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ppp(スリーピー) ◆イメージ喫茶「蜃気楼」にて 短編アニメーション公開中

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マガジン

  • 2021 ショートテキスト

最近の記事

村上春樹の楽譜

最近、声を出していない。 PCの作業が増えて、ほとんど人とも会わずにやれる仕事に従事しているせい。 別段、自分の声が好きでな訳でもないので 困ったことって訳ではないのだけれど、 ギターの練習をする際、弾き語りする時に「声がコントロールしづらくなってて」やや、練習に難儀する。「最近、あまり声を発していないかも」と 気づいたのはその時だった。 ギターを練習するのも歌うのも、「人と喋りたくないから、代わりに発散できるものを何か」という目的で、2020年のコロナ自粛を機に始

    • バースデーに100万円貰った話

      100万円の束をポケットに入れて、しっかり手に掴んだまま東京の街を歩く。今日は僕の誕生日。「こんな日が来るなんてな・・・」夢にも思わなかった。杉並区の安っぽいガラクタなんてなんでも買える。このままハワイにだって行ける。「なんでもできる。」何しよう? とりあえず、僕はよくモノを無くす名人なので、銀行の口座に100万円は預けた。身軽になった体で、下北沢の街を歩く。 いつもは、金が無いのであまり探索しないのだけど 今日は金がある。一杯、コーヒー飲んだくらいじゃびくともしない諭吉

      • 喫茶店のLOWS「正解の店」

        「”悪い記憶のフラッシュバック”に、多くの人は囚われている。しかし、その負の記憶の多くは一個のチョコレートや、一杯のコーヒーで祓うことができることを多くの人が知らない。逆に、”忘れていた楽しい記憶”を思い出す為に必要な行動は、食べ物ではなくて(自分に偽りない、誠実な選択をする)ことだ。正しい選択を、自分がしたのかどうかを知る為には、”楽しい記憶が蘇ったかどうか”を確認すればいい。」 喫茶店の店主、メロウさんがそう言った。 僕は、この店主の店の常連だ。 メロウさんの淹れる

        • アウトサイド新成人

          好きなように生きる、ってずーっと思い続けてる気がする。大人になるのを待ってた気がする。 20歳の成人式には、行かなかった。それは全然自由じゃないだろ、と感じたからだ。 僕は大人になるのを待ちわびていた子供だった。 大人になれば、自由が手にはいる。 成人するということは、僕にとって自由への門出のイメージだった。 しかし、肝心の成人式ときたら、、、。 毎年毎年、なんて情けない絵面。 申し訳ないけど、その日だけのきらびやかな着物着るとか、量産品にしか見えない。 自分は、自

        村上春樹の楽譜

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        • 2021 ショートテキスト
          11本

        記事

          この時雨の中で、静寂は鳴り止まない。

          車をスーパーのガラガラの駐車場に停めて、近くの本屋まで、普段着のまま、一キロくらいの軽いランニングをする。 今年もまた、東京の対コロナの緊急事態宣言を受けて、栃木県も自粛モードに入っているのか、 はてまたそもそも人が少ない土地なのか、僕にはわからないが 夕方だというのに歩道には人っ子一人居なかった。僕が栃木県に住み始めたのは、2020年の2月からだ。その時既にコロナが出現していたので、 僕は栃木県の人の密度の日常的平均値を、知らない。 じっと街の動きを観察していると、どう

          この時雨の中で、静寂は鳴り止まない。

          エスケープ、その味はメロウ。

          自分への集中力が切れかけていた。掴みかけたイメージは、まるでエベレスト山のように、大量の課題を僕の面前に突きつけてきた。細切れになった世界をつなぎ合わせるためには、特殊な「イメージの接着剤」が必要だった。この文章を書いている僕は、「自分のことを書いている」という行為自体に眩暈がするので、「脳内の仮想のキャラクター」である”メロウ”を召喚して、代筆してもらう事にした。 メロウは、喫茶店の若いマスターだ。喫茶店の店名は『LOWS(ロウズ)』。数名のアルバイトスタッフを抱えて運営

