと、巡礼という共通の目的で歩く人同士がこの挨拶を交わす度に、仲間と励まし合いながら巡礼を続けているといった励みにもつながっているのでしょう。

残り100キロの掟

サンチャゴ・デ・コンポステラを目指す人は、途中の立寄り先でクレデンシャルと呼ばれる巡礼手帳にスタンプを押してもらいます。私たちにも馴染みの深い西国霊場札所めぐりの御朱印帳にも似ています。
宿泊施設や教会はもちろん、バル、レストラン、観光案内所にもスタンプがあって、立ち寄った先々でスタンプを集めていくのがスペイン流。

ゴールのサンティアゴ大聖堂で巡礼証明書を頂戴するためには、一日少なくとも1箇所、サンティアゴから100Km圏内(自転車の場合は200km)に入ったら一日2つ以上のスタンプを貰うことなど、等々、細かいルールがあるので注意しましょう。

巡礼手帳(クレデンシャル)押されたスタンプ

ホタテ貝の謎

巡礼路に沿って道標(モホンmojón)が建っていて、矢印と地名、そして例外なくホタテ貝のマークが付いています。
シンボルマークというにはバリエーションも豊富、これもラテン系の大らかさでしょうか。

ガリシア州へ入り、サンティアゴまでの距離も記されるようになると、いよいよ巡礼者の頭にもカウントダウンが始まります。

道標にはホタテのマーク

この巡礼は、ホタテの貝殻を身につける「お遍路スタイル」でも知られています。今はリュックに吊るすのが一般的ですが、30年くらい前までは首から下げていたそうです。

札所めぐりは同行二人と書かれた杖を片手に歩きますが、こうしたお約束のスタイルも巡礼あるあるなのかもしれません。

近年はリュック吊り下げが増えてきた

それにしても、何故ホタテなのでしょうか? ハマグリやアサリではきっとダメなのでしょうが、理由が知りたいですよね。

調べたところ、ヨーロッパでもホタテ貝は獲れるようで、ホタテの旺盛な繁殖力にあやかってとか諸説あるようです。
公式見解(NPO法人日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会HP)では、由来に関する記載は見当たりませんでした。

地の果ての岬

サンチャゴ大聖堂で巡礼証明書を受け取り、達成感もMAX!になるのもわかりますが、この巡礼にはまだ続きがあります。

ここからさらに西へ100キロ。フィステーラ岬こそ、この巡礼の最終目的地です。

フィステーラとはスペイン語で「地の果て」。
ここから大西洋を望む時、巡礼者はこれまでの無事を感謝し、艱難辛苦を振り返ると、深い感慨に身を沈めることになるでしょう。
今も、巡礼を終えた人がここで靴や衣服を燃やす習わしが残っています。

サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィステーラまでは別の巡礼証明書も発行されます。

画像:NPO法人日本カミーノ・デ・サンチャゴ協会HP

巡礼の道と世界遺産登録

神様がいる場所にご利益(最たるものは、生まれ変わり)を授かりに行く巡礼のための道は、わが国にも存在します。

熊野古道は、畿内各所から熊野本宮大社や高野山に参詣するための道でした。熊野詣は古くは後白河法皇の行幸や修験者の修行でしたが、江戸時代になると庶民の間でも流行しました。

歩きながら信仰と向き合う高い精神性と文化性が評価され、サンチャゴ巡礼路は1993年に、熊野古道は2004年に世界文化遺産に登録されました。

ホタテ貝と八咫烏

この二つ道の巡礼を達成すると、「二つの道の巡礼者(DUAL PILGRIM)」として登録することができます。
本物の共通巡礼者リスト(※英語版)はこちらからご覧ください。

古今東西、人は何を求めて巡礼の旅に出るのでしょうか。

きっと、お手軽なパワースポットめぐりとは違う何かがあるのだと思います。
それを探しに、この道を歩いてみたいと思います。交わす挨拶は、もちろんブエン・カミーノ!

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