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2拠点生活のススメ|第69回|万年筆のススメ

パソコンを使うようになって、字を書くという行為そのものが減ってきた。仕事の打合せもみんなノートパソコンを開いているし、スケジュールもスマホ。

もう筆箱でさえ、いらないなんて思っていたけれど、モーニングページを始めるようになって、改めて書くという行為が楽しくなってきた。

その大きな理由は、万年筆を使い始めたこと。(経緯は過去記事↓にて)

紙にインクが滲みていく感じや、紙の上を滑っていくような感覚、カリカリと文字とともに聞こえてくる音、そんなすべてが心地よく。すっかり虜になってしまった

ずっと使っていたkakunoという初心者向けの万年筆から、金ペンと呼ばれる本格的な万年筆へとグレードアップして、嬉しくて何もかもが最高なんて思っていたのだが、残念ながら最高という気持ちに翳りを感じるようになってしまった。


違和感の正体

万年筆の胴部分が、より太くなり握り心地が変わったこと。角張った胴から丸まった胴に変わったことで、ペンを挟む右手の親指と人差し指の収まり具合も違い、長文を書いていると手が疲れてしまう。

また、ペン先が鉄から金へと変化したことで、ペン先のしなり具合も変わり、よりなめらかに書けるはずなのに、思っていたほどの変化を感じないという歯がゆさもあった。

人間の心理というのは勝手なもので高価な物を買ったのだから、使ってみての満足感が比例しないと、妙な歯がゆさを感じてしまう。

そんな歯がゆさを携えながらも、毎朝文字を書き続けて1週間。ふとある思いが頭に浮かんだ。

ひょっとして、自分の書き方に問題があるのでは無いか?

ずっと使ってきた初心者用の万年筆に慣れすぎていて、その万年筆が一番いい感じで書ける力の入れ具合だったり、筆記角度(ペン先を寝かす・起こす)といったものが身についてしまっていたのだ。

ボールペンなら、どう書こうが書き味に大差がないし、誰が書いても同じように書けるのが当たり前だが、万年筆はそうはいかない。

どう書こうが、誰が使おうが、同じようになる。その考え自体が間違っていた。簡単・便利に慣れすぎると、人は知らぬ間に傲慢になるものらしい。

お習字するときの筆をイメージしてもらうと分かりやすいと思うのだが、持ち方や筆さばきなど、筆には筆の使い方があるということ。

そこで、どうすれば万年筆ならでは書き味を満喫できるのか、考えてみた。なぜ万年筆はなめらかに書けると言われているのか。

・・・・・

その答えはとても単純明快、力を入れる必要が無いということ。

なぜ文豪と言われる人たちが万年筆を使ってきたのか、それは何もカッコの問題では無く、圧倒的にラクだから、ようはカラダへの負担が少ないということ。

ペンを握る力を抜いて、筆圧もかけない。ノートを柔らかく撫でるようにペンを走らせる。ただそれだけで、驚くほどペンが滑らかに滑り始めた。まるで氷上の浅田真央ちゃんのような華麗さ。

握りや指の収まり具合の違和感も、どこかに吹き飛んでしまった。

違和感と疲れの原因は、力が入りすぎていた、ただそれだけのことだった。

まさに目からウロコとはこのことで、力を抜くことでインクの消費量まで随分減った気がする。例えは悪いが、高級フレンチで料理に合ったナイフとフォークの選択を知らずに、ずっと食べにくいと言っていたようなものだったんだな。


書くと打つの違い

万年筆を使っていて、もうひとつ気づいた事がある。

書くという行為と、パソコンに字を打ち込む行為では、頭の使い方が大きく異なるということ。

パソコンの良さは、思いついたことを気にせずドンドン書き連ねていき、読み返しながら、削ったり、文章を前後させたりといった、発想をまとめていく作業に向いている。

一方、書く行為は、ある程度書くことを頭の中で整理しながら、順を追って行うため、書くことと整理することを同時に行っている。モーニングページを書くようになって戸惑いを感じたのは、まさにそれが原因で、最初の頃は、とても時間が掛かっていたのも、今思えばうなずける。

手書きするのと、パソコンするのでは、脳の活性化にも大きな違いがあるという。

文字を書くとき、文字そのものを思い出し、書くスペースを意識して指先に集中しながら1文字1文字を完成させる作業は、運動神経と連動しつつ、脳のさまざまな機能を働かせる。つまり文字を書くという行為には、脳をフル稼働させる効果があるということらしい。 

一方で、パソコンやスマホに文字を打ち込むときは、指先は決まった法則に従って動かせばいいだけなので、脳はあまり働かない。

「手で書く」ということには、デジタルには及びもつかない深い脳の活動が関係している、認知症防止などで、書く事が推奨されているのも納得できる話だ。


万年筆で拡がる書くことの楽しさ

万年筆は、それ自体が嗜好品。スケルトンのものや、蒔絵が施されたものなど、装飾性も高く、持つこと、使うことに愛着を感じるもの。まさにいい万年筆は一生ものだし、かけがえのない相棒になる。

窓から差し込む光に反射するペン先を追っていると、書くという行為に、特別な高揚感が生まれる。書いている自分はいつもと一緒でも、アウトプットする思考は自ずと高まる気がする。

自分の思いを委ねるものだから、インクボトルからインクを補充する、ペン先を洗浄するといった手間さえも愛おしい。

机の上にインクボトルがあるだけで、文豪気分になれる(笑)

万年筆で書かれた文字には、その人の個性があらわれる。

だから言葉より先に強い想いが伝わる。

デジタルでは逆立ちしてもかなわない独特の世界があり、喜びがあるのだ。


今時の万年筆事情

最近はお手頃でカッコイイ万年筆もいっぱいある。これは台湾のTWSBIというメーカーのもの。万年筆好きの人が集まって開発した製品らしく、品質も抜群らしい。

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さらにインクも進化して、カラフルな物も多彩。メーカーによっては日本古来の色なんていうものも揃えていたりする。

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そして、ペン先もサイズもいろいろ、太字になるほど、習字の留めや払いの表現も自由自在。これも万年筆ならでは楽しみでもある。

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1本ぐらい持っておいて損はないと思う。あなたの思考を変えてくれるキッカケになるかも。

万年筆、オススメです!

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