          エスケープ、その味はメロウ。

          冬と春の間みたいな、味。

          新年の七草粥。僕は、この行事食が好きだった。今年は、85歳の祖母と60代の両親ズにこれを作って与えた。冬のひもじい大地で、青々とした貴重な生葉を摘んできて、作る粥。なんだか呪術的な感じがしていい。 実際、味も清涼で美味だ。僕の庭で採れた、春菊のベビーリーフも飾りに載せて食した。美味い。旨すぎる。冬と春の間のような味がする。 この、僕の大好きなこの行事食にまつわる、古い古い物語がある。今日はそれについて書こうと思う。 ウィキペディア先生によれば、御伽草子の本の中に、「大し

          冬と春の間みたいな、味。

          ストリートアートはメルカリの彼方

          僕は唐突に、エッセイ本を作って売った。販売ルートは、メルカリ。セブンイレブンでモノクロコピーしたA5のペラい紙を、ホチキスで中綴じ製本して、転売する本にオマケとしてつけた。「オマケがつくので、定価より高い値段で販売します」と言い訳も書いて。エッセイ本の内容は、メルカリで転売する本の感想。つまり、自分の感想本をつけて、とある本をメルカリで売ったのだった。 人気本の転売だったからすぐに買い手がついた。買った人から、取引プラットフォームでメッセージが来る。 「エッセイ本も、楽し

          ストリートアートはメルカリの彼方

          静止した時間は、より一層透明だ。

          太陽が西から東へ、回るようになった事を 一体気づいている人はどれくらいいるのだろう? 明日に進めない感覚に、違和感を覚えたら 空をよく観察してみるといい。 悲しいのは、 友達と喧嘩したからじゃなくて コロナが恐いからでもなくて 太陽系から95555788光年離れた銀河の b wkian3衛星が消失したからだ と分かる。 まるで蟻が、観察している僕らを全く気にかけないのと同じように、 僕らも、見えない銀河のことなんてお構い無しだ。 ある星は、ガラスの破片が時速200

          静止した時間は、より一層透明だ。

          令和ちゃん

          にせんにじゅういちねんいちがつみっか。 今日は、令和が始まってから613日目。 僕は 休館している美術館の駐車場に車を停めて、 缶コーヒーを飲みながら 車内で暖をとっている。 「令和のトピックス」を思いだそうとしている。 僕の脳内メモリにある情報は、 「暑すぎる夏と短すぎる秋」 「皇位継承の日の虹」 「台風19号と八ッ場ダムの初陣」 「コロナウィルス大流行とソーシャルディスタンス」くらい。 最近では 「宇宙探査機はやぶさの地球帰還」 「鬼滅の刃の快進撃」。 令和

          令和ちゃん

          安眠チョコレート

          「ここは、誰もいない国」 淡い光だけが、他の星から旅行でやって来て 電灯だった所にとまる。 遠い昔、まだ僕が生きていたころに めいっこがベッドの、僕の枕元に チョコレートを置いてくれた事がある。 チョコレートを食べないで、香りだけを ゆっくり嗅いだことは無かったから知らなかったけど チョコレートは、とても香りが良い。 バニラとはちがう、仄かで控えめな甘い香り。 安眠できる気がして、 それからずっと、枕元には チョコレートを置いて眠るようになった。 悪い夢を見

          安眠チョコレート

          「いろはを数える時は登って。」

          弱虫ペダルの、手嶋純太が初夢に出てきた。 純太は、凡人。努力で登る、自転車競技のクライマーだ。 彼が出てきたということは、 「今年はコツコツと、誤魔化しの効かない努力を積み重ねろ」というお告げなんだと解釈して 勝手に今年の抱負を「人より努力する」にした。 単純で当たり前の物事を、ちゃんとやる という、前提が危ぶまれ続けた2020年の悪夢は ようやく終わった。(年の区切りで、終わった気になりたいだけだけど) 去年はTwitterに非常に救われた。 ストレスを全て書

          「いろはを数える時は登って。」