医師の過労死?労働基準法は本当に守られているのか。
今回は、医師の勤務時間と、労働基準法についてお話します。
まず、労働基準法(2020年12月時点)の概要を説明します。
・労働時間は、1日8時間以内、1週間40時間以内(休憩時間を除く)
・毎週最低1日、毎月最低4日の休日の付与
・時間外及び休日労働は、使用者による労使協定(36協定)の労働基準監督署への提出が必要
・法定時間外労働の給与は、1時間当たりの賃金×1.25
・休日労働の給与は、1時間当たりの賃金×1.35
・深夜労働の給与は、1時間当たりの賃金×1.25%
これを踏まえて、とある若手医師(内科)の、週間勤務スケジュールを例示します。
彼の常勤A病院は、定時が平日9~17時、土曜日は9~12時半、宿直は17~9時です。またA病院の人事で、アルバイトとしてB病院にも勤務しています。
月:A病院 9時出勤 19時退勤
火:A病院 9時出勤 A病院宿直
水:A病院 宿直明け A病院9時出勤 17時退勤 B病院宿直
木:B病院宿直明け B病院9時出勤 17時退勤
金:A病院 9時出勤 18時退勤
土:9時出勤 14時退勤
法廷時間外労働手当、深夜手当なしです。
かなり過酷な労働です。
彼は、宿直中に救急外来の患者様を対応し、2~3時間睡眠で次の日もフルタイムで働くことが、本当に体力的に厳しいと言っていました。
では、A病院は労働基準法に違反しているのか。解説します。
まず、彼のA病院勤務は、4.5日(土曜を0.5日)です。1日労働時間は休憩時間1時間を除くと7時間なので、4.5×7=31.5時間<40時間。
つまり法定時間内労働です。
B病院勤務は、A病院の人事といえどアルバイトなので、副業扱いです。なので、法定労働時間の計算にB病院のそれを合算することは出来ません。
では、法定時間外労働手当や休日手当がないのは、どうなのか。
労働基準法施行規則23条では、日直又は宿直が「断続的な時間外・休日労働」であり、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合、これに従事する労働者を労働基準法規定の適用除外と出来る、と明記されています。
「断続的な時間外・休日労働」とは、業務自体が途切れ途切れ行われるもので待機時間が長い労働、を指すとされています。
医師の宿直は、救急外来や病棟患者様の対応を都度して、それ以外はベッドのある宿直室で待機します。なので、これに該当するでしょう。
そして多くの医療機関で、この制度が施行されています。
従って、彼の勤務スケジュールは、労働基準法に反してはいません。
しかし、過労死ラインは週80時間以上の労働といわれています。
法的に違反がなくても、もっと医師の労働環境は是正されても良いと思います。
写真は、福岡県北九州市の、八幡製鉄所です。
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