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【意味がわかると怖い話・38】兄との再会

20年ぶりに兄と再会した。
俺の記憶にある兄の風貌からは、かなり変わってしまってはいたが、面影はそのままに……これは間違いなく兄だ。

兄は若い頃から家族や人に迷惑をかけてばかりだった。
最後は人を殺す大罪にまで手をかけ収監された。
誰も兄に同情する者などいない。
もちろん俺もだ。
あんな奴、兄だと思いたくもない。
自業自得だ!!

俺もそう思ってはいたが、いざ兄を前にして涙があふれた。

クズでどうしょうもない兄ではあったが幼少期の俺にとっては優しく良い兄だった。
俺がいじめられた時、兄は相手をぼこぼこにした。
なかなか家に帰ってくることのない兄だったが、家に帰ってきた時にはいつもおもちゃだったりお菓子だったりと俺に土産をくれた。
どんなにクズで凶悪な人間であったとしても、俺にとっては確かに優しい兄だったのだ。

突如として泣き始めた俺に気づいた周りの人々が避けるように通り過ぎていく。

列をなし展示された物を見る人の流れがゆがむ。

俺はそれでも兄から離れられず久方ぶりの再会にただただ涙を流した。

【ネタバレ】
男が兄と再会したのは人体の不思議展であった。
人体の不思議展とは過去何度か開催された展覧会である。
そこでは実際の人体を特殊な加工をすることで標本化した物を展示していた。
しかしその標本の出所が人権や論理的に疑わしいものが多くあるとのことで今では開催されなくなっている。
噂では中国の犯罪者を人体標本として利用しているとのことである。

男の兄は死刑となったあと、標本とされた。
彼は珍しい頭蓋骨の疾患を持っており額から鬼の角のように骨が飛び出していたのだ。

男はその人体標本を見て兄であると確信したのである。


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