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「ANBAI」のストレス計測の仕組みは? 自律神経データからわかるあれこれ

株式会社DUMSCOが提供するストレス計測・セルフコンディショニングアプリ「ANBAI」
スマホのカメラを使ってストレスを測定・客観的に可視化でき、日々の自律神経の状態を改善できるプログラムを提供しています。

スマホさえあれば誰でも簡単にその日の心身のコンディションが測れるのですが、それってどういう仕組みなの?
今回は「ANBAI」のストレス測定の原理と、取得したデータからわかることについて解説します!

「ANBAI」のストレス計測の仕組み

ストレス反応を含め体の様々な臓器をコントロールしている「自律神経」の活動状態を測ることで、ストレスの状態を推定することが可能と考えられています。

自律神経は大きく「交感神経」と「副交感神経」に分類されます。ストレスを感じる「闘争や逃走(fight-or-flight)」の時には、「交感神経」の活動が活発になり、心拍数の増大や血圧の上昇などが起きます。

逆にストレスから体を回復させる「安静と消化 (rest-and-digest)」時には、「副交感神経」が活発に活動しています。

交感神経と副交感神経

この自律神経の状態を測る方法として世界的に最も一般的に用いられる手法の一つが、心電図や脈波計測によって得られた心拍の間隔の変化を分析する「心拍変動解析(HRV)」とよばれるもので、ANBAIもその手法を使っています。

HRV(心拍変動解析)=ストレスによる心拍のゆらぎを分析するしくみ

交感神経と副交感神経は、それぞれ心拍数を上げる役割と下げる役割があり、心臓を自動車に例えるとアクセルとブレーキのような役割になっています。
交感神経と副交感神経はつねに活動しており、それぞれがアクセルとブレーキになって心拍数をある程度一定に保つような仕組みになっています。
しかし、交感神経と副交感神経のバランスは外部のストレスなどに応じて刻一刻と変わるため、心拍数がぴったり一定のリズムになることはなく、実際には多少のゆらぎがあることが知られています。

自動車で高速道路を走るときも、だいたい平均すると時速100キロで走っていたとしても、実際にはアクセルやブレーキをこまめに踏んでいるので、瞬間的に105キロになったり90キロになったりを繰り返していますよね。
それと同じ現象が心臓にも起きているのです。

交感神経と副交感神経はアクセルとブレーキのようなもの

このように、この心拍間隔の変動は、裏を返せば交感神経と副交感神経がどれくらい活動しているのかを反映されているため、心拍変動を分析することで交感神経と副交感神経の活動状態を測ることができると考えられるようになり、この手法を心拍変動解析(Heart Rate Variability: HRV)と呼ぶようになりました。

HRVは、1960年代には旧ソ連の宇宙開発プロジェクトで宇宙飛行士のストレスなどを測るために活用されはじめ、1996年にはヨーロッパ心臓病学会を中心としたタスクフォースが、HRVに関するガイドラインを発表。心拍変動解析の普及がさらに加速しました。
現在では、医学分野にとどまらず、人間工学、スポーツ科学などにも広く応用されるようになってきています。

自律神経計測データからわかるあれこれ

ANBAIがHRVを用いて計測した自律神経データからはさまざまな情報が読み取れ、ストレスを計測するだけにとどまらない価値があります。

例えば、全ANBAIユーザーの時間帯ごとのエネルギーレベル(ストレス度合いを指標化したもの)を見てみましょう。
※エネルギーレベルとは自律神経の活動量を数値化したもので、数値が高いほどストレスが溜まっていない、良い状態ということです。

朝から夜にかけて数値が下がっているのがわかりますね。自律神経は同じ1日の間でも一定ではなく、朝起きてから昼間に活発になり、夜寝る時間に近づくにつれ休みモードに入っていくのが反映されています。
また昼食を食べる12時以降、夕食を食べる18時以降はエネルギーレベルが低下傾向にあることがわかります。食事後は副交感神経が優位になり、消化が活発になっていることが数値に表れていますね。

また、年代別の平均エネルギーレベルを見てみるとこんな感じ。

年齢を重ねるごとに少しずつ低下していることがわかります。
人生100年時代と言われる昨今、年を重ねても長く働く必要があったり、精力的に活動することが理想とされるなかで、自律神経の調子も高く保つことが求められるようになるかもしれません。このデータはそういった領域へのヒントにもなり得ます。

続いて、睡眠時間とエネルギーレベルの相関を見てみましょう。
ANBAIでは毎日の計測時に睡眠時間と起床時間を入力するため、ユーザーの睡眠時間データも取得できます。

睡眠時間が長いほど平均エネルギーレベルが高いことがわかります。睡眠中は、休息を司る副交感神経が優位になり体と心を休めることができるため、自律神経を整えるうえでよく眠ることは不可欠です。

年齢や睡眠時間以外にも、例えば体調不良時は自律神経の値が下がるためANBAIの数値にも反映される傾向があります。
体調不良の度合いを客観的に数値化できることは、企業による社員の健康管理や、医療現場への活用、遠方に住む家族の見守りなど、さまざまな分野への活用が期待できます。

ANBAIは2023年現在はtoB向けのみの展開ですが、toC向けのプロダクト開発も着々と進んでいます。自律神経の計測とそのデータという大きなポテンシャルを持つDUMSCOの事業について、今後も発信していきます!

参考文献
Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology. Heart rate variability. Standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use. Circulation 1996; 93:1043-1065
BERNTSON G. G.(1997) Heart Rate Variability : Origins, Methods, and Interpretive Caveats.Psychophysiology 34, 623-648
Ohio State University, Columbus, OH, USA, University of Oulu, Finland: George E. Billman, Heart Rate Variability – A Historical Perspective, Front Physiol. 2011; 2: 86.doi: 10.3389/fphys.2011.00086.
林博史(編),心拍変動の臨床応用-生理的意義, 病態評価, 予後予測-,医学書院, 1999
NHKスペシャル取材班(著),キラーストレス 心と体をどう守るか,NHK出版新書, 2016


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