見出し画像

高血圧の予防医学② 内服薬どうする?


前回の記事では高血圧の分類、治療目標値、期間等について話しました。

https://note.com/drheart/n/n4f9a3ceb86aa

↑力作なので、ぜひ見てください!!無料です!!


今回は、内服薬で治療する場合何を用いるべきか?について話します。



降圧薬の種類は?


ご自身で降圧薬を内服されている方々、知り合いの高血圧の方と内服薬が違うことがありませんか?

降圧薬にはいくつか種類があります。
有名なものとしては

➀Ca拮抗薬(アムロジピン、アダラート、ワソラン、コニール等)
 ⇒血管拡張作用(+房室結節の伝導抑制を持つ)に特化

ACE阻害薬(レニベース等)
②'アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
(ディオバン、オルメテック、アジルバ、ニューロタン、ブロプレス等)
②''ARB/ネプリライシン阻害薬(ARNI)
 ⇒
腎臓の輸出細動脈を締める作用を持つアルドステロンが反応する経路を潰す

③ミネラルコルチコイド阻害薬(MRA)
(スピロノラクトン、セララ、ミネブロ等)    
 ⇒
アルドステロン自体が産生されないようにする

④利尿薬(フロセミド、ダイアート、トラセミド等)
 ⇒血管内の水を減らす

⑤β遮断薬(アーチスト、メインテート、インデラル等)
 ⇒
心臓を刺激する作用を持つβ受容性を抑制する

他にもありますが、メインとして使用されるのはこのあたりでしょう。
さて、なぜ内服薬が人によって異なるのでしょうか?

ざっくり言うと、
【1】血圧を下げるだけでいいのか?
【2】血圧が上がっている原因は?
【3】どれくらい降圧する必要があるのか?

これらを考えて内服薬を決めます。


【1】血圧を下げるだけでいいのか?


要は、血圧以外に問題がないか?ということです。


特に若年者の高血圧では、罹患してからの期間が比較的短いため、臓器の異常が出ていないことがほとんどです。そのため、心電図や胸部レントゲン等も確認して問題なければ、ただ血圧を下げればいいだけであることが多いです。

その場合は、安価で使用経験も多く、非専門医でも扱いやすいCa拮抗薬を使用することが多いのではないでしょうか?
特にアムロジピン(ノルバスク)やアダラートは一日1回で済み、かつ単剤で20-30mmHg程度降圧することも可能なため、好んで使用されやすい傾向にあります。

当然、他の臓器の異常があっても単剤で使用されたり、併用される場合もあります。


一方、高血圧性腎障害や高血圧性心筋症等のように、腎機能や心不全を生じている場合はどうでしょうか?
この場合には、降圧効果+臓器保護効果が期待できるものを使用した方がいい場合もあります。降圧自体も臓器保護に繋がりますけどね。

例えば腎臓への負担が大きくなって蛋白尿が漏れている場合はACE阻害薬やARBが第一選択になります。
心不全を発症している場合は、心機能次第で適応になり得る薬剤が変わります。足や顔が浮腫んで息が切れている人は、体の水分が多い状態になっていると予想されるため、利尿薬の方がいいかもしれません。




【2】血圧が上がっている原因は?


血圧が上がる原因として、特に理由がないことを本態性高血圧と呼びます。
多くの高血圧は本態性高血圧に該当します。
ですが、10人に1人の割合で「二次性高血圧」、すなわち血圧を上げる疾患が背景に隠れていると言われています。

上の血圧が200mmHgを超える等異常に血圧が高かったり、降圧薬を複数使用してもやたらと降圧効果が弱い時に疑います。

その中でも最も多いのが原発性アルドステロン血症。

・・・アルドステロン、上でも出てきましたね。

腎臓の真上に副腎というホルモンを産生する主要臓器があるのですが、ここから分泌されるアルドステロンが異常に分泌される疾患です。
他の理由でCTを撮影した際に偶然腫瘍が見つかったり、上記の通り異常高血圧でみつかったりします。

詳細は省きますが、他にも睡眠時無呼吸症候群(いびきを掻く)、腎動脈狭窄症、甲状腺機能亢進症等も二次性高血圧に該当します。

これら二次性高血圧は通常の降圧薬では効果が乏しいことも多く、その疾患に合わせた治療が必要になります。
適切な治療を受けてもなかなか高血圧が改善しない場合は、循環器内科の専門医の受診を受けた方がいいと思います。
しっかりと鑑別をすることが大事ですね。




【3】降圧効果の違いは?


もちろん同じ分類の内服薬でも、物によって降圧効果は異なります。
ただ、概ね

Ca拮抗薬 = ARNI > ARB   > MRA  = 利尿薬 >ACE阻害薬

だと思っています(溢水、つまり体液量が多すぎて高血圧の場合、利尿薬はもう少し上にランクインするかも)。

例えば高血圧以外に特別問題がなく、生活指導等では十分に血圧が下がらない患者さんの場合。


160/110mmHgくらいであれば、私ならCa拮抗薬1剤でのコントロールを目指します。ただ180/130mmHgくらいであれば、ひとまずCa拮抗薬を導入して最大量まで増量、それでも恐らく不十分なためARBを導入します。Ca拮抗薬はARBとの合剤があるため、この2剤である程度コントロールできることが分かれば早々に合剤に切り替えます。

それでもダメな場合MRAや利尿薬を併用し、二次性高血圧の可能性を疑い精査を開始します。




今回は文章が多めでした。
読みづらかったりしたら、コメントを頂ければ幸いです。修正します。
次は糖尿病やコレステロールあたりについての記事を書いていきます。

次回もお楽しみに!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?