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コロナウイルスが腸内細菌に与える影響を調べたら、コロナウイルスの厄介さが見えてきた

こんにちは😊
消化器専門医 Dr. Sです。

本日も3分note✏️
コロナウイルス感染が腸内細菌に与える影響について調べてみたら、
その厄介さが垣間見えてきました。

コロナウイルス感染の影響は肺のみならず

コロナウイルスは感染すると、
肺炎症状のみならず様々な臓器に影響を及ぼします。
もちろん、腸もそのひとつ。

肺炎症状の裏に隠れがちですが、
腸でもコロナウイルスは猛威を奮っています!

有害な日和見菌が増え、体に優しい共生菌が減る

ある研究では、15人の入院中のコロナウイルス感染者を対象として
腸内細菌を調べ、健常者および市中肺炎の患者と比較しました。

(Zou T, et al. Alteration in Gut Microbiota of Patients With COVID-19 During Time of Hospitalization. Gastroenterology 2020)

すると、コロナウイルス感染者では
・体に有害な日和見菌(クロストリジウム属、バクテロイデス属など)が増える
・体に優しい共生菌(酪酸を産生するRoseburiaなど)が減る

ことが示されました。

加えて、この影響はコロナウイルス感染が落ち着いた後にも
遷延する
ことが示されました。

重症度が上がるに連れて炎症を抑える菌が減る

次に、呼吸器症状をもとに患者を軽症、中等症、重症、致死的と分けたところ、
重症度に比例して抗炎症作用を持つ細菌(Faecalibacterium prausnitzii)が
減少している
ことが示されました。

ウイルス量が増えるに連れて抗ウイルス作用を持つ細菌が減る

最後に、コロナウイルス量と腸内細菌の関係を調べました。

ここでひとつ予備知識ですが、
コロナウイルスはAngiotensin converting enzyme 2 (ACE-2)というレセプターと結合して細胞内に取り込まれることが分かっており、
ACE-2は肺や腸、目など全身の細胞に発現しています。

この研究では、コロナウイルスの量が増えるにつれ、
ACE-2を脱活性化するウイルス群(Bacteroides群)が減少している
ことが示されました。
つまり、コロナウイルスが自分に邪魔な菌を排除し、
自らウイルスの量を増やそうとしている
ことが分かります。

コロナウイルスは全身に影響し、ウイルス除去後もその影響は持続する

ご理解頂けましたでしょうか?

まとめますと、
・コロナウイルスの影響は肺だけでなく全身に及ぶ
・ウイルス除去後もその影響は遷延する
・一部ではウイルスが自分自身の感染の勢いを活発化させるシステムを持つ可能性がある

ということです。

これはひとつの臓器に関する、ひとつの報告例に過ぎません。
今後示されるであろう様々な報告が、感染者の予後を少しでも改善する
きっかけになるように、祈る次第です。

本日は以上です。
ご一読頂き、ありがとうございました😊

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