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3分で読めるストーリー

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大人向けの短いストーリーを書き溜めていきたいと思います。
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#童話

天体をめぐる3つの短いストーリー

 第一夜、チョコとチョコを作る時の煙の話

ある日、煙男がバーに入ると「お前はダメだ」とマスターに入店を拒否された「なぜぼくはダメなので?」押し問答が続いたが、実はその隙に煙男とマスターとの間を しなる身体で進み行く者がいた 黒猫だった。

マスターは応える代わりにミントのチョコを二つ三つ煙男に渡して追い払うと ドアをパタンと閉めてしまった 煙男はくさくさした気分でチョコを一気に頬張った

すると

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もぐらとことり

もぐらとことり

 ある大きな街に、もぐらくんと小鳥さんが住んでいました。二人は毎朝あいさつをするのが日課です。

 小鳥さんはいつも、大きな大きな鳥の話を聞かせます。
 もぐらくんも毎日、それはそれは大きなもぐらの話を聞かせます。
 話が終わると、もぐらくんは地下へ、小鳥さんは公園の木へとんで行きました。

 あるとき、小鳥さんは大きな鳥について行こうと思いました。
 ごおお……と大きな鳥は勢いよくやってきました

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風の劇場

風の劇場

ぼくが窓を開けました。すると、そこは野原ではなく、小さな暗い部屋があるのみでした。

「どこへいってしまったんだろう、あの花の咲く野原は」

ぼくはひとりごとを言いました。そこにあったはずのみどりいろのやわらかい草でおいしげったやさしい野原が、窓の外にあるのが、いつもの景色だったのですから。

そのとき、窓の向こうにあらわれた暗い部屋に、ぽっと灯りがともりました。よく見てみると、ちいさい舞台にビロ

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おとぎの国

おとぎの国

 ある国のある森のおくに、古びた塔がたっていました。近くの村の人びとは、その塔には花のようにかわいいお姫さまがとらわれているだとか、魔女が薬を作っているだとか、好き好きにうわさしあっていました。しかし、その塔にのぼって真実をたしかめた者はだれ一人としていませんでした。

 あるとき、その村に、都会からきょうだいがひっこしてきました。お父さん、お母さん、それからお姉さんのアナベル、弟のサンベルの四人

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野原のちいさな物語り

野原のちいさな物語り

 広大な野原に、十字の形をした墓標が、何千、何百と立ち並んでおりました。墓標といってもそれは立派なものではなく、もともと海辺に流れついた流木であったり、壊れた船の柱であったりしました。しかし年月が経つにつれ、雨風に傷んで弱く、もろくなってゆきました。

 春のことです。
 ひとつの白い木でできた墓標の前に、舞い降りてきたものがありました。それは、花が咲き乱れる野原を夢見ていた綿毛です。白い半透明の

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ぼくの旅

(1)

かつて、名のある音楽家が住んでいたという、古い街にたどり着いた。

ぼくは旅が慣れてきたばかりだったので、ある程度見当をつけて、言い伝えや歴史がある街を選んで滞在していた。旅を始めたばかりの頃は安全を重視していたが、そのつまらなさに気付いてからのことだ。
そういう街には何かしら不思議な力があると思っているので、できればそんなことも体験してみたい。そんな思惑も少なからずあった。

昼前に街

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