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財前ぜんざい@オリジナル小説
2018年1月29日 22:40
彼らはまるで嵐のようだった。こんなエネルギーを間近で感じたのは久しぶりだったため、どっと疲れが襲ってきた。あれが若さというものなのか。 ふと冷静になった私は、「食糧は多くない」という、先ほどの雅臣の言葉を思い出した。彼らは貧乏だと言っていた。どの程度なのかは分からないが、こんな広いマンションに住んでいるのだから、それほど苦しいわけでもないのだろう。 いや、この部屋を借りるために、彼ら
2018年1月25日 22:50
亜理の喜ぶ様子を見ていた晃は、彼女の洋服の裾を軽く引っ張った。 「亜理、目的だった資料は渡せたの?」 そうだ。彼らが来たのは、雅臣の忘れた資料を届けることだったように思う。結果的には雅臣のものではなかったが。 「雅臣の資料だと思ったやつ、ただの余りだったんだって」「なんだ、そうだったの」 晃は「それなら」と呟くと、私へ一瞬目を向け、亜理の手をつかみ「そろそろ失礼しよ
2018年1月21日 17:12
「あ! 紅羽ちゃん! 遊びに来たんだ!」 リビングへと足を踏み入れて声をかけてきたのは清水だった。その清水の声に、別な部屋から圭が「嘘!? 紅羽来てるの!?」と声を上げて出てきた。Tシャツに短パンという圭の格好を見ると、どうやら昼寝をしようとしていたらしい。「お邪魔しています」 亜里に手を握られたまま挨拶をした時、ソファーに見たことのない人影があることに気が付いた。いや、清水に声をかけら
2018年1月15日 22:01
「亜理、お前なんでここにいるんだ?」 ドアを開けた赤い髪の彼女に、雅臣は尋ねた。彼は明らかに動揺していた。いつもより早いその話し方が、物語っている。赤い髪を二つに結った彼女は、私よりもが小柄だったが、気の強そうな大きい瞳が、身体の小ささを補って堂々として見えた。「何でって、おみおみが今日の会議の資料、本部に置き忘れてたから持ってきてあげたの」 腕を組み、私の隣にいる雅臣を見上げながら