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冬と春の間みたいな、味。




新年の七草粥。僕は、この行事食が好きだった。今年は、85歳の祖母と60代の両親ズにこれを作って与えた。冬のひもじい大地で、青々とした貴重な生葉を摘んできて、作る粥。なんだか呪術的な感じがしていい。

実際、味も清涼で美味だ。僕の庭で採れた、春菊のベビーリーフも飾りに載せて食した。美味い。旨すぎる。冬と春の間のような味がする。

この、僕の大好きなこの行事食にまつわる、古い古い物語がある。今日はそれについて書こうと思う。


ウィキペディア先生によれば、御伽草子の本の中に、「大しう」という親孝行な若者のお話があるらしい。


高齢で、ままならない両親を哀れに思った大しうは、山に入り、自らが行う21日間もの苦行で祈願をかけていた。

「俺の寿命を両親に分け与えてもいい、親父とお袋をちょっとでいいから若返らせて」と。

それを天から見ていた帝釈天は、大しうにお告げを与えた。
「貴様は親孝行な心を持っている。よし、いいだろう。お前の祈りに応えて、教えてやろう。須弥山の南に住む齢8000年の白鵞鳥の秘術を。」


”毎年春のはじめに七種の草を食べよ。
1月6日までに7種類の草の集めておく。

それを時間通りに、柳で作った器に種を載せ、玉椿の枝で叩く。


酉の刻から芹
戌の刻から薺
亥の刻から御形
子の刻から田平子
丑の刻から仏座
寅の刻から菘
卯の刻から清白
辰の刻からこれらの種を合わせ、

東から清水を汲んできて、これを煮て食べよ。”

「一口食べれば10歳、七口で70歳若返る。いつまでも、両親と共に仲良く暮らしてゆけ。」


大しうが、お告げの通りにそれを行い、両親に食わせると
たちまち両親ズは若返って元気になったそうだ。

ウィキペディアによれば、このお話は

七草の由来とともに、ここでは親孝行の功徳を説いた話だったらしい。

僕の両親にも、その物語を語ってきかせながら食べさせた。

食事は、「食べるストーリー」だと、僕は思っている。物語を味わい、味はより旨味を増す。

両親ズが食したのは、ただの冬の青葉ではなく、子供の祈りそのものだったのかもしれない。

「大しうは、きっとそれから何万回も、両親に七草粥を作っただろうな。寿命が延びに延びて、多分今年もまたどうせ両親ズに七草粥を作って食わせているんだろうよ。」と、僕は思った。

七草粥は上手い。何回食べても飽きないだろう。


2020年1月7日 ppp

